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王妃教育の謎から始まる溺愛 ~ 王子と婚約破棄?大歓迎です!  作者: 柚屋志宇
最終章 真実の愛

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65話 宰相の原石

(マルク様、凄いわ! どうして解ったの?!)


 さすがは秀才と誉れ高いマルク様です。

 ユベール様の意図を見抜いたマルク様に、私は驚嘆せざるを得ませんでした。


「……」


 アメリ様は発言を控えて、ユベール様とマルク様のやり取りを観察しておられます。


「ユベール殿……」


 マルク様は嫌そうな顔をして言いました。


「あなたは、それだけの才能があり、ますます高い身分を手に入れておきながら、どうして私利私欲のためにしか動かないのですか」


 マルク様のその問いに、ユベール様は涼しい顔で答えました。


「私の私利私欲は公共の利益とも一致しているので問題はないでしょう。卒業資格試験制度は皆が平等に資格を得る機会を得られます。皆が等しく私利私欲を満たせる制度です」


「この国には問題が山積みだ。それらに比べたら学院の卒業資格の非効率など些細な問題。それより先に着手しなければならない大きな問題が他にたくさんあります。着手する優先順位が間違っています」


「私利私欲が優先ですから」


「そういうところですよ! ユベール殿のそういうところが気に入らない」


(暫定王太子であるユベール様に堂々と苦言を呈していらっしゃる!)


 私はマルク様の行動に目を見張りました。


(おべっかを使って言い寄ったほうがお得ですのに。お気持ち表明までしてユベール様を糾弾なさる。さすがは形振りかまわない秀才マルク様ですわ)


 マルク様はご自分のお考えを貫くお方です。

 成績を上げるためなら、学院の食堂で食事をしながら参考書を読むというお行儀の悪いこともなさり、他者に何を言われようが揺らがず、目的のための作業を淡々とこなし、そして結果を出すお方です。


 マルク様のご実家は男爵家であまり裕福ではないらしく、私たちのように専門分野の講師や参考文献を自在に揃えることは出来ないのだそうです。

 もしマルク様が、私やユベール様のような環境に恵まれていたら、私たちの上を行っていたかもしれません。


「マルク殿の気持ちなど私には関係のないことです。大切なのは私の気持ちです。フェリシア嬢と早く結婚することが私の望みです」


 恵まれているユベール様が飄々と私利私欲を語ると、マルク様は不愉快そうに眉を吊り上げました。


「そういうところですよ! 結局はユベール殿も根本的には元王太子と同じです。才能には天と地ほどの開きがあるが、くだらない気分を優先するという行動原理は全く同じではないですか」


「マルク殿、私は彼とは違います。先ほども言いましたが、私の望みは公共の利益とも一致しているので、彼の我儘とは全く性質が異なるものです」


「それは結果論でしょう。私利私欲が公共の利益という形を装えるように、あなたは小賢しく計算をした。自分の欲望と公共の利益とが一致する公約数を拾って、それらしい形にしただけでしょう」


「もちろんです。だから本心を隠せば問題はないのです。美しい欺瞞(ぎまん)を暴くような不粋な真似はやめていただきたい。言わぬが花ですよ」


(ユベール様ったら)


 ユベール様は、私怨で動くご両親の性格を嫌っていらっしゃいますが、ユベール様もご両親に似ているところがあるように思います。


 親子が似るだなんて、両親を尊敬できない私としては否定したいところですが。

 ユベール様はやっぱりご両親に性質が似ていらっしゃるように思えてしまうのです。


(赤の他人から見たら、私も両親に似ているところがあるのかしら。嫌だわ)


 自分の欠点はなかなか気付き難いものです。

 しかし忌憚のない意見を言ってくれる人が近くにいたら、判断材料が増えて、より良い選択ができるのではないでしょうか。


 そう、例えば、マルク様のようなお方がいれば……。


「マルク様」


 私はマルク様に言いました。


「ユベール様のやり方がお気に召さないのであれば、宰相を目指されたら如何でしょう。宰相となれば国王に意見もできますわ」


「……っ!」

「!!」


 ユベール様とマルク様が同時に私を振り向きました。

 私はユベール様とマルク様を交互に見ながら言いました。


「ユベール様は今回の卒業資格試験の合格者の進路を後押しすると約束してくださっています。……ユベール様、そうですよね?」

「……はい」

「マルク様が合格なさって王宮の文官を希望なさったら、ユベール様はマルク様が希望の部署で働けるよう後押しをなさいますよね」

「……はい、もちろんです」


 私はユベール様から言質を取ると、マルク様に視線を移しました。


「マルク様、試験に合格なさいましたら宰相府に入られて、宰相を目指されたらいかがでしょう」


「フェリシア嬢、良い提案をありがとうございます」


 マルク様は挑戦的な笑みを浮かべました。


「元より私は宰相府を目指していました。望むところです」

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― 新着の感想 ―
元王太子と違って、自分の欲望と公共の利益とが一致する公約数からそれらしく整える事が出来る能力があるから良いんじゃないかな? とりあえず、元王族一家みたいに、他の貴族たちを使い潰し続けるわけじゃないから…
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