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悪役令嬢です。ヒロインがチート過ぎて嫌がらせができません!  作者: 一番星キラリ@9/2やられる前に発売:商業ノベル&漫画化進行中
 

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36/49

36話:やってきました断罪の場です!

 遂に着いてしまった。


 断罪の場となる宮殿に。


 エントランスで馬車を降りると、そこは白いドレス姿の令嬢で溢れかえっている。そんな令嬢をエスコートする黒のテールコート姿の令息の姿も目に入った。


 婚約していれば、屋敷まで迎えに行き、エスコートするのがセオリー。


 私は……イレギュラーだった。


「まさかと思ったけれど、そのまさかでしたね」


 その声にハッとして顔を上げると、そこには黒に近い深緑色のテールコート姿のヴェルナーがいる。襟足の長い銀髪にエメラルドのような瞳。細身のテールコートも実にお似合いだ。


「キャンデル伯爵令嬢。同伴者のいないわたしに君をエスコートさせてもらっても?」


「! よろしいのですか?」


「元々同伴者はいないんですよ。わたしは婚約をしていないから。それに親しい令嬢なんて君ぐらいです。君以外をエスコートしたら、いろいろと噂になります。その点、君は婚約者もいるし、その上、婚約者があんな状態だから……」


 そこでヴェルナーはエントランスホールに目をやった。

 扉は開け放たれているため、ホールの様子はここからでも見ることができる。


「……!」


 白いドレスにピンクブロンド。

 あれはアナ。

 そのそばには従者兼護衛の黒髪にルビー色の瞳のリベルタスがいて、彼は……黒のテールコートを着ている。伯爵家の次男であるリベルタスも、今日が社交界デビューなんだ。ということはアナをエスコートして来たのだろう。


 だが。


 そのアナのそばに張り付くようにしているのは、ジャレッドだ。

 どうやら控え室までアナをエスコートするつもりに見える。


「エスコートする相手がいるのに。そもそも婚約者がいるのに。強引に割り込むなんて。彼が未来の公爵だと思うと、この国の行く末が心配になります」


 それは私も同感だ。

 でもヒロインであるアナと結ばれたら……きっとまともになるのかしら?

 それは分からないが、隣国の皇子にこんな醜態を自分の婚約者が晒すなんて。


 やれやれだわ。


 あっ……! 気づいてしまった。


 さっきヴェルナーが「まさかでしたね」と言っていたのは、ジャレッドとアナのことを言っていたのだろう。まさか婚約者を差し置き、別の令嬢と社交界デビューとなる舞踏会に現れるなんて、と。


 ここはもう申し訳ない気持ちが高まり、つい、こう口にしていた。


「未来の公爵……。そうですよね。不快な様子をお見せすることになり、申し訳ありません」


「婚約者だからといって、キャンデル伯爵令嬢が謝る必要はないですよ。あれは彼自身の人格の問題だと思いますので。それよりも行きましょう」


 ヴェルナーが私の手を取り、歩き出す。

 見目麗しいヴェルナーが動き出すと、皆の視線が集まる。


 一体誰が、あのヴェルナーにエスコートされているの!?


 そうなるが、私だと分かると「ああ」という表情になる。

 婚約者がいるのに、その婚約者にエスコートしてもらえない可哀そうな令嬢。

 ヴェルナーも同情しているのだろう……そんな解釈をしてもらえる。

 見下されているだろうが、波風は立たないのでこれで良しとする。


 それに。


 ヴェルナーにエスコートされるのは気分がいいことだ。

 特に一人で控え室まで行くことになると思っていたから。


「エール王太子殿下は、ホールに直接登場なんですかね」


「そうだね。そうなると思うよ。殿下もまた、私と同じ。同伴者がいないからね。妹君をエスコートして入場だろう」


 その妹は冒頭の挨拶で退場のはずだ。

 まだ舞踏会でダンスをするような年齢ではないから。


「ところでキャンデル伯爵令嬢」

「はい」

「イヤリングは忘れたのかな?」

「あ……」


 そこでイヤリングは、ホールに入る直前につけるつもりだと明かす。

 理由は……特にない。なんとなくだ。


「ふうーん。なんだか意味深ですね」

「本当にただ、なんとなくなんですよ!」


 そんな会話をしていると、控え室のホールの入口の扉の前に到着している。


 ここまで来てしまった。

 もう後戻りはできない。


 心臓が急にドキドキしてきた。


「では中に入りましょうか」

「はい……」

「……緊張していますか?」

「少しだけ」


 ヴェルナーが敏感で少し困ってしまう。

 深呼吸をして、気持ちを落ち着ける。


 ゆっくり開いた扉から中へ入る。

 控え室とはいえ、ホールなので、天井も高い。

 シャンデリアも煌めき、ゴールドが目に着く内装に圧倒された。そしてそこには既に大勢の令嬢令息が集結している。


 王立エール魔法学園は人数が限られていた。

 だが学校はここ以外にも沢山ある。

 王立エール魔法学園以外に在籍する貴族の令嬢令息も大勢いるのだ。

 さらには女学校や男子校を選ぶ令嬢令息もいるわけで。


 そんな彼らの中で、今年社交界デビューする者がここに集結したわけだ。


 こんな場で婚約破棄と断罪を告げなくてもいいのに。


 ゲームをプレイしている時は、ドラマチックな演出だと思った。

 悪役令嬢を追い詰めるのに、これ以上の舞台はないと。


 でも今、自分が悪役令嬢の立場でここにいると……。


 事前に知らされていなければ、ここまで緊張しなかったかもしれない。

 でも私は前世の記憶を保持しているから……。


「!」


 ジャレッドがアナを同伴し、入場してきた。

 その後ろにリベルタスが続いている。


 本当はリベルタスがエスコートするはずだっただろうに……。


 ジャレッドはさすがに身勝手が過ぎる!


 私は悪役令嬢だから、ジャレッドから冷たい態度をとられても、それはシナリオの強制力もあるから……と諦めがつく。でもリベルタスは完全にモブなのに。


 だがそんなリベルタスを心配している暇などない。

 間もなくジャレッドによる断罪が始まるのだから――。

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