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* 謠 ***
「お前が神子姫におなり」
「お前なら大丈夫」
「そう。あの娘は、お前とは違って弱い子だから」
「そう。とてもじゃないけど、あの子では可哀想で不憫だもの」
私を逃がさないように取り囲む、父様と母様の囀り。
父様は、笑って私の肩に手を置く。
「やってくれるね? お前は、優しいあの娘と同じだから」
同じ? ――――違うでしょう。
水に映したかのような容貌。
木霊したかのような声。
それでも、可哀想なのは、あの子だけ。
不憫なのも、あの子だけ。
私は、あの子に似ている、あの子の代わり。
母様は、微笑んで私の手を握る。
「平気よね? お前は、あの娘と同じだから」
―――――やめて。
私はあの妹じゃない。
私なのは、私だけ。
あの子と同じだなんて、いわないで。