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深夜徘徊は怪  作者: ふん
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BB戦争

 街灯に照らされて何かが光った。気になり足を止めて拾い上げてみると黄緑色のBB弾だった。

 未だにBBがなんの略かもわからないが、携帯で調べてみる気にもならない。ぽいっと電柱に当てるように投げ捨てると、オレは足を進めた。

 しばらく歩いているとあることに気が付いた。他にもなにかないかと探しながら歩いている。ずいぶん懐かしい視界だ。背も高くなり、見える景色は同じというわけにはいかなかったが、子供の頃はよく地面とにらめっこをしながら歩いていた。

 なにかに使えそうなものを見るのが好きだ。今では百円ショップやホームセンター、雑貨屋などをウロウロするのだが、子供頃は金もなく店なんかには行けなかった。

 でも、今も昔も本質は同じだ。

 子供の頃は気付けば落ちてるネジやBB弾を拾っている。特にゆるみ止めのナット付きのネジや珍しい色のBB弾だと、レアアイテムを拾ったような気分になった。

 上級生が撃ち合いしてるのを見かけると、愛の鐘(地域によっては愛のチャイムとも呼ばれているらしい。要は五時とか五時半に鳴る子供の帰宅の目安となる放送だ)が鳴る頃に、拾いに行っていた。しかし、上級生は愛の鐘が鳴っても遊び続けていることもあった。その時は次の日に早めに家を出て学校へ行く途中に拾っていた。

 何故か白よりも、クリーム色BB弾を見かけたような気がする。

 ある程度量が増えると選定が始まる。クリアカラーや青も捨てがたいが、白がレアだった。なぜなら汚れや傷が目立ち、良い状態の白はなかなか見つからなかったからだ。

 『戦場は宝の山』それがBB弾収集仲間とのお決まりのセリフだった。

ある日、よく遊んでくれた近所の兄ちゃんが「もう遊ばないからやるよ」と専用のケースにクリーム色のBB弾がたっぷり詰まったものをくれた。

 貰った瞬間はすごく嬉しくてテンションが上がったのだが、家に帰りペットボトルに入れている自分が拾ったBB弾を見比べると、貰ったBB弾はどうも見劣りがする。拾い集めた方がカラフルだからとかそういうわけじゃない。

 レアカード一枚を当てて興奮していたオレに「今から家に来いよ。良いもん見せてやるから」と言われ友達の家に言った時に、カードファイルに入れられた大量のレアカードを見せられた時の喪失感に似ている。

 一気に熱意が冷める。あの、宝物がゴミに変わる瞬間。

 必死に集めていたものは、こんなに簡単に集められるのかと、金の力の偉大さを知った日。それは、生まれて初めて何かを悟った瞬間でもあった。

 次の日にはゴミ袋の中にBB弾をぶち撒けていた。

 近所の兄ちゃんに貰った分だけは「せっかく貰ったんだから、大事にしなさい」との母親の言葉で、押入れにしまったことを思い出した。



 その後、そのBB弾がどうなったのか行方を知りたくなり母親に聞いてみたら「アンタが鼻の穴に詰めて遊ぶから捨てたじゃない」と言われた。

 今では「バカな子供がはしゃいでるな」と冷たい視線を送ることもあるが、オレも立派なバカな子供だった。








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