Vol.109【バーチャルワールド】
立道「現実世界と仮想世界……
どういう事なんだ?」
芹沢「立道さんの方では、
SNS絡みの情報は出ていませんか?」
立道は少し考えてから答えた。
立道「青柳来夢に関しては、
今のところそういう情報は出てないな。」
芹沢「そうですか……。」
立道は資料を見ながら続ける。
立道「だが、青柳来夢を取り巻く人間関係は、
かなり見えてきている。」
立道「犯人が残したと思われる凶器の破片。
それが、三奈月沙羅という女の持ち物らしい事までは分かってる。」
芹沢「三奈月沙羅……。」
立道「青柳来夢の元恋人だ。」
芹沢「じゃあ、来夢を殺したのは三奈月沙羅だと?」
立道「いや、俺はそうは見ていない。」
立道の声が低くなる。
立道「犯人が、そんな分かりやすい証拠を残すとは思えんからな。」
芹沢「……。」
立道「ただ、ひとり妙な男がいる。」
芹沢「誰です?」
立道「斉藤健二だ。」
立道は資料をめくる。
立道「斉藤と青柳は、幼少期に同じ施設で暮らしていた。
しかも、かなり根深い因縁がある。」
芹沢「動機は充分ある、と。」
立道「あぁ。そして――」
芹沢「そして?」
立道「今回そっちで殺された桜沢空央。
あの女も、斉藤や青柳と同じ施設にいた。」
芹沢「……!」
立道「さらに、当時の人間から話を聞いたが、
斉藤は桜沢空央にかなり執着していたらしい。」
芹沢「当時を知る人物……?」
立道「ツインライトプロダクションの人事部長、
池谷って男だ。」
芹沢「池谷ですか。」
立道「俺達がツインライトをマークしていた理由は、南漓久って男がいたからだ。」
立道「斉藤健二と南漓久は大の親友。
来夢殺害に関係してるのは、
斉藤健二と三奈月沙羅――
俺はそう踏んでる。」
立道「ところが、南漓久を張っていた矢先――
部下だった桜沢空央が殺害された。」
芹沢「……。」
立道「そこで池谷から、施設時代の話を聞いた。」
芹沢「施設時代だけですか?」
立道「ん?」
芹沢「他に何か言っていませんでしたか?
ネットとか、SNSとか。」
立道「……いや。」
芹沢「ネバーランドの事は?」
立道「……ネバーランド?」
芹沢「立道さん、その名前を知った時点で、
この事件は普通の殺人事件じゃなくなります。」
立道「……何なんだ、そのネバーランドってのは。」
芹沢は静かに息を吐く。
芹沢「仮想世界ですよ。」
立道「ゲームか?」
芹沢「違います。」
芹沢は資料を閉じた。
芹沢「そこでは現実の名前も、肩書きも、過去も関係ない。」
立道「……。」
芹沢「誰もが別人になれる世界です。
そして――」
芹沢は静かに言った。
芹沢「今回の事件は、
その世界抜きでは語れません。」




