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王妃教育の謎から始まる溺愛 ~ 王子と婚約破棄?大歓迎です!  作者: 柚屋志宇
第4章 悪魔祓い

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54話 嵐の前

 その日は、王妃様の魔女裁判が行われる予定の日でした。


 私はユベール様にお願いして、学院の帰りにヴェルニエ公爵邸へ寄らせてもらうことになっていました。


 王妃様の魔女裁判では、ヴェルニエ公爵夫人が証人の一人として教会に呼ばれていましたので、ヴェルニエ公爵夫人に魔女裁判の様子をお聞きするためです。


「楽しみですわ」


 ヴェルニエ公爵邸へ向かう馬車の中で私がそう言うと、ユベール様は苦笑しました。


「結果は見えていますが。母上の勝利報告を聞いてあげるとしましょう」

「ヴェルニエ公爵夫人ならきっと、王妃様がくやしがっていた様子をつまびらかに説明してくださるわね」

「むしろ母上は話したくてうずうずしていますよ」



 ◆



「大変なことになったわよ!」


 ヴェルニエ公爵夫人は私の顔を見るなり、嬉々とした笑顔で、王妃様の魔女裁判について教えてくださいました。


 それはそれは嬉しそうに、輝くような笑顔でヴェルニエ公爵夫人は言いました。


「王妃様は教会にいらっしゃらなかったの!」

「ええっ?!」


 あまりにも驚いて、私は思わず声を上げてしまいました。


「……」


 ユベール様も驚かれたのか、驚愕の表情で絶句なさいました。


「いらっしゃらなかったのですか?!」


 信じられない思いで私がそう確認すると、ヴェルニエ公爵夫人はさも楽しそうに答えました。


「そうなのよ。来なかったのよ。あの女、墓穴を掘ったの!」


 悪魔や魔女は、教会を嫌うとされています。

 王妃様が教会へ行かなかったら、それが魔女である証拠になってしまいます。


 だから、普通であれば、教会に行かないという選択肢は無いのです。


「ど、どうして、そんな馬鹿なことを……」

「あの女、また癇癪でも起こしたんじゃないかしら。欠席を知らせに来た侍従は顔色が悪かったわ」


 ヴェルニエ公爵夫人は楽しそうに声を弾ませて語りました。


「ヴァレリウス枢機卿猊下はその場ですぐに王妃様は魔女であるという判決を下されたの。多分、国王陛下や王妃様のズボラな行動に、猊下は呆れていらっしゃったと思うわ」


 私とユベール様は、さもありなんと頷きました。


「猊下のご心中、お察しいたしますわ……」

「枢機卿猊下には我が国の汚点ばかりお見せすることになり、心苦しい限りです」


(それにしても欠席するなんて。欠席裁判を知らないのかしら)


 教会から魔女の疑いをかけられた時点で、かなり詰んでいます。

 もちろんヴェルニエ公爵夫人たちは、王妃様が黒魔術を行っていた証拠品などもきちんと捏造して用意していたことと思いますので、ほとんど詰んでいます。


 しかし、素直に教会へ赴き、神の(しもべ)である謙虚な姿勢を示すことで、罪を軽減してもらえる可能性はあるのです。

 むしろ魔女であるという判決から逃れられないのであれば、全力で罪の軽減に務めるべきで、全力で敬虔な信者であるアピールをすべきなのです。


 そうすれば。

 教会へ来たのだから、魔女ではない、とか。

 神の御前で聖句を唱えて祈ることができるのだから、魔女ではない、とか。

 すでに悔い改めている、などの言い訳もできるのです。


 しかも王妃様はそのへんの平民とは違い、王妃です。

 この国の女性たちの中で最も身分が高い女性です。

 身分があるのですから、教会に言い訳を聞いてもらえる可能性はそのへんの平民よりよほどあるのです。


 それを……。

 有利な状況に持っていくためのチャンスの場を、自ら踏みつぶすとは。

 ただ一つかもしれない逃げ道を、自ら埋めるとは。


 ある意味では、これは、王妃様の長年のスタイルであるとも言えます。

 普通に接するだけで心強い味方となる有能な者たちを、あえて背中から撃ちまくり、無駄に恨みを買うのが王妃様の長年のスタイルでいらっしゃるようですので。


「しかも王妃様ったら、体調不良での欠席ですって」

「は?!」


 教会に呼ばれたら体調が悪くなるなんて。

 まるで魔女ではありませんか!


 魔女だと言われたいのか、言われたくないのか。

 王妃様は、何がしたいのでしょう。


「では王妃様は、魔女で確定ですか?」

「ええ、もちろんよ!」


 ヴェルニエ公爵夫人が目を爛々と輝かせて言いました。


「明日、聖騎士団が、王宮に魔女狩りに行くわよ!」


「え?! 力技ですか?!」

「そうよ。もう軍部には連絡を取ったから、もちろん無血開城よ。王宮を守る兵士たちは無条件で聖騎士団を入城させるわ。皆が、伝手のある侍従や侍女たちに一斉に指示を出しているわ。侍女長が聖騎士団を王妃様の元にご案内するわよ」


 侍女たちが何人も王妃様の踏み台にされていたようですので、侍女長は王妃様に対して思うところがさぞおありでしょう。


「魔女を捕らえるため、敬虔な信者たちはヴァレリウス猊下と聖騎士団に全面協力してよ! おほほほ……!」


 ヴェルニエ公爵夫人は高笑いをしました。


「随分と……雑なのですね」


 王妃様が魔女裁判に出頭せずに、チャンスを自ら踏みつぶし、欠席裁判という負けを素早くつかんだことにも驚きましたが。

 明日には王宮に聖騎士団が突入するという展開にも驚きました。


「いきなり聖騎士団が王妃様を捕らえに行くなんて」

「ヴァレリウス猊下はお忙しいお方だから、さっさと解決して、さっさと聖都にお帰りになりたいのではないかしら」

「ああ……」


 昨日、ヴァレリウス猊下は、ルシアン殿下のお相手をして酷くお疲れのご様子でした。

 お察しいたします。


「楽しくなってきたわね」


 ヴェルニエ公爵夫人は悪魔のように微笑みました。


「さあ、魔女狩りの時間よ!」

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