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王妃教育の謎から始まる溺愛 ~ 王子と婚約破棄?大歓迎です!  作者: 柚屋志宇
第3章 王冠への道

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26話 アメリ(3)

(フェリシア様がいない?!)


 一学年の二度目の試験結果の順位が貼り出された。

 その順位表の上位にフェリシア・モンフォールの名は無かった。


 フェリシアが消えたため、ユベール・ヴェルニエは一位に、マルク・セルネは二位に、アメリは三位に順位が繰り上がった。


 ざっと順位表を見たアメリは、下位にフェリシアの名を発見した。


(フェリシア様が九十五位?!)


 得点から察するに、試験問題の半分も回答できなかったことになる。


(フェリシア様のような怪物が、普通の人間みたいな成績だなんて有り得ない)


 アメリにはフェリシアのその成績が異常にしか思えなかった。


(あれから一切の勉強を止めていたとしても、フェリシア様なら上位に名を連ねるはずなのに)


 アメリは周囲を見回した。

 大勢の生徒たちが廊下に張り出された成績順位表を見に来ていた。


 順位表を見て一喜一憂している生徒たちの中に、今回一位のユベール・ヴェルニエと二位のマルク・セルネもいた。

 二人とも順位が上がったというのに難しい顔をしている。

 他にも成績上位の者たちが釈然としない表情を浮かべていた。


(フェリシア様は前回一位だったもの。上位陣はみんなフェリシア様のことを気にしていたわよね。フェリシア様が上位にいないことをおかしいって思うわよね)


 アメリは疑問を膨らませながら、フェリシアの姿を探した。


(フェリシア様がこんなに成績を落とすなんて、頭を打って記憶喪失にでもならない限りは有り得ない)


「……!」


 アメリはフェリシアの姿を見つけた。

 ぼんやりと成績表を見つめているフェリシアに、アメリは歩み寄ると話しかけた。


「恐れ入ります、フェリシア様……」

「あら、アメリ様。お久しぶりです」


 フェリシアはアメリのことを覚えていたようで、にっこりと微笑んだ。


(私のことを覚えていてくださった!)


 アメリは一瞬浮かれたが、すぐに気を取り直して当初の疑問について尋ねた。


「フェリシア様、つかぬことをお伺いしますが、頭にお怪我をなさいましたか?」

「え?」


 アメリの真面目な質問に、フェリシアは一瞬呆けたような顔をした。


「いいえ、頭に怪我はしておりません」

「あの、では、どうして……」


 成績が落ちたのでしょうか、と質問しようとて、失礼ではないかとアメリは迷った。

 そして少し言い方を変えた。


「その、前回の順位と大幅に違うようですが、何かご事情がおありなのですか?」

「ああ、それは……」


 フェリシアは少し困ったように眉を下げて微笑んだ。


「ええ、まあ、諸事情があります」

「そうなのですね……」


 諸事情とは何なのか、アメリは気になった。

 だがさすがにそこまで踏み込んで質問するのは失礼だと思い引き下がった。


(諸事情……。知の怪物フェリシア様がお考えになることですもの。深謀遠慮に違いないわ)


「お兄様、少し知恵を借りたいのだけれど」


 アメリは詳細を伏せて、兄に聞いてみることにした。


 兄は一見では、アメリのような目立つ才能は持っていないように見えるが、アメリは兄の妙な賢さを知っていた。

 兄の賢さは、要領が良いとか、あるいは狡猾だとかいう類の、はっきりと正体がつかめない賢さだ。


「学院で首席だった人が、首席でいることをやめる理由って何かあるかしら?」


 アメリの質問に、兄は即答した。


「賢い奴は首席にこだわらないと思うよ」

「どうして?」

「学院に入学する目的は、大学進学のためとか、面子のためだろう?」

「そうね」

「大学進学が目的の場合、学院の試験が一番でも最下位でも、大学に入学できれば結果は同じ。面子の場合も、学院の卒業資格さえ貰えれば良いんだから一番になる必要がない。貰えるものが同じなら労力は少ない方がお得だ。その分、別のことに時間を使ったほうが有意義だよ」


 兄はニヤリと笑ってアメリに忠告した。


「アメリも無駄に頑張りすぎるなよ」

「たしかにそれは一理あるわね……」

「真面目なのはアメリの良いところだけど。賢い奴は上手く手を抜いてるよ」


(フェリシア様はとても賢いお方だから、上手く手を抜くことにしたのかしら)


 アメリはそう結論付けたが、ほどなくしてアメリが出したその結論やもろもろの推測に矛盾する出来事が起こった。


 学院の廊下を歩いていたアメリは、偶然、それを耳にした。


「フェリシアは随分成績が落ちたようだな」

「ええ、そうです、ルシアン王子殿下。フェリシア様は今回の試験では九十五位だったそうですわ」


 それは廊下で、ルシアン王子が数人の令嬢たちと立ち話をしている声だった。

 ルシアン王子を囲んでいる令嬢は、ラルベル公爵令嬢セリーヌとその取り巻きの令嬢たち。


 フェリシアの名が聞こえて気を引かれたアメリは、反射的に足を止めて聞き耳を立てた。

 そして次に続く有り得ない言葉に驚嘆した。


「やはりフェリシア様の前回の成績はまぐれだったようですね」

「フェリシアが一位だなどと、おかしいと思ったのだ」


(は?!)


 有り得ないことに、ルシアン王子がフェリシアを貶めていた。


「フェリシアはいつまで経っても王妃教育を覚えられない不出来な奴だからな。あんな鈍い女が一位になるのはおかしかった」

「やはり一位はまぐれでしたのね」

「不出来でいらっしゃるのに、王太子妃に選ばれたり、まぐれで一位を取ったり。フェリシア様は運だけはとても良いのですね」


(まぐれで一位になれるわけないでしょおおお!)


 アメリは内心で絶叫した。

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