第2話 樹魔①
「……凄いね」
「名前の通り、木だらけだな」
「そうね……奇襲されそうで嫌だわ」
「探知し続けないとな。フリス、良いか?」
「うん、というよりも……」
鬱蒼とした森のダンジョン、もはや密林と言った方がいいかもしれないほど木々が生い茂っている。
そんな中で、いきなりフリスの探知に引っかかった存在があった。
「いきなり来たよ」
「ん?……ああ、来たというか、待ってるよな」
「待ち伏せってこと?」
「トレントだから、動かないだけだ。少しデカいのも何体かいるな」
奇襲が厄介なトレントだが、居場所が分かっていればいくらでも対処可能だ。
「半円形にトレントが50体、ビックトレントが10体……真っ直ぐ進めば5体にしか当たらないな」
「他に行くともっと増えるよ」
「じゃあ、そのまま進みましょう。このあたりの魔水晶はそんなに集める必要は無いわよね?」
「ああ」
トレントはソラとフリスの目に入った瞬間に燃やし尽くされ、通り道にあった罠はミリアによって解除される。特に問題は無い。
「うーん……ソラ君」
「ああ。多分ずっとだぞ」
「どうしたのよ?」
「トレントの反応が至る所からするの」
「満遍なくいるんだろうな。近くに寄った時に倒せば良い」
そうして定期的にトレントを倒しつつ、ソラ達は進んでいく。むしろ、トレントしか出てこなかった。
「トレントしか出ないね」
「虫とかも出るって聞いてたわよ?」
「出ないってことは無いだろうな。一斉に来るかもしれないぞ」
「そうね……やっぱり警戒は怠れないわよね」
「あっ」
「来たのか?」
魔力探知の範囲はフリスの方が広く、精度はソラの方が高い。最初にフリスが見つけ、ソラが詳細を探るというのはいつものことだった。
「うん。蜻蛉だよ」
「メガニウラが5匹だな。ミリア、やるぞ」
「前からなのよね?出るのは私だけで良いわ」
「……本気か?」
「ええ、それくらい任せなさいよ。それに、全部私だけでやるわけじゃないから」
「分かった、頼んだぞ」
木々の間を縫うように飛ぶメガニウラは、突出したミリアを狙う。だが……
「蜻蛉って、羽根を1つでももげば飛べないのよね」
食らいつく直前、ミリアの双剣によって片側の羽根が2つとも斬り裂かれていった。そしてメガニウラ達は地面を滑り、ソラの目の前で止まる。当然、メガニウラは両断されるか燃やし尽くされるかされた。
「ナイス。ちょうど良いな」
「そこまで近くに行くのは予想外だったわよ」
「そうなの?」
「当たり前でしょ?ソラほど上手くないもの」
「おい、何で俺を引き合いに出す」
「ソラなら全部倒してたでしょ?」
「……まあ、できなくはないが」
「やっぱりできるんだね」
ソラと比較し卑下しているが、ミリアの実力もかなり上がっている。ソラを見ているせいで誇ったりはしていないが、十分達人と呼べるレベルだった。
それを上回るソラは何者だという話になるが。
「それにしても……」
「どうしたのよ?」
「魔力探知が無かったら、本気で迷いそうだな。同じ風景ばかりで」
「そうかな?」
「ああ。ここは狭めのダンジョンだからマシだが、もっと広かったら危ないかもしれないぞ。ダンジョンの中じゃ、太陽や星で方角を知れないからな」
「それもそうね。洞窟の方が楽なのも分かるわ」
「ふーん。あ、階段だよ」
見つけた階段を下りた先、そこから雰囲気が一気に変わった。木は古く古木のようで、コケや蔦などが木々を覆っており、見た目の禍々しさが数段上がっている。
「……絶対に何かいるわね」
「フリス、見つけたか?」
「いるよ。森の中に……20かな?」
「ああこれか。結構バラバラなんだな」
「分かれてても、多いわね」
「そうだな。お、見えたぞ」
「……ねえソラ、あれってそうよね?」
「ホッピングマッシュルームだね」
「ミリア、行くか?」
「ソラが行ってよ。あんなに辛いの、もうゴリゴリよ」
「分かってるさ。フリス、魔法でやるぞ」
「うん」
「お願い」
胞子を吸い込まなければ、ホッピングマッシュルームは簡単な相手だ。ソラとフリスのターゲットにされた個体は全て、雷が直撃して黒焦げとなった。
「凄いわね」
「これくらいならな。胞子は……出てないか」
「見つかる前に倒したもんね」
「私の時は……近づいたからよね」
「胞子を出すのにも、パターンがあるだろうな。それに入らなければ、安全に倒せるんじゃないか?」
そう言ってはいるが、ゲームとは違うのでパターンがあるかは分からない。まあ、魔法で倒せば問題無いのは確認したのだが。
「次はキノコ料理ね」
「苦手克服?」
「そんなわけない……って、言えたら良かったんだけど……」
「まあ、それで良いさ。あんなことがあったんだからな」
「……ありがと」
「いつものことじゃないか」
「うん。わたし達はいつも一緒だもん」
「フリスが気ままなのもいつも通りね」
そして3人は先に進んでいった。
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「ボスは……デカいトレントか」
「面倒ね」
「どうするの?」
「トレント系に変な能力は無いはずだし、一気に行くぞ」
中央にいるのは全高4mほどの木、トレントの上位種メガトレントだ。周りには多くの木がある。そしてメガトレントへ向けて、ソラとミリアは突撃した。
「取り巻きはいないな」
「木があるから、トレントへの警戒もいるのね」
「必要なかったが……ちっ、飛ばしてきたか」
ソラ達めがけて、葉が飛んできた。その見た目はただの葉だが、動きは手裏剣のように鋭い。数も多いため普通の人ならつらいだろうが、ソラ達には効かなかった。
「ミリア、避けろよ」
「勿論よ。断面が剣みたいだもの」
ソラとミリアは全て避け、フリスは近くに作り出した炎の壁で防いだ。だが問題無いとはいえ、面倒なのは事実でもある
「ねえ、全部燃やしちゃって良い?」
「ああ。俺もやる」
フリスは火球を放ち、爆破して広範囲の葉を燃やしていった。またそれに合わせ、ソラはメガトレントの周囲に爆炎を発生させる。目潰し程度の効果しかないが、それで十分だった。
「はぁ!」
「終わりだ!」
ミリアが太い枝を2本切り落とし、ソラが幹を両断する。そうなれば最早何もできず、メガトレントは倒れ、しばらくすると魔水晶に変わった。
「まあ、こんなものか」
「そうね。林環の時は変すぎて燃やしてたけど、もしかしたらこんな感じだったのかもしれないわね」
「そうかもね。それで、奥に行く?」
「そうだな。行くか」
「分かったわ」
ここでもまた奥にある扉を開け、宝箱のある部屋へ行く。罠の確認をした後開いた宝箱の中にあったのは、ネックレスだ。デザインは、前に得た2つと同じだった。
「これは……またあのタイプだな」
「障壁を作るのだよね」
「これで3つ……ちょうど良いわね」
「そうだな。誰がどれにする?」
「私はイヤリングを貰うわ。フリスはネックレスよね?」
「うん。ソラ君はブレスレットだよ」
「それで良いか。まあ、今のままだと使いづらいがな」
「ソラが神器にすればいいのよ。まだミスリルのインゴットは残ってるでしょ?」
「まあ残ってるが……今やるのは違う気がするな……」
「どうして?」
「それが分からないんだよな……何か引っかかるというか……」
「変な感じだね。大丈夫?」
「ああ。他に影響は無い」
「心配だけど、私達ができることは無いわね……もどかしいわ」
「すまんな」
「大丈夫だよ。一緒だったら良いもん」
「その通りよ。私が言ったことだって、ソラの役に立ちたかっただけなんだから」
「そうか……ありがとな」
そして3人は来た道を戻っていった。




