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王妃教育の謎から始まる溺愛 ~ 王子と婚約破棄?大歓迎です!  作者: 柚屋志宇
最終章 真実の愛

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64話 財務大臣の雛

「なんて素晴らしい制度でしょう!」


 学院の昼休み、いつものカフェテラス。

 私とユベール様のテーブルに、今日はアメリ様もいらしています。


「もちろん私も受験いたします!」


 アメリ様が興奮気味に受験を宣言していらっしゃるのは、ユベール様がお考えになった卒業資格試験制度のことです。


 卒業資格試験制度は、王命により、雷が落ちる速さで即決しました。


 正式にはまだ成立はしていないのですが……。


 王立貴族学院で今年、試験的に卒業資格試験制度が実施されることになりました。

 試験的に実施した結果を、正式な制度採用を検討する判断材料にするという建前で、王立貴族学院でのみ早々に実施されることになったのです。


 試験的な実施とはいえ、合格者にはもちろん学院の卒業資格が与えられます。


 そしてその卒業資格試験制度の実施の予定が、今日、学院で告知されました。


「フェリシア様かユベール様がお考えになった制度に違いないと思ったのです。お二人とも学院では力を持て余していらっしゃいますものね」


 アメリ様は本当に察しが良いお方です。


「アメリ嬢のお察しの通りです」


 ユベール様は朗らかに微笑んでアメリ様にお答えになりました。


「フェリシア嬢のために私が考えた制度です」

「さすがはユベール様!」


「アメリ嬢、ぜひ受験を頑張ってくださいね。私が提案した制度ですから、私が責任を持って、今回の卒業資格試験の合格者には進路の便宜を図る所存です。もし王宮で働きたいという希望があれば優先採用します」


 暫定王太子である未来の国王ユベール様の発言です。

 ユベール様であれば必ず実行なさるでしょう。


「もしアメリ嬢が合格して、王宮で働くことをお望みであれば、文官でも侍女でも進路は思いのままです」

「財務室の文官として採用していただけますか?」

「おや、財務室をご希望ですか?」

「はい」

「財務室は伏魔殿です。なかなか難しい場所ですよ」


 ユベール様がそう言うと、アメリ様は不敵に微笑みました。


「私が財務室の文官となり、内部調査をして、問題があればユベール様に報告するというのはいかがでしょう」


「それは有難いお話です。しかし、アメリ嬢はそれで良いのですか? 私が責任を持って進路を後押ししますから、もっと我儘を言ってくださってもかまわないのですよ。華やかな職場は他にいくらでもあります。なんなら上位貴族との縁談もご用意できます」


「財務室が良いのです」


 アメリ様は強い光を宿した瞳で言いました。


「商人の血が騒ぐのです」


 アメリ様の実の祖父君は大商会の会長です。


「現在、我が国の国費の使われ方はひどく不透明です。腑に落ちない部分が多くあります。私は財務室の文官となって国費の用途を徹底的に洗い出し、国費の無駄を削減したいのです。無駄を削減し、有益な使い方をしたいのです」


 アメリ様のそのお考えに、私は共感しました。


 不透明で見えないものを明らかにする。

 それは王妃教育詐欺を予防するために私がやろうとしていることと方向性は同じです。


「アメリ様、素晴らしいお考えです。私も財務室には疑問があったのです」

「やはり! フェリシア様もそう思われましたか。フェリシア様のお役に立てるよう頑張ります。ぜひ私を財務室の文官として採用してくださいませ」


「アメリ嬢、素晴らしい心がけです」


 ユベール様が満足気に言いました。


「約束しましょう。アメリ嬢が卒業資格試験に合格なさった暁には、財務室の文官として採用します。私が保証します」

「ありがとうございます。ユベール殿下!」

「アメリ嬢、気が早いですよ。立太子式を終えていませんので、私はまだ『殿下』ではありません」

「失礼いたしました。おほほほ……!」


 如才なくおべっかを駆使したアメリ様は、さらにユベール様に言いました。


「ユベール様、以前にフェリシア様の悪口を言っていた生徒たちは、情勢が変化したことで態度を変えています」

「そのようですね」

「フェリシア様の悪口を流していた者たちを私は知っています。もしユベール様が御入用であれば、彼ら彼女らの所業をリスト化した名簿の作成が可能です。如何いたしましょう」

「アメリ嬢、素晴らしい! ぜひお願いします!」


(さすがアメリ様。事務処理能力が高いわ。でも……)


「そのリストは必要ですか?」


 私がそう疑問を呈すると、ユベール様はにこやかに答えました。


「くだらない噂に簡単に踊らされ、すぐに手の平を返す、信用できない者たちのリストです。何かの役に立つでしょう」


「そういう考え方もありますね……」


 私たちが歓談していると、一人の男子生徒が私たちのテーブルに近付いて来ました。

 小脇に本を抱え、つかつかと歩いてくるその男子生徒は前回の試験の首席マルク・セルネ様です。


「ユベール殿」


 私たちのテーブルに近付くなり、マルク様は険しいお顔でユベール様に言いました。


「卒業資格試験を考えたのはユベール殿ですね?」


 マルク様の質問にユベール様は涼しい顔で答えました。


「ご名答」

「あなたという人は……」


 マルク様は悪魔のような形相で言いました。


「早く結婚したいという、ただそれだけの理由で、卒業資格試験制度を考えましたね!」


 マルク様の指摘に、ユベール様はにっこり微笑みました。


「ご名答」

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