Vol.097【すべての過去を封じて……】
SoRa 2017年4月4日 AM7:25
お姉ちゃんがあんなになる前はね?
ケンジ……
私も、ごく普通の女の子だったの。
明るくて、誰に対しても笑顔で接することができた。
でも、気づいていたんだ。
お姉ちゃんの私に対する態度が、少しずつ変わっていっていることに……
お姉ちゃんは、いつも自分を犠牲にしてまで私を優先してくれていた。
あんな酷い親のもとにいたにもかかわらず、だよ?
私の代わりに何度も殴られたし、一晩中、家の中に入れてもらえないこともあった。
私さえいなければ、お姉ちゃんはあんな目に遭わずに済んだんだ……
そう考えた私は、ひめぐりの家へは行かず、別の養護施設を訪ねようとした。
その時、偶然、外で話をしていた夫婦の会話が耳に入ったんだ。
行方不明になった子供が、何年経っても見つからないという話だった。
親の不注意で、ほんの一瞬、子供から目を離してしまった結果だった。
何十年経った今でも、その子供は見つかっていない。
その夫婦の傷は今なお癒えず、養護施設の子供を引き取ることで、少しでも罪悪感を和らげたい……
そんな身勝手とも言える理由だった。
施設側だって、普通なら簡単に受け入れたりはしない。
でも、その夫婦の目は本気だった。
親がいないも同然だった私には、目を見ればわかったんだ。
「あぁ、この人達は本気なんだ」って。
だから私は、その夫婦がひめぐりの家を去ったあと、声をかけた。
行く当てもない私が、
「おじさんとおばさんの子供になりたい」と……
無理なお願いをしたんだ。
私には育ててくれる親がいないこと。
お姉ちゃんの傍にいられなかったこと。
全部、話した。
もちろん、こんな話が常識外れだということくらい、当時の私にも理解していた。
そのことで大騒ぎにもなったんだ。
施設から抜け出した子供が行方不明になったって、ニュースにもなった。
ケンジ……
絶望の淵に立たされた人間って、
どんなことでもできてしまうものなんだよ。
だけど――
お姉ちゃんと離れた私は、本当はとても寂しかった。
Kaitoのことも大好きだった。
お姉ちゃんと会っても、Kaitoの話ばかりしてしまう……
お姉ちゃんがKaitoを好きだって、
わかっていたのに。
私は自己嫌悪に陥り、お姉ちゃんは日に日に、
私へ罵声を浴びせるようになっていった。
でも私だって、
どうしてもKaitoと離れたくなかった!
日々葛藤する中で、私はとうとう現実世界で、
人と話すことすらできなくなっていった。
そして、引きこもるようになった……
でも、唯一、本来の自分を出せたのが、
このネバーランドだった。
非現実の世界で、Kaitoと話すことだけが、
私の生きる支えだった。
最初はね、ただKaitoの写真に救われて、
コメントを送っただけだったんだよ。
あれはダイヤモンドダストじゃなかったけどね……
でも、Kaitoはそんな私に優しくしてくれた。
私の言葉を覚えてくれて、
返事をくれて……
少しずつKaitoは、
SoRaを必要としてくれるようになった。
そして――気づけばKaitoは、
SoRaに依存するようになっていった。
その事実が、お姉ちゃんをさらに苦しめたんだと思う。
たとえ、お姉ちゃんを敵に回したとしても……
非現実世界のKaitoだけは、私と繋がっていてほしかった。
現実世界で、Kaitoがお姉ちゃんのものになるのは仕方ないんだ……
だから私は、諦めるしかなかった。
でも、KaitoがSoRaを必要としてくれたことだけは……
どうしても、手放すことができなかったんだよ……
KenJi 2017年4月4日 AM7:45
……だからお前は、
俺に漓久には黙っていてくれと言ったのか……
俺がそのことで、どれほど苦しんだか……
SoRa 2017年4月4日 AM7:46
ごめん……
ケンジ……
本当にごめんなさい……
KenJi 2017年4月4日 AM7:47
いいんだ、そんなことは!
SoRaは、こうしてこの世界のフレンド達を
支えてきたんだ!
でもSoRa……
現実世界で、すべてを封印して……
お前、それで本当にいいのか?




