第4話 婚約破棄の撤回!?
王宮に戻ると、そこにはローキックを叩き込まれて倒れていた王子と、止まっていた時間から解放されたドレス大臣に人々が騒然としていた。
「ソ、ソフィア……!? お前、一体どこへ……!?」
脚を押さえながら立ち上がるアレン王子。
ソフィアはふぅと息を吐くと、しおらしく両手を前で重ね、深々と頭を下げた。
「皆様、お騒がせいたしました。もう二度と、あんな無茶な真似(人の頭のスイッチを押すこと)はいたしません」
「そ、そうか……わかってくれたならいいんだ……」
しおらしいソフィアの態度に、王子も胸を撫でおろす。
そこへ有能執事、ペリンチョが歩み寄ってきた。
「流石はお嬢様。 魔王を退治し、止まった世界の時を取り戻すとは……まさしく『伝説の勇者』にふさわしいご活躍でございます」
「ペリンチョ……見ていたの?」
「はい。お嬢様のお肌がスベスベになり、魔王の攻撃をツルリと弾いた瞬間も、すべて当家の記録に収めさせていただきました」
ペリンチョは、アレン王子へ向かって深く頭を下げた。
「お嬢様も反省しておりますし、世界を救った功績に免じて婚約破棄を撤回していただけませんか?」
「……はぁ。世界を救ったのは紛れもない事実だしな。………分かった、婚約破棄は撤回しよう。もう二度とボタンを押そうとするなよ!?」
「まあ! ありがとうございます、殿下!」
仕方ないという様子で首を縦に振る王子に、ソフィアはパッと笑顔を咲かせた。
その瞬間…… 風がふわりと吹き抜け、ペリンチョの綺麗に整えられたオールバックの髪が、ほんの少しだけ乱れた。
(……あっ)
ソフィアの目が、爛々と怪しい光を放ち始める。
見えてしまったのだ。
ペリンチョの頭頂部、髪の隙間にひっそりと佇む……見たこともない漆黒の【謎の押しボタン】を。
(……押し……押し込みたい……っ! 王子の赤ボタンでも、魔王のボタンでもない……あの漆黒のボタンは一体どんな押し心地なの……!?)
うずく指先……
先ほど「もう二度としない」と誓ったばかりの口元が、ニヤリと歪む。
「……お嬢様?」
頭を上げたペリンチョが、ソフィアの視線に気づいてピクリと眉を跳ね上げた。
「大変申し訳ございませんが……そのお顔は……非常に嫌な予感がいたします」
「ねえ、ペリンチョ……」
ソフィアはドレスの裾を再び豪快に持ち上げ、一歩を踏み出した。
「……ちょっとだけ。 ……ちょっとだけ押させて?」
「お……お嬢様―――――っ!?」




