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トラ トラ トラ!  作者: 悠鬼由宇
第4章
282/440

マルセイユルーレット 8


「お願い… 決めて…」


 キョンが呟く。


 一美は思わず顔を手で覆ってしまう。


 もえとりんりんは大声で叫ぶ。



 健太は彼女達を眺めながら、思わず笑みが溢れる。思いが強いほど、叫べなくなる、見られなくなる。応援の父兄達もそうだ。母親達は皆顔を覆っている。そんなもんだ。


 あ。一人だけ、違う女性がいる。まるでスーパーモデルのように格好良く腰に手を当てて、茅野のドリブルをキッと睨み付け仁王立ちしている。その美しい佇まいに目を細めていると!



 父兄達が、爆発、する。



 夫、妻、構いなく抱き合って、飛び跳ねる!



 体に衝撃を感じる。もえとりんりんがタックルしてきた様だ。



 キョンは一人、ガッツポーズを深く決め、そして徐にグランドに向かい、


「残り少し! 集中しろ!」


 と檄を飛ばす。



 一美は覆っていた手を上に掲げ、バレーボールのアタッカーさながら飛び跳ねている。


 そんな様子を微笑みながら眺めていると、


「コーチ!」


 と大声で叫びながら、目に涙を浮かべた茅野が健太に抱きついてくる。相手ゴールからベンチまでわざわざ駆けつけたのだ。




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