約束
これまでのあらすじ
竜二はある日通勤電車の中で偶然に赤い帽子の女を見かける。
マスクを外した女の顔を見た竜二はあまりの美しさに一目惚れしてしまう。
しかし同時にその顔はどこかで見たことがある顔だと思った。
デジャブのように・・・
そして同じ日の夜、また竜二はその赤い帽子の女を見つける。
竜二の前に何度も現れる赤い帽子の女・・・
この女はいったい誰?
クリスマスパーティでついに竜二は謎の女の正体を知る。
竜二は、いつもと違ってずいぶん寝心地がいいベッドだなと思いながら目を覚ました。
枕もふかふかだ・・・
『ん?・・・・・・・ここはどこだ?』
竜二はまだよく状況が飲み込めていない。
そしてまったく酔いも醒めてない。
『アイタタタタ・・・』
竜二は重い頭を少しもたげてみたが、嫌な吐き気がして諦めた。
網膜がぼやけているが朝であることは窓からの日差しでわかった。
『ここはいったいどこだっけ?』
見たこともない服が壁一面に並んでいる。
どう見ても女物の服であることはわかる。
すると突然隣の部屋から声が聞こえた。
『竜二くん、目が覚めた?』
『気分どう?』
華の声だ!
竜二は廻らない頭をフル回転させて昨夜のことを思い出した。
そうだ!
昨日はあのバーで華と飲んで、それから飲み足りないからと華の家に行くことになったんだ。
明け方までしたたかに飲んだ竜二は完全に二日酔いだった。
一方華はというと、キッチンで何やらカタカタやっている。
竜二は完全に記憶が蘇ると、自分が寝ていたベッドに正座をして部屋の中を見渡した。
ここが華の部屋か・・・
そして左側には窓。
竜二が左手を伸ばして少しカーテンを開けてみる。
そーっと外を覗いてみると、竜二がいつもウロウロしていたあたりの道路が見えた。
『あちゃー!ここから丸見えじゃねえかよ・・・』
竜二はまたベッドに倒れ込んだ。
それにしてもいいベッドだ。
俺が寝ているニトリのベッドとは大違いだ。
クッションがまるで雲にでも浮いているようにフカフカだった。
『お値段以上のニトリでも、このベッドにはかなわねえな。。。』
竜二はしきりにベッドに感心している。
すると華がキッチンから緑色の飲み物がはいったグラスを二つ持って、竜二が寝ていたベッドに腰掛けた。
『お酒くさーい!』
と顔をしかめながら華は、『はい』とグラスの一つを竜二に渡した。
竜二はエグい緑色の液体を見回しながら
『ナニコレ?』
と華に聞いた。
すると華は
『ウオッカとラムとジンで作ったカクテル!』
と言った。
それを聞いた竜二は思わずグラスから本当に酒の臭いがした気がした。
『オエェェェ〜〜〜〜!!!』
本気で吐きそうになった竜二を見て華がゲラゲラ笑う。
『バカね。嘘よ。』
『小松菜とトマトのスムージーよ。これを飲むと1発で二日酔いがなおるの。』
竜二は涙目で胃液を飲み込んだ。
『もー、勘弁してくれよぉ。』
『マジでマーライオンになるとこだったわ〜。』
そう言ってスムージーをおそるおそる一口飲んでみた。
『うまい!』
なんと見た目の色よりももっとトマトの味がして、しかも酸味がきいてるので実にさっぱりしたスムージーだった。
『レモン汁が入っているからスッキリするわ。』
竜二は風呂上がりのフルーツ牛乳でも飲むかのように、腰に手を当ててスムージーをごくごく飲み干した。
竜二の上唇の周りには緑色の髭のようにスムージーがついている。
『スーパーマリオか!』
と華が笑い転げながら言う。
竜二も大笑いした。
そして竜二は華を抱き寄せ二人はキスをした。
華の口の周りも緑色になった。
『見て!私はルイージよ!』
竜二と華はおかしくておかしくて笑いながら何度も何度もキスをした。
そして華は竜二の腹の上に馬乗りになりながらこう言った。
『私を大事にするって約束して。』
華は真顔に戻っていた。
竜二はうなずきながら言った。
『約束する』
竜二も真顔でそう答えた。
竜二は心から華が好きだと思った。
こんなに女を好きになったことは今までにない。
そして華もまた竜二のことが好きになっていた。
竜二は華を抱きしめながら夢のようだと思った。
一方で華を抱いたのは今が初めてではないようにも思えた。
何かが竜二の記憶を揺さぶりはじめる。
しかしそれが何なのか竜二にはわからなかった。