出航
これまでのあらすじ
華は竜二が前世では誠という名前だったことを明かした。
そして華は女優であったこと。
誠が新聞記者であったことなども・・・・
住む世界が違う二人がどうやって知り合ったのか。
また誠と華が一緒に脱走したことなども話す華。
そして若くして死んだ誠の死の理由は・・・・・
生き残った華のその後の人生とは・・・・
誠の咄嗟の思惑通り、銃声に驚いた畠山はあのまま動くことができなかった。
誰が誰に向かって銃を撃ったのか畠山はそれを確かめたかった。
しかし、警察車両のライトが消されてしまっていたのでよく見えない。
仕方なく畠山は銃声のした方へと車を移動した。
そのとき華は、畠山の車がターンしたのを見て誠の考えに気づいた。
畠山は誠と同じ新聞記者だ。
必ずニュース性のある方へと体が動く。
華のニュースも話題ではあるが、それよりもし新聞記者が警察官を銃で射殺したとしたら・・・
警官殺しは重罪だ。
一方警察が新聞記者を殺したとしても、相手は銃を構えていたから正当防衛ということになる。
しかし、もし誠が銃を持っていなかったとしたら・・・・
それは丸腰の市民を警察が射殺したということで、これもとんでもなく重大な事件だ。
それを一瞬で考えた畠山は、今は華を追うよりもこっちの方が価値があるとふんだのだ。
誠の読みは当たった。
欲深い畠山はまんまと誠の思い通りに動いていた。
そして華は、自分の命をかけて私を守ってくれた誠の気持ちに応えないとと思った。
すっかり警察車両のライトが消された今、ここからは誠の姿も見えない。
『誠・・・・・・・
ごめんね・・・・・・・・・・』
華を意を決すると、貨物船へと猛スピードで走った。
貨物船の階段が目前に迫る。
しかし華は後ろに気配を感じてちょっと振り返った。
するとそこには数人の警察官が迫っているではないか。
警察車両ではなく、徒歩で警察が追ってきているのに華は気がつかなかったのだ。
階段へと急ぐ華。
しかし日頃から鍛えられた警察官たちの足は早い。
みるみる間に差が縮まっていく。
その時、貨物船の上の方から誰かの声がした。
華は息を切らしながらも目を上へ向けた。
貨物船の甲板から体を乗り出し叫んでいたのは、見知らぬ髭を生やした外人だった。
『ハナ〜!!ハヤク!ハヤク!』
華に声をかけていたのは船長のロバートだった。
華はロバートのことを知らないが、ロバートは華のことをいつも映画で見てきた。
だから遠くからでもすぐにわかったのだ。
華が鉄の階段を駆け上がる。
追手の警察官も階段を駆け上がる。
しかし階段の途中で捕まえられなければ、いくら警察でも船内にはいれない。
はたして華は間に合うのか。
カンカンカンカンという、いくつもの階段を駆け上がる足音が交差する。
その時、誠は薄れゆく意識の中でその様子をぼんやりと見ていた。
もう痛みも感じない。
生きているのか死んでいるのかも定かではない。
ただ、華がかぶっている赤い帽子だけがゆらゆらと遠くから見えた。
『華・・・・・・・
もし生まれ変わったらもう一度会いたい・・・・・・
もっと長い時間を一緒にいたかった・・・・・・・・・・・・・・・』
と、その時、華がかぶっていた赤い帽子が宙に舞った!
そして帽子は海風に飛ばされゆらゆらと飛んでいく。
誠はその光景を見て思った。
『思い出した・・・・
あの赤い帽子が似ている華はハイビスカスだ・・』
誠は赤いハイビスカスの花を髪飾りにつけた華を思い浮かべた。
そして誠の意識は遠くなった。
誠はゆっくりと瞼を閉じた。
ラスト5話!
明日は『華の人生』へと続きます。




