Vol.063【ストレイキャット】
16年前
「児童養護施設ひめぐりの家」
ここには虐待、親の病気、離婚など様々な理由で家庭では生活できない多くの子供たちが暮らしている。
ケンジもその一人だった。
それはケンジが7歳のとき、共働きをしていた両親が仕事に行く最中の出来事だった。
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2001年5月
ケンジの当時の名前は笹倉健二。
父親の名前は笹倉徹、そして母親の名前は笹倉良子。
健二は7歳、まだまだわんぱく盛りの元気で優しい少年だった。
そんな幸せに暮らしていた健二の家庭を一変する出来事が起こった。
ある朝のこと……
良子「ねぇ、今日時間、間に合いそうにないから一緒に駅付近まで送ってくれない?」
徹「あぁ!わかった!早く準備してくれよ。俺も今日は朝から急ぎの仕事があるんだよ!」
良子「OK!準備できた!」
徹「急ぐぞ!」
健二「ねぇ!おとうさん、おかあさん。きょうはおそくなるの?」
良子「大丈夫よ!健ちゃんが学校から戻る頃にはお母さん帰ってるからね。」
健二「うん!わかった!きょうのばんごはんはなーに?」
良子「じゃあ、今日は健ちゃんの好きなハンバーグにしてあげるね!」
健二「やった!たのしみにしてる!」
徹「おい!早く行くぞ!鍵を閉めるから健二も早くおいで!もう登校班は集まってるぞ!」
健二「うん!わかった!おとうさんおかあさんいってきます。」
良子「健ちゃん、気をつけてね!」
健二「はーい」
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10分後
良子「間に合いそう?」
徹「今日はやたら混んでるな!この渋滞じゃとても間に合いそうにないよ!」
良子「どうしよう!大事なお客さん待たせてるんだ。」
徹「この交差点を左に行くと近道があるから、そこから行こう!」
良子「間に合うかな。」
徹「大丈夫!ここさえ抜ければ……」
良子「えっ!!!!!!!」
徹「ヤバイ!!!!!!!!」
徹「うわぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーー!!」
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午前7時45分。
交差点左折の普通乗用車が、酒気帯び運転をしていた大型トレーラーに激突されるという大事故が発生。
乗っていた笹倉徹、笹倉良子は即死の状態だった。
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君が健二くん?
ケンジ「え?う、うん。どうしたの?」
実はね、君のお父さんとお母さん……
健二「嘘だよ、そんなの!」
ねぇ、健二くん?ちゃんと聞いて
健二「おかしいなぁ……お父さんとお母さんがまだ帰ってこないな……今日はハンバーグなのに……おかしいな……」
ケンジは小さな身体を震わせながら静かに答えた。
健二「おとうさんとおかあさん……ほんとうにてんごくにいっちゃったの?」
健二「もうあえないの?もう……あえないの?」
…………おかあさんの……うそつき……
突然の両親の死。
身寄りのない健二は、児童相談所による一時保護を受けていた。
大久保さん、どうか健二君をよろしくお願いいたします。
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児童養護施設ひめぐりの家、施設長
大久保里子(63歳)
元々は精神科医の学識経験者であり、社会福祉士の資格と数々の実務経験を持つ。
常に子どもたちに寄り添い、的確なアドバイスをしている。
ケンジにとって、母親のような存在であった。
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その後、児童相談所はケンジの生活場所を検討するため、児童養護施設ひめぐりの家に相談。
ケンジはそこへ迎えられることになった。
幼くからいた来夢は、新たに迎えられたケンジを威嚇し、常にいじめのターゲットにしようとした。
しかしケンジの負けん気は強く、来夢も完全にケンジを支配することはできなかった。
来夢は幼少期から、犯罪集団に属する両親の喧嘩が絶えない家庭環境で育った。
その後、母親は夜逃げし、父親が親権を持つが、来夢の面倒を一切見ず、ギャンブルに明け暮れた末、とある組織に拉致され行方不明となる。
来夢は小学生低学年ながらも、万引きやいじめ、学校中のものを壊して回るなど、手のつけられない状態であった。
しかし、この施設に入り、大久保の総合環境療法によって、わずかに改善の兆しが見え始める。
だが、ケンジが来てからはそれも良い方向には進まず、来夢はケンジの正義感に強い嫌悪感を抱くようになる。
2人はいがみ合いながらも、年月だけが過ぎていった。
ケンジがこの施設に来て3年後、親から逃げ出し児童相談所に駆け込んできた白石空と繭がこの施設に迎えられる。
しかし、その日のうちに繭は失踪。
それ以来、繭がひめぐりの家に戻ってくることはなかった。
泣き叫ぶ空を見ていたケンジは、両親がいなくなった自分に空を重ね合わせ、空に対して淡い恋心を抱くようになっていく。
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ある日
来夢「おい!空!お前、何、俺に偉そうに言ってんだよ!!」
空「来夢君のやってることはいけないんだよ!!人のものを取っちゃダメっ!!」
来夢「人のものじゃない!俺のものだ!!痛い目に遭いたいのかよ!!」
空「や、やめてよ……(泣)」
来夢「はん!!妹に逃げられた孤児が、なにいっちょまえに泣いてんだよ!!お前は孤児なんだよ、孤児!!ざまぁねぇ!!」
空「妹の話はやめて!!あんなの妹じゃない!!姉妹なんかいない!」
来夢「妹に裏切られて捨てられて、憎んでるか(笑)」
空「来夢には関係ない!」
来夢「おやおや?けどその憎たらしい妹とは今でもたまに電話してるんじゃねぇか?黙っていても俺には分かるんだよ!!」
空「それは……」
来夢「なに企んでんだよ~空姉さんは!あー?引っぱたいて白状させてやろうか?」
ケンジ「おいっ!来夢!」
ばきっ!!
ぐふっ!!
ケンジは力いっぱい来夢を殴り飛ばした!
来夢「ケ……ケンジ……何しやがんだよ!て
めぇ!!」
ケンジ「空に手を出すな!!」
来夢「なんだと?」
ケンジ「空に手を出すなと言ってんだよ!!」
来夢「は?カッコつけやがって!!あー?お前!!好きなのかよ!!この孤児が!!ったく笑わせるよな!!児童施設の孤児だ!!」
ばきっ!!
ばきっ!!
ばきっ!!!ばきっ!!!!
ううぐふっ!!!!!!!
ケンジ「二度と言うんじゃねぇ!!今度言ったらこんなもんじゃ済まさねぇ!!」
来夢「て、テメェ……」
ケンジ「まだやんのかよ!」
来夢「わ……わかったよ……だから……やめてくれ……」
ケンジ「いいか!空に近づくな!!」
周りから声が聞こえる……
あははは
あははは!!
ねぇねぇ!!
来夢があんなにやられてるよ!!
いつも偉そうにしてるからだよ!!
嫌いだったんだ!!
いい気味だよ!!
あんな奴いなくなればいいのに!!
あはははは!!
あはははは!!
来夢「ケ……ケンジ……許さねぇ……絶対に後悔させてやる!!」
ケンジ「空?大丈夫?」
空「……誰が助けてって言ったの?」
空「助けなんて……いらない……」
ケンジ「空……」
空「アンタも同じ!!繭に逃げられた私を憐れんでる?要らない!!そんな憐れみ……要らない!!」
ケンジ「違う……違うんだって……」
空「私に構わないで!!」
ケンジ「空……」
そしてその1年後。




