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王妃教育の謎から始まる溺愛 ~ 王子と婚約破棄?大歓迎です!  作者: 柚屋志宇
最終章 真実の愛

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67話 華麗なる終幕からの序幕

 ――国王不在となった翌年の春。


 新たな国王の戴冠式が行われました。


 暫定国王だったヴェルニエ公爵は戴冠して国王ルドヴィク三世陛下に、ヴェルニエ公爵夫人は王妃アンリエッタ殿下となられました。


 新国王夫妻を祝うために、パレードが行われる大聖堂から王宮への道筋には大勢の民たちが集まりました。


「国王陛下万歳!」

「王妃殿下万歳!」


 魔女王妃事件があり、前国王一家が異端者として教会に断罪されるという大事件が起こったこの国で。

 民たちは、神に祝福された新しい国王夫妻を歓喜の声で迎えました。


 この戴冠式には教皇特使としてヴァレリウス枢機卿猊下が参列なさり大きな話題となりました。

 ヴァレリウス猊下は我が国の魔女王妃を退治した立役者で、悪魔払い師(エクソシスト)として広く名を知られる有名人となっていましたので、彼が我が国を再来訪するという話題は国中を駆け巡りました。


「ヴァレリウス枢機卿猊下のお馬車が来るぞ!」

「なんて尊い!」


 猊下の尊いお姿を一目見ようと、猊下が行く道の先々に民たちが集まり熱狂しました。

 戴冠式の観覧の他にも猊下が目当てという人々が押し寄せたため、王都の宿屋はどこも満員御礼。

 元より戴冠式は国家をあげての大祝典ですが、ヴァレリウス猊下の人気も相まって大変なお祭り騒ぎとなりました。


 数日におよぶ戴冠式の儀礼祝典が終わると、次はユベール様の立太子式と、ユベール様と私の結婚式でした。


 たくさんの燭台の炎が揺れ、王侯貴族が居並ぶ大聖堂の聖所で。

 ユベール様は王太子の称号を授けられ、続けて、私との婚礼の式を挙げました。


 私は数百粒の真珠が縫い付けられた純白の婚礼衣装を纏い、長いヴェールの上に代々の王太子妃に受け継がれる宝冠(ティアラ)を乗せ、祭壇の前で待つユベール様の隣に進みました。


「死が二人を分かつまで、汝を愛し、慈しみ、守り抜くことを私はここに誓う。私の身と私の剣を汝に捧げよう」


「死が二人を分かつまで、汝に添い、支え、分かち合うことを私も誓います。私の心と私の祈りを汝に捧げます」


 ユベール様と私が神の前で誓いを立てると、大司教が婚姻の成立を宣言しました。


「神が結びたもうた絆を人が解くことは叶わぬ。今ここに二人の婚姻を宣言する」


 この聖所のこの祭壇の前は、かつてヴァレリウス枢機卿がルシアン様の悪魔祓いをした思い出の場所です。

 戴冠式もここで行われたのですけれどね。


「フェリシア、最強の鎖が良く似合っています」


 浮かれているのか、幸せそうな笑顔でそう失言をした私の夫、王太子ユベール殿下に私は小声で間違いを教えました。


「ユベール様、裏表を言い間違えていませんか?」

「……! フェリシア、王太子妃の宝冠(ティアラ)がよく似合っています」


 悪びれずに言い直したユベール様に、私は微笑みを返しました。


「約束のティアラをいただけて嬉しいですわ」


 私たちが婚礼の儀式を終えると、大聖堂の鐘塔が高らかに祝福の鐘を鳴らしました。


 私とユベール様は黄金の馬車に乗り込み、煌びやかな礼服に身を包んだ近衛兵たちに守られながら、王宮までの道筋をパレードしました。


 私たちが行く道の両脇には大勢の民たちが集まっています。


「王太子殿下万歳!」

「王太子妃殿下万歳!」


 民たちの大歓声の中、王太子妃のティアラを頭上に乗せた私は、王太子ユベール様とともに黄金の馬車で王宮を目指して進みました。


 こうして……。

 私とユベール様と各々方の、私怨と私利私欲とに満ちた王位簒奪計画は完成し、華麗に終幕を迎えました。

 私は神の祝福を受け、王太子妃の地位を得ました。



 ◆



「フェリシア殿下、ご結婚おめでとうございます!」


 戴冠式、立太子式、婚礼と続いた一通りの儀式や祝典がようやく終わりました。


 今日は元ヴェルニエ公爵夫人、新王妃アンリエッタ殿下が主催する私的なお茶会に私は招かれていました。


 新王妃殿下の主催する私的なお茶会に招待されている面子は、黒百合の会の皆様です。

 前王妃様に魔女の濡れ衣を着せてその地位から引きずり下ろし、復讐を達成した黒百合の会は活動休止となりましたが、皆様は変わらぬ友情で結ばれており今でも仲良しです。


「フェリシア殿下、先日の晩餐会でのお振舞いお見事でしたわ」

「さすがは我らが才女フェリシア殿下です」


「若輩者ゆえ、まだ至らぬこともあるかと思いますが、どうぞ皆様、ご指導のほどよろしくお願いいたします」


「まあまあ、フェリシア殿下ったらご謙遜を」

「完璧な王太子妃でしたわよ」

「ようやく我が国の王室がまともになりました……」


 戴冠式からずっと公式行事が続いていましたので、王太子妃となった私は、王太子ユベール様とご一緒に数々の公式行事に出席していました。


 ユベール様とご一緒ではない、ざっくばらんな集まりに参加するのは、王太子妃となって以来、このお茶会が初めてのことですのでとても新鮮です。


 学院を卒業して王太子妃となった私には、そもそも対等に話せる相手がほとんどいなくなりましたので、こういう機会は貴重です。


「フェリシア殿下が作成された王妃教育白書を拝読させていただきました。興味深い内容でしたわ」

「私も拝読いたしました。あれが学院の教本に掲載される日が待ち遠しくてなりません」


 王妃教育白書は、王妃教育に関わった教師たちの協力を得て、王妃教育の内容を私がまとめて記した文書です。

 王妃教育白書は、来年には王立貴族学院の作法の授業で参考文献として扱われることが決まっていて、再来年からは教本に掲載される予定です。


 元王妹殿下や元国王の伯母君たちなど、女性王族たちが、私が作成した王妃教育白書についての感想を聞かせてくださいました。


「あれが学院の教本に掲載されれば、誰が王妃にふさわしいか、ふさわしくないか、誰の目にも明らかになりますわね」

「あれを読めば、いくら美しく評判が良くとも、作法と公用語と歴史学の最低限を修めることができない者には王妃は務まらないと解りますものね」

「王妃教育詐欺の予防にも役立ちますが、王族の妃にふさわしくない者が王族と結婚しようとする暴挙の抑止にも繋がりそうですわね」


 王妃教育白書を学院の教本に掲載することは、私のような王妃教育詐欺の被害者をなくすために考えた予防策ですが。

 他の効果も期待できそうということで、皆様にお褒めいただきました。


「フェリシア殿下、刺繍の展覧会を企画なさっておられるそうですね。文化の振興のためにもとても良い案だと思います」

「喜んでいただけて幸いです。でも刺繍展覧会を発案したのは、実は、私ではなく王太子殿下ですの。王太子殿下は刺繍がお好きなのです」

「あら、ユベール殿下は刺繍がお好きでいらしたの?」

「はい。一時期はまっていらしたのです。今は多忙で刺繍に時間がとれていませんが、時間がとれるようになったら、自分も刺繍作品を展覧会に出品したいようです」


「男性にしては珍しいご趣味ね」

「でもユベール殿下って、細かい作業はお得意そうよね」


 私たちは気さくなおしゃべりを楽しみました。


 そしてこの日、この気楽な雰囲気の中で、私は一年ぶりにあのお方のお名前を聞くこととなりました。


「実は先日、元王太子の、現在は修道士となっているルシアン様にお会いいたしました」


 それは慈善活動をなさっているロチルド子爵夫人の口から語られました。


「彼は今、大変な人気者で、私たちは彼に助けられました」


「え?」

「……?」


 私も、新王妃殿下も、他の皆様も、首を傾げました。


 ルシアン様は天才ですが、才能が突拍子もなさすぎて、世事にはとことん疎いお方です。

 ルシアン様がロチルド子爵夫人を助ける姿が全く想像できません。

 ロチルド子爵夫人がルシアン様を助ける姿ならいくらでも想像できるのですが。


「私たちが慈善活動で行った教会のバザーを、修道士ルシアン様は援助してくれたのです」


(あのルシアン様が?!)


「彼は大変人気のある修道士なので、彼のおかげでバザーには大勢の人が集まり大成功でした。私たちの活動が、まさか、あの女の息子に援助される日が来るなんて、運命とは不思議なものです」


 前王妃様のことをあれほど憎んでいらしたロチルド子爵夫人が。

 ルシアン様を王太子の座から引きずり下ろす作戦にノリノリだったロチルド子爵夫人が。

 今、目を輝かせて、ルシアン様を賞賛していらっしゃいます。


「ルシアン様は本当に立派な修道士になられて、人々を導いていらっしゃいます」

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― 新着の感想 ―
物語の序盤でルシアンを異質だと思ってたけど、この世界こそが異質だったから、純粋なまま、誰かに手綱を引いてもらいつつ、幸せになってほしい。
神の愛に目覚めたというより、染まりやすそうだからなぁ。次は信仰に染まったんですね。 良い広告塔になりそう(笑) 悪魔を祓われて神の愛に目覚めた修道士ルシアン。説得力だけはある。
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