華の異常
これまでのあらすじ
竜二はある日通勤電車の中で偶然に赤い帽子の女を見かける。
マスクを外した女の顔を見た竜二はあまりの美しさに一目惚れしてしまう。
しかし同時にその顔はどこかで見たことがある顔だと思った。
デジャブのように・・・
そして同じ日の夜、また竜二はその赤い帽子の女を見つける。
竜二の前に何度も現れる赤い帽子の女・・・
この女はいったい誰?
クリスマスパーティでついに竜二は謎の女の正体を知る。
徐々に明かされる女の正体とは・・・
竜二と華が出会ってから1年がたっていた。
相変わらず世の中は新型コロナウィルス感染がおさまらない。
第五派がピークアウトしたかと思ったら、やはり専門家が予測したとおりに第六波、第七波と続いて陽性者の波が押し寄せた。
そしてウィルスはどんどん変異して、新たな変異株のニュースで持ちきりだった。
竜二は華の部屋で緑色のスムージーを飲みながら、朝のニュースを見て一人つぶやいた。
『いつになったらコロナは収まるのだろう?
みんなワクチンを打ったというのに・・・』
竜二は相変わらずテレワークのままだったが、ほぼ毎日を華の家で過ごしていた。
ほとんど同棲状態だった。
しかし華の会社はテレワークにはならなかった。
なので華は竜二を置いていつものように出勤している。
竜二が華の部屋に住むようになって実は気付いたことがあった。
それは華がいつもかぶっていた赤い帽子は、CのエンブレムじゃなくてAだったのだ。
だから?
要するに広島カープじゃなくてロスアンゼルス・エンゼルスの帽子だったのだ。
そっちか!
と、竜二は思った。
どうでもいいことだが、竜二は華が広島出身かと思っていたので予想は外れた。
エンゼルスの帽子をかぶっているということは、華は大谷選手のファンだったのだ。
『大谷がタイプ?
俺となんの共通点もねえじゃん!』
竜二はちょっと気に入らなかった。
華と暮らして気付いたのはそれだけじゃなかった。
実は華は異常なほど竜二の健康に気を使うのだった。
毎朝の緑色のスムージーに始まり、ランチは華が手作りした野菜たっぷりのお弁当。
タバコは強制的にやめさせられた。
酒は飲むが昔ほど深酒はしない。
いや、華が厳しく言うので飲めなくなったという言い方の方が正しいだろう。
そして華が通っていたジムに竜二も入会させられた。
1日おきに華の仕事が終わるのを待って、一緒にジムでワークアウトする日々。
正直言って、竜二はさほど運動が好きではない。
最初は華と一緒にやれることは何でもやりたいと思っていたが、さすがに1年もたつとだんだん飽きてきたというのが本音だ。
しかし華は厳しかった。
正月もゴールデンウィークもなくジム通いの日々。
おかげで最近の竜二の体はみるみる間に締まってきた。
まるでライザップのCMに出てくる芸能人のようだ。
しかし竜二は、鏡で自分の割れた腹筋を見てまんざらでもなかった。
『ふふ・・・結果にコミットしたぜ!』
そして次は華が予約してくれた人間ドックが待っていた。
さすがに竜二はまだ32歳なんだから、人間ドックなんて必要ないと言い張ったが華は聞く耳を持たない。
『ちょっと異常じゃないか?』
竜二は華の健康志向がちょっと異常じゃないかと思えた。
そして最近華を見ていて気付いたことがある。
それは・・・
実は華の体が時々透けて見えるときがあるのだ。
最初に気付いたときは竜二は腰を抜かすほど驚いた。
華は透明感のある女だと思ってはいた。
が、しかし透明感を通り過ごして本当に透明に見えたのだ。
まるでフランダースの犬のラストシーンのようだった。
天に召されるネロとパトラッシュのような感じの半透明と言えばいいだろうか。
そんな華を初めて見たのは、ある朝華が窓のカーテンを開けた時だった。
朝日が眩しいと思った竜二が目を細めて華の方を見た時だ。
なんと朝日が華の体を突き抜けていた。
あわわわわ・・・
ク、クリオネ??
透けた華はまるで妖精のようだ。
竜二はしばらくその場を動けなくなっていた。
そんなことが現実の世界で起きるわけがない。
ただ、竜二はこれまでもうっすら感じてはいたのだが、この時の華を見て何かを確信していた。
『華には何か隠していることがある。』
さらに華と出会ったころから感じていたデジャブのような感覚。
もっと前から華を知っていたのでは?という疑問もさらに確信めいたものに変わっていた。
『華はいったい誰なんだ?』
明日は『華の不思議』へと続きます!




