第40話 エピローグ
俺達4人は、1か月ぶりの陽の光に晒されていた。
「くーっ、太陽が眩しいぜ!」
「何その恥ずかしいセリフ!」
俺の言葉に、マイが、それでも嬉しそうに毒づく。
「やっと、地上の飯、食える。」
「調味料、買わなきゃなー。」
ノボもヨースも、思い思いの言葉を発した。
二人とも、懐かしい陽の光に、嬉しさを隠せない。
「コニー、いなくなっちゃったね。」
マイが少し寂しそうにこぼす。
俺達はベビードラゴンを倒した後、ダンジョンⅬを引き返した。
これで一旦ダンジョンⅬを後にしよう。
地上に出よう。
コニーと一緒に。
そう思いながら、引き返してもコニーの姿は見えない。
……これが契約終了ってことか。
コニーは契約終了と共に、俺達パーティから離れた。
そう理解した。
地上に出るには、3日も要した。
「ま、気にしてもしょーがないぜ! 早く冒険者ギルドに行って、貰うものを貰おうか。」
俺達は、ダンジョンⅬ-26層までの攻略報告と、その成果報酬を受け取るべく、冒険者ギルドに意気揚々と向かった。
――ギイッ……。
冒険者ギルドのドアを開けると、目の前に女が居た。
「遅いわ。」
『コ、コニー?!!!』
ノボを除く3人が、合わせたように驚いた声を出した。
コニーが居なくなったという感傷もひとしお。
なんてことの無い顔でコニーがそこに突っ立っていた。
「また会えて良かったよー!」
ヨースがコニーに飛びつく。
そんな俺達に眉ひとつ動かさず、コニーはただ、俺に突き出すように手を伸ばした。
「はい、これ、帳簿。サインしなさい。」
突き出した手の先には、一冊のノートがあった。
「……どれどれ……。」
コニーと再会しながらも突然の展開に圧倒されつつ、俺は帳簿を目に通す。
「……120万ゼニ―??!」
俺は再び驚きの声を上げた。
時給制の日当はともかくとして……。
やけに食材費が目に付くな。
「どれも正当報酬よ。私としては、ちょっとサービスが多かったぐらいに思っているわ。端数もおまけしたわよ。さあ、さっさとサインして、ギルドの受付に提出して精算なさい。」
「くそー、ポニー、ぼりやがって……。」
俺は涙目でサインをして、受付に向かう。
「ダンジョンⅬの攻略、お疲れさまでした。26層までの攻略ですね……。えっと……、そこからハケン代も差し引いて……。」
受付はパチパチとソロバンをはじき始めた。
「……はい、それでは経費を差し引き、20万ゼニ―のお渡しになります!」
『たった20万ゼニ―?!!』
再度、ノボを除く3人が声を合わせた。
「……だからあなた達はすぐ騙されるのよ。」
コニーが呟くと、おもむろに受付に向かって言った。
「地下ダンジョンAからZは、王国特別助成金が付くわ。私の分は、半分はギルドから直接受け取る分のはずよ。」
「え……、えっと、はい、そうでしたね。えへへ……。」
受付の奴、確信犯だ!
こいつこそ、俺達からぼろうとしてやがったな……。
そしてさすがポニーの奴、カネには抜け目がない。
俺は、改めて80万ゼニ―を受付から手にした。
「ありがとう、コニー! 助かったわ……。」
マイがホッと胸を撫でおろして、コニーに御礼を言った。
コニーはそんなマイを優しく一瞥して、
「さあ、私の用件はこれでおしまい。行くわ。」
踵を返した。
「なあ、ポニーさんよ、本当に行っちまうのか?」
「コニー、もうちょっと一緒に居ようよ!」
「オレ、コニーの作ったジャーキー、また食べたい。」
「僕、まだコニーの出会ったモンスターの話、聞きたいよー!」
それぞれが、思い思いにポニーを引き留める。
「あなたたちとはもう、契約終了よ。それがあの時の約束。」
そうすると振り返らずに続けた。
「また会うこともあるでしょう。あなた達が冒険をやめさえしなければ。」
ポニーは振り返らず、颯爽と冒険者ギルドのドアを開けると、そのまま去っていった。
俺達は、それを見送るしかなかった。
これで補助魔術師はいなくなった。
さて、これからどうしようか。
いや、そんなことは今考えても仕方がない!
仲間がいる。冒険がある。きっと楽しい明日が待っている。
「さあて、飯を食いに行こうぜ!」
「うん!」
「腹、減った。」
「だねー!」
俺達は前を向いた。
またコニーと会える、そんな確信を胸に抱きながら――




