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空の教室  作者: 緑色
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第5話 平和?

越野くんが崩れ落ちたあの衝撃的な洗礼から、2日が経った。 あの時は死ぬほど怖かったけれど、その後、不気味な放送はピタリと止まった。 私たちはあの日、ひどく気まずくなって、私が教えた窓から飛び降りるという方法で、一人、また一人とあの教室を後にした。

胸に灯った淡い光も、いつの間にか数字が出ることもなく、さっぱりと消えてしまった。

「ねえ、これってもう終わったんじゃない? あの越野のやつ、最初のビビらせだったんだよ、絶対」

渚くんが笑う。 最初はあんなにパニックになっていたのに、1日も経てば慣れとは恐ろしいもので、私たちはすっかり打ち解けていた。お互いを下の名前で呼び合って、スマホも繋がらないこの場所でトランプをしたり、自己紹介をしたり。

「おい、越野。橋口雪ちゃんってめっちゃ可愛くね? 男子2人しかいないし、俺、狙おうかな!」

渚くんが越野くんに、いかにも男子らしいノリで告げる。 橋口さんは、女子の私から見てもすごかった。所作が上品で、一度話した時には鈴が鳴るような笑顔で笑う。まさに高嶺の花だ。

「渚、さいてー」

ギャルの吉田さんが笑いながら突っ込む。渚くんと吉田さんは、どっちも1軍という空気感があってすぐに意気投合していた。吉田さんはもう、渚くんのことを下の名前で呼んでいる。

「橋口ちゃん、早くトイレから戻ってこないかなー」

渚くんがウキウキした声で言った。私はそんな彼に、少し苦笑いしながら見ていた。

「ねー、紬ー! こっちきてー!」

吉田さんと沼野さんに手招きをされる。

「私たち、呼び方決めよーよ」

吉田さんの提案に、沼野さんが乗った。

「いいねぇー。ゆずは最初からゆずゆずだから、ゆずゆずでー」

最初から……? 私はふと疑問に思って尋ねた。

「もしかして、2人は知り合いなの?」

私が聞くと、2人はにんまりして私を見た。

「私たち、同じガッコー!」

お互いに腕を組んで、2人は楽しそうに母校の校歌を歌い出した。それがなんだかおかしくて、私は笑いが止まらなくなってしまった。

「ねーねー、ツムー」

沼野さんが、私の新しいあだ名ツムで呼んでくる。

「普通に私たち、ゆずとゆかって呼んじゃって!」

私はにっこりと笑って頷いた。

「てかさー、このネイルよくなーい?」

ゆずちゃんが煌びやかなネイルを見せてくれる。それからどんどん話は盛り上がっていき、2人の会話に私は「そうだね」と短く頷く。 目立ちすぎず、でも輪からは外れないように。私は適度な距離感で、この偽りの平和に身を委ねていた。

そんな、偽物の平和が崩れ去ったのは、突然のことだった。

突如、教室のスピーカーがガガッ、と嫌な音を立てる。 そして、あの不快なメロディー天国と地獄が、かつてない爆音で鳴り響いた。

「な、なに!? 急に……!」

みんなが慌てて耳を塞ぎ、顔を見合わせる。 音楽がピタリと止まると、冷淡な声が教室に降ってきた。

「これより、各個体のハートの残量を発表します」

残量? 発表? 何のことかわからず立ち尽くす私たちの前で、残酷な放送は続く。

「最初に行われた、嘘をつかないというルールは、現在も継続中です」

「っ……!」

全員が息を呑んだ。 私も含めて、みんなの顔から血の気が引いていく。 痛みがないのをいいことに、この2日間、私たちはどれだけその場しのぎの嘘や取り繕った言葉を重ねてしまっただろうか。

「沼野 32。 橋口 29。 越野 41。 綾瀬 35。 斎藤 21……」

放送は、容赦なく数字を突きつける。 100あったはずの命の数が、知らない間に削り取られていた。

「やばい、どうしよう……」

「嘘でしょ、あんなに減ってるなんて……」

みんなが口々に不安を漏らす中。

「あの、私……呼ばれてないんですけど……」

震える声で、ゆずちゃんが放送に向かって文句を言った。 彼女はいつも明るくて、優しくて、私たちの中心で場を和ませてくれていた。

一瞬の沈黙。そして。

「吉田 5」

「え……?」

耳を疑った。聞き間違いじゃない。 あのいつもニコニコして優しいゆずちゃんが、5? あと5回嘘をつけば、彼女のハートの残量はゼロになる。

呆然と立ち尽くす私たちの胸元に、あの淡いピンク色の光が、今度ははっきりとした数字を刻んで戻ってきた。

「ねぇ、ゆずゆず……ゆずゆずって、ほとんど嘘ついてるってことだよね?」

ゆかちゃんが、顔を伏せながら声を絞り出した。

「う、うん……」

ゆずちゃんがバツが悪そうに頭をかく。その姿を、ゆかちゃんが鋭い目で見つめた。

「私、聞いたよね? 私の彼氏、とったの?って聞いた時、ゆずゆずは誤解だよって言ったよね? あれも嘘なの……っ!?」

叫び声とともに、ゆかちゃんの目から涙が溢れる。

「本当に、誤解だよ……!」

ゆずちゃんが必死に否定した、その瞬間。 ゆずちゃんの胸で光る5という数字が、音もなく、静かに4へと変わった。


(やばい、男子の人数もうちょい増やすつもりだったんだけど2人になっちゃった…)

こんにちは、緑色です!ところどころミスはあると思うんですけどぜひ、評価や感想やってくれるとめっちゃ嬉しいです!

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