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異世界成り上がり神話〜神への冒険〜  作者: ニコライ
第5章 新たな希望と白の迷宮

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第3話 山都マウシニア②



「うーん……どこかな?」

「さあな。目撃証言で出てくる場所がバラバラなんだ、自分の足で探すしか無いさ」

「オーガの群れ、ね。数が多いとランクの高い冒険者じゃないと対処できないし、仕方無いのかもしれないけど」

「まあ報酬は多いし、良いことにするぞ。問題は無いしな」

「それもそうね」


オーガ程度、どれだけいようとソラ達の敵では無い。だが物事は、一筋縄ではいかないものだ。それは、依頼とは関係無いところでも。


「……ねえ、ソラ……」

「どうした?」

「あれ……魔獣よね……?」

「ああ、あの飛んでる……ちょっと待て」

「ミリちゃん、あれって……」


かなり離れた空を飛んでいる鳥。よく見ると(からす)、それも魔獣のようだ。全長は50cm程度だが……黒い雲を作るほど数が多かった。


「……多すぎるよな」

「ええって……見つかったわよね?」

「うん。こっちに来てるよ」

「いや……町に向かってるな」


ソラ達の前方に魔獣、後方には町がある。しばらくすれば3人の上を通るだろう。


「このまま町を襲うつもりなのね……飛んでる魔獣から町を守るのは難しいわよ?」

「結局、言ってた通りになっちゃったね」

「本当だな……」


1番簡単だが、1番面倒な結果となった。だが見つけたのだから、見逃すなんてことはできない。


「それでどうするの?このままやる?」

「それであいつらがどう反応するかだな……全てが俺達に向かってくれるなら良いが……」

「半分に分かれたら最悪ね」

「そうだな……魔法を使って閉じ込めるか」

「大丈夫なの?」

「魔力はかなり使うな。万が一のために温存しておきたいし、援護はできなくなるぞ」

「分かった。わたしが全部やるね」

「頼んだ」


ソラは魔力を練り、魔法を放つ。すると岩の柱が急速に立ち、魔獣を取り囲んでいく。


「鳥かごだ。逃がしはしない」


完成した鳥かごは、まるで牢獄だった。直径1kmほどの範囲にて太い岩の柱がいくつも伸び、さらにそれから細めの岩の枝が無数に伸びている。閉じ込めるのも、足場にするのも問題無かった。


「これなら、大丈夫ね」

「ああ。俺とミリアは足場を登りつつ上に行く。フリスはここから攻撃してくれ」

「うん。任せて」


ソラとミリアは枝に跳び移りながら上へ上がっていく。そしてその間にも、フリスの攻撃は始まっていた。


「できるだけ、バラバラにした方が良いよね」


雷が次々と飛び、1本ごとに十数匹を倒していく。魔獣も、地上にいるフリスが放っていることには気づいていたが、近づく前に撃ち落とされており、何もできない。


「フリス……意気込み過ぎだな」

「そうね。まあ、私達の登るのが遅いのも関係してるんでしょうけど」

「仕方ないだろ。あんなに上にいるんだからな」


それでも数が数だ。ソラ達が巻き込まれることの心配をしている今のフリスでは、完全に抑え込むことは厳しい。ソラ達がいなければ殲滅できるだろうが。


「集団で下りてきたか」

「攻撃してるのがフリスだけだし、仕方無いわよね」

「だかそのおかげで……俺達もやれるな」

「そうね、行きましょう」

「ああ!」


ソラとミリア、2人は黒い雲となっている魔獣の群れへ飛び込む。


「しっ!」

「やぁぁ!」


2人は2つの弾丸となり、群れを貫く。魔獣達はいきなり現れた2人に混乱し、蹂躙されて瞬く間に数を減らしていく。


「これならいけるな。フリス!一気にやれ!」

「分かった!」

「ミリアも、準備しておいてくれ」

「分かったわ」

「行くよ!」


そしてフリスの雷が多数を薙ぎ払い、生き残りをソラとミリアが追い討ちをかける。時間はかかるが、確実に倒していった。


「終わったわね」

「ああ。魔獣の処理はどうするか……」

「全部指輪に入れましょう。ソラは集めてくれる?」

「そうだな。これを壊すのと同時に集めるか」


ソラとミリアは下へ下り、フリスと合流する。そして鳥かごの外に移動した後、崩しつつ魔獣を近くに集めた。


「凄い数だね」

「1000を超えてるかもな。本当に全部入れるのか?」

「……100匹くらいで良いわよね。特別な素材になるなんて聞いたこと無いし」

「うん、そうだね」

「じゃあ、そうするか」


ソラ達は一部を指輪にしまい、残りは土に埋める。数が多すぎるとこういうのも面倒だった。

その後もオーガを探しつつ、探索を続ける3人。かなりの時間が経った後、ようやく手がかりを見つける。


「ん?これは……」

「足跡よね?」

「オーガかな?向こうに続いてるね」

「オーガかどうかは分からないが、行くぞ。巣があるかもしれない」


それは二足歩行系の魔獣らしき足跡だ。それを辿っていくと、予想通り巣らしきものを見つけた。そしてそこは、守りやすく攻めにくい場所だった。


「この先……あの谷の奥か?」

「うん。見つけたよ」

「抜け道は……無さそうだな」

「正面から行くしか無いわね」

「厄介だが……あれを抜ければ楽にできそうだな。奇襲で一気に突破するか」


谷は長く、至る所に見張りのオーガが立っている。ソラ達は岩の陰に隠れつつ、オーガを少しずつ倒していった。血の臭いでバレないよう、倒したオーガは氷の中に閉じ込めている。


「まだ……気づかれてないわよね?」

「いや、分からない。できるだけ音を立てないようにしているが、数が多いからな」

「そっか。じゃあ、待ち受けられてるとも考えないといけないんだね。それにしても……また多いって……」

「いつものこと……って言っても、多すぎるわよね」

「そういう運命か?」

「じゃあそれって、ソラ君のだね」


そうして20体ほど倒した後、ようやく巣に辿り着いた。谷を抜けた先、そこには……


「砦、よね……?」

「何でここに?」

「見た感じ、古そうだな。だがまずは、オーガを片付けるぞ」


古くボロボロだが、石でできた砦が現れる。そしてその壁の上には、何十体ものオーガがいた。ソラ達はすぐさま近くの岩陰に退避、運良くバレなかったようだ。


「冒険者が動いて正解だったな。こんなところに騎士団が来たら、被害が大きすぎる」

「でも、マトモに防衛戦なんてできるの?」

「やってくるだろうな。壁の上には魔法使い(マジシャン)射手(アーチャー)もいるし、普通のオーガも岩を投げてくるくらいはするだろ」

「なら、私達も普通にやるのは危険よね」

「キングオーガもいるかな?」

「可能性は高いぞ。砦を巣にすること自体、キングじゃないと選ばなさそうだからな」

「じゃあ、いると考えましょう。それで、どうするのよ?」

「そうだな……俺が壁を登って上を倒そう。2人は俺が暴れ始めた後、門から行ってくれ」

「分かったわ」

「ソラ君も頑張ってね」


ソラは壁のすぐそばまで走ると足下の土を操作、上まで一気に登る。そして驚くオーガ達を尻目に、一方的な蹂躙を開始した。


「ソラ君、やっぱり凄いね」

「私達も行くわよ。フリス、門を吹き飛ばして」

「うん」


フリスは鉄砲水、というより津波で門を吹き飛ばし、砦内部を水浸しにする。そして圧死体が転がる通路をミリアとフリスは駆けた。


「狭いのに、よく来るよね!」

「馬鹿なのよ。上位やキングに指揮されていなければ、殺すことしか考えてない魔獣なんだからね」

「じゃあ、広い所にはそういった相手がいるってこと?」

「きっとそうよ。あの先は大部屋よね」

「うん。でも……」


ミリアは静止しようとするが、フリスは無視して扉を開ける。その先にいるのは……


「ソラ君が終わらせちゃってるもん」


血塗れのオーガの死体と、その中心に立つソラ。倒れているのは普通のオーガだけでは無く、10体ほどの上位オーガもいた。


「2人とも、結構早かったな」

「通路は狭いもの。大きなオーガじゃ、満足に動けてなかったわよ」

「それもそうか。それでフリス、気づいてるな?」

「うん。この奥だよね」

「それって……キングオーガが?」

「ああ、他にも上位が15体だな。将軍(ジェネラル)が9体、魔法使い(マジシャン)射手(アーチャー)が3体ずつか」

「そんなに……面倒ね」

「なら、俺に良い手があるぞ」

「できるの?」

「問題無い」


扉を開けた先にいたのは、大太刀を持ったキングオーガ。周りにはソラの言った通り、上位オーガの取り巻きもいる。恐ろしい集団だが、ソラ達に緊張は無い。


「騒ぐな」


むしろオーガ達が緊張していた。ソラの放出する濃密な殺気に当てられ、上位は動けていない。キングオーガも、動きがかなり鈍くなっている。


「酷いわね。マトモに動かせてあげないなんて」

「かなりの被害を出してるんだ。遠慮する必要なんて無いからな」


そして風刃により、15個の首が落ちた。唯一それを避けられたキングオーガだが、右腕からは血が流れており、動きはさらに鈍い。


「一方的すぎるか?」

「それはいつものことよ。早くトドメを刺してあげなさい」

「そうだな。責任持って、介錯するか」


介錯と言っても相手の抵抗の意思は消えていないため、ただの殺し合いだ。だがいくら抵抗しても、ソラが首を落とすのには何の問題も無い。

そして後片付けを終えた後、3人は砦の散策を開始する。


「この砦、本当に古いんだな。どれくらい前だ?」

「この辺りにはこの谷しか、安全に山を越えれる場所が無いみたいだもの。町が作られて以降、重要になった時期は何度かあるはずよ」

「それにしても、オーガが砦を巣にしちゃうなんてね。キングオーガがいるっていっても、ビックリだよ」

「この前に遭遇したのも大群だったし……またか?」

「まただとして……目的地がどこかっていう話になるわよね」

「もしかして、次の町?」

「あの町ね……攻め落としたとしても意味が無い気がするわよ?重要地点って訳ではないし、魔王の領域からも遠いもの」

「その通りだが……知能の無い魔獣を使い捨てにするなら、十分な意味があると思うぞ」

「そうなの?」

「ああ。町を攻め落とされたってことが、人々を不安にさせる。そのせいで兵士や騎士を前線に送れなくなるかもしれない」

「そうすれば支配領域を増やせる、か……ソラって、よくこんなこと考えられるわね」

「偶然思いついただけだ。合ってるかどうかは定かじゃない」

「そうだね。それに、来たら倒すだけだもん」

「そうね。私もやるわ」

「頼もしいな、2人とも」


そしてソラ達は町へ戻り報告した。その時ギルド全体が混乱したのは、言うまでもないだろう。





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