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第4話 空飛ぶ目玉と魔法陣

「黒森さん!新聞読んだよーー!!あれどうやって撮影したの!?特殊メイク?着ぐるみ?」




「まどいちゃん、あれ仕込みだったんだね!?ほんとにびっくりしたよー!」




昼休みの2年A組は、時の人となった黒森まどいを取り囲むクラスメイトたちの歓声で揺れていた。 教卓の上に広げられているのは、こふでとすすきが昨晩徹夜で書き上げた校内新聞。そこには、【衝撃! 謎の転校生、本物の悪魔だった!?】というおどろおどろしい見出しと共に、まどいの真の姿が掲載されている。




「メイクっていうか、あ、あの……あれは、その……フヒヒ、お褒めの言葉ありがとうです……」




まどいはもじもじしながらも、ギザギザの歯を覗かせて笑う。クラスメイトにとって、すでにまどいは自称悪魔の痛い厨二病罹患者ではなく、転校初日に体を張って新聞部の企画に協力した、ノリのいい転校生だった。




自分の新聞に浮き立つクラスを、満足そうに眺めるこふで。すすきはそんなこふでを膝の上に乗せ、セーラー服のリボンを勝手に結び直している。身長差のせいで、すすきがこふでに覆い被さっているようにも見えるが、クラスメイトもこふでも日常茶飯事といった様子で気にしていない。




「…こふで、なんか企画だと思われてるけどいいの?」




こふでの耳元に口を近づけ、ぼそっと囁くすすき。




「読者が望む情報を伝えるのがジャーナリズム!どう受け取られようが喜んでるならいいんだよ!嘘はついてないしな」




「ふーん…」




新聞を食い入るように読んでいた一人の生徒がふと顔をあげ、教室の後ろに座っている新聞部の二人に声をかける。




「ねえねえ、この企画ってこれで終わり?もっと読みたい!」




そんな無邪気なリクエストに、周囲の生徒から同意の声が上がった。こふでの目がきらりと光り、



「もちろんです!まどいさんアレ見せてあげて!」



と高らかに言った。




「えっ、あ、アレって!?」




「えっとほら、アレですよ!!悪魔の…黒い…アレ!」




よく知らないけど、とにかく何でもいいから派手なものを!という無茶振り。まどいは困惑していたが、急にハッとした表情を作った。




「なるほど!黒い悪魔のアレ…フヒヒ、お任せあれ!」




そう言うやいなや、教卓の新聞を裏返し、ポケットから出した羽ペンで何かを描き出した。




「……フヒ、フヒヒ! 我が深淵の瞳よ、真実を暴く翼となれ! 召喚――『偵察魔スカウト・アイ』!!」




まどいの宣言と共に、教室の蛍光灯がバチバチと激しく明滅した。魔法陣の上に悪臭を放つ黒い霧がかかり、魔法陣に黒い雨を降らせる。雨が滲んだシミから、粘り気のある泥のような何かが噴き出したかと思うと空中で弾け、無数の「それ」へと姿を変えた。




「ギギィッ!」「ギィッ!」




血走った眼を持ち、真っ黒な皮膜の翼と、細い鉤爪が生えた蝙蝠に似た異形。それが数匹出現し、一斉に天井へと舞い上がった。偵察魔たちはギョロギョロと独立して動き回り、あるものは生徒のノートを覗き込み、あるものは教壇の裏側へ潜り込み、あちこちを覗き見ながら教室を縦横無尽に駆け巡る。




「う、うわあああ! なんだこれ、すげぇ!!」



「見てよこれ、まじで生きてる?!まじの蝙蝠じゃん!」




狂乱する教室。生徒たちは空中を泳ぐ異形の蝙蝠を捕まえようと手を伸ばし、スマホのカメラを向けてフラッシュを浴びせる。

こふではすすきの膝の上で腕を組み、この喧騒を心を浮き立たせながら眺めていた。 目の前でホバリングし、自分を見つめるそれと視線を合わせ、その蛍光緑の虹彩を食い入るように見つめ、満面の笑みを浮かべる。




「すっごい!!さすがまどいさん、最高ですね!!このビジュアル、次の号外のアイキャッチに使わせていただきますよ!」




「フヒヒっ…ほ、他でもないこふでさんの頼みですから!!惚れ直しましたか?なんて…フヒヒっ」




昨日体内に触手を突っ込まれたことで吹っ切れたのか、ジャーナリズム精神、もといイエロージャーナリズム精神がことの重大さを無視させたのか、こふではすでにまどいという悪魔をどう紙面で活用し、生徒たちの関心を煽るかということしか考えていないようだ。




「…こふで、この見るからに未知の感染症を媒介しそうな蝙蝠、次の号外のアイキャッチとして完璧な構図で撮影した。紙面レイアウトももう浮かんでる。惚れ直した?」




いつの間にかスマホカメラで偵察魔を連写していたすすきが、こふでの耳元で熱っぽく囁いた。こふでの肩に顎を乗せ、獲物を狙う蛇のような目で、浮かれるまどいを観察している。すすきにとっては、まどいが何者であるかよりも、こふでがこの単なる取材対象に目を奪われている現状の方が、彼女にとってはよほど注視すべき事態だった。




「おお!よくやったすすき!今日の放課後にまた……」




こふでが言いかけたその時、勢いよく教室の扉が開け放たれた。引かれたドアがドア枠にぶつかる音が響き渡る。



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第4話まで読んでいただきありがとうございます!!


続きが気になる!と思った方は、ぜひブックマークやフォローお願いいたします!


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