11/440
CB 2
男は袋に入っていた未開封の酎ハイを開け、徐に健太の頭からかけ始める。健太は腰を屈めその酎ハイで顔を洗い流し、
「悪いな、助かった」
「別に。それより、その写真。大事なんじゃねーのか?」
砂利道に落ちている写真を拾い上げ、健太にそっと差し出す。
「コレ、去年別れた女房と子供」
聞かれてもいないのだが、健太は言い訳の様にそっと呟く。
男は写真を一瞥し、対岸の街明かりが水面に揺れる多摩川を眺めながら、
「あそ」
と呟く。
健太は写真を財布にしまい、
「あの、なんかお礼がしたいんだけど…… お腹空いてないか? ファミレスかどっかでご馳走するよ」
河口の方から羽田空港を離陸するジェット機の轟音が響いてくる。男は健太をしばらく見つめた後、顔をクイっと振り、ゆっくりと歩き始める。ついて来い、と言うことか。健太は痛む足を引きずりながら男の後を追った。




