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悪役令嬢です。ヒロインがチート過ぎて嫌がらせができません!  作者: 一番星キラリ@9/2やられる前に発売:商業ノベル&漫画化進行中
 

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37/49

37話:いよいよ始まる――。

 ジャレッドがアナを伴い、ホールの中央へ移動していく。

 リベルタスは少し離れた場所に控えた。


 いよいよ始まる――。


「キャンデル伯爵令嬢。隣室で飲み物の用意があるそうですよ。まだ時間もあるので、行ってみますか?」


 ヴェルナーの言葉に頷きそうになるが、ダメだ。

 そんなことをしている場合ではない。

 というか頷いて移動しようとしても、シナリオの強制力が働き、ホール(ここ)からは出られないはずだ。婚約破棄と断罪が終わるまで。


 そう思ったまさにその時。


「みんな、聞いて欲しいことがある。私はこれから重要なことを発表するつもりだ。私の名はジャレッド・イートン。イートン公爵家の嫡男だ!」


 いきなり名乗りから入った。

 もう心臓がバクバクしている。


「なんでしょうね。君の婚約者は何かやらかすつもりなのでしょうか」


 ヴェルナーはこれから起きることを、何も知らない。

 とても牧歌的にジャレッドの方を見ている。


 ヴェルナーの視線の先にいるジャレッドの周囲には、空間ができつつある。

 皆、公爵家の嫡男が何を始めるのかと、興味津々だ。


「エマ・リリー・キャンデル! そこにいるのだろう。こっちへ来るんだ!」


 心臓が止まりそうになった。

 こうなる流れとは分かっていても、とんでもなく緊張し、恐怖を感じている。


 体はすくみそうになるが、シナリオの強制力により、私は歩き出していた。


「!? 何をするつもりなのですか!?」


 ヴェルナーの声がするが、ジャレッドは無視している。

 今、この場の主人公はジャレッドと私だ。

 ヒロインの攻略対象であるヴェルナーでさえ、その存在は無視されている。


 自然とモブ扱いになる令嬢令息が道を開けてくれるので、私はジャレッドとアナの前に出ることになった。


 心臓がもう爆発しそうだ。


 嫌がらせはすべて不発に終わっていた。

 不発……というか、私はシナリオ通りの嫌がらせを実行している。

 だがアナはダメージを一切受けていない。

 よってジャレッドは「嫌がらせをしようとした」ということで、断罪するだろうと予想していた。


 だが――。


「キャンデル伯爵令嬢。僕は君と婚約破棄し、ここにいるアナに、真実の愛を捧げたいと思っている。この気持ちを結実させたいと思っているんだ!」


 これにはざわざわと令嬢令息がざわつく。


「なぜですの?」「え、真実の愛のために婚約破棄?」

「そんな理由で婚約破棄なんて許されるのですか?」


 このざわめきの内容に私も激しく同感だった。

 ジャレッドはなぜ婚約破棄の理由を言わないのか?

 いや、言っている??

 真実の愛を見つけた。だから私との婚約破棄をしたいと言っている??

 言って……いるんだ。

 それで婚約破棄ができると思っている。


 そこで瞬時に悟る。

 シナリオの強制力で婚約破棄を訴えているが、説得力のある理由がないんだ。


 さらにこれは間違いなく、自身の両親には話していない。

 私と婚約破棄するつもりであることを。

 これで婚約破棄は成立するのだろうか!?

 ……成立する!

 だってこれだけ沢山の証人がいるのだ。

 なかったことにはできない。


「聞いているか、キャンデル伯爵令嬢! 私は偽りの結婚をするつもりはない。心から好きと思える相手と結婚をするんだ。だから君との婚約は破棄! 以上だ。返事は!」


 断罪話は出てこない。

 婚約破棄が出来て、断罪はなし。


 これは……願ったり叶ったりの展開ではないですか!


 結局、嫌がらせはしたが、アナがダメージを受けていない。そこで断罪することを、ジャレッド……というかこのゲームの世界が諦めたのね。


 ならばここは、こう答えるまでだ。


「分かりました。真実の愛に生きたいというイートン令息を止めるわけにはいきません。イートン令息からの婚約破棄、確かに受け入れました」


 私の返事にジャレッドは満足気な顔になっている。


「アナ・ココ・ディアス男爵令嬢。これまで辛い思いをさせたね。私が婚約しているばかりに。でも、安心するといい。これからは君と真実の愛に生きる」


 ジャレッドがアナの手を握り、自分の方へと抱き寄せる。


「私もあなたの真実の愛に応えます……」


 アナがジャレッドの言葉に応じた。

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