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悪役令嬢です。ヒロインがチート過ぎて嫌がらせができません!  作者: 一番星キラリ@受賞作続刊発売決定:商業ノベル&漫画化進行中
 

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13話:うわーっ!

「どうしたんだ、イートン令息、大声を出して」


「キャンデル伯爵令嬢が、この木の枝でアナを襲おうとしたんだ!」


 弁明をしたいのに、声が出ない。

 これではセシリオに疑われ、嫌われてしまう――!


「イートン令息。キャンデル伯爵令嬢は君の婚約者だろう? なぜ彼女を敬称で呼び、ディアス男爵令嬢をファーストネームで呼ぶんだ? 普通は逆だろう? それでこんな木の枝で襲う? 相手は子ヤギではないんだ。攻撃するというなら、もう少し太くて大きな枝にするのでは?」


 セシリオは落ち着いた声でそう言うと、チラッと私を見てからアナに声をかけた。


「ディアス男爵令嬢、こっちにき」


 そこで言葉を切ると、セシリオは「ディアス男爵令嬢、後ろを向いてください。背中をこちらへ向けていただけますか」と叫んだ。


「は、はいっ」と応じたアナがこちらへ背中を向けると。


「なっ! アナ、背中に蜘蛛がいるぞ!」


 ジャレッドが叫んだ。


「キャンデル伯爵令嬢は、この蜘蛛を払おうとしたのでは?」


「何!?」


「ほら、彼女から手を離して」


 セシリオがジャレッドの腕を掴み、ようやく私の手が開放された。

 捕まれた手首は赤くなっていたが、私はこの場を収めようと、手を動かす。


 つまり頭に載せることを諦め、蜘蛛を追い払おうとしたのだけど――。


「あっ!」


 見事な放物線を描き、蜘蛛はジャレッドの頭に着地した。


「うわーっ、蜘蛛は嫌いなんだ!」


 ジャレッドは素早くハンカチを取り出し、それで頭の蜘蛛を払った。

 するとその蜘蛛は――。


 アナの頭に着地した。


 シ、シナリオ通りになった……!


「キャンデル伯爵令嬢、その木の枝、貸してもらえる?」

「は、はい」


 セシリオは払うのではなく、木の枝に移し、アナの頭から蜘蛛を排除することに成功した。蜘蛛は枝ごと少し離れた茂みに置くことになった。


「エール王太子殿下、ありがとうございます。キャンデル伯爵令嬢も蜘蛛に気づき、追い払おうとしてくれたのですよね。ありがとう」


 アナはニコリと笑う。ジャレッドはアナに駆け寄り「す、すまない。まさか君の方へ蜘蛛が飛んでいくとは思わなかった! ごめん!」と必死に弁明している。


「キャンデル伯爵令嬢」


「エール王太子殿下、騒ぎを起こしてしまい、申し訳ありませんでした」


大事おおごとにしたのはイートン令息だ。君は静かに蜘蛛を払おうとしていたのに。それよりも、いいかな」


 そう言うとセシリオは、優しく私の手を持ち上げる。

 そして手首が赤くなっているのを見て、ため息をはく。


「例え政略結婚でも婚約者なのに。こんなに粗暴な扱いをするなんて、許せないな」


「殿下……」


「これ、もしもに備えて持参したんだ。使って」


 セシリオがジャケットのポケットから取り出したのは、小さな丸い平べったい缶。蓋を開けると軟膏が入っている。


「ポーションだから、塗るとその赤みはすぐに引くと思う」


「! ポーションを使う程ではないですよ、殿下」


「本当にキャンデル伯爵令嬢は、謙虚だね。失礼するよ」


 そう言うとセシリオは私の手を取り、ポーションを塗ってくれた。

 スーッとひんやりして、赤みは本当に綺麗に収まっている。


「ありがとうございます」

「どういしたしまして。……苔の採取はできた?」


 セシリオはポーションを片付けながら、私に尋ねる。


「実は……まだです」

「じゃあ、そこの樹洞じゅどうの苔を採ろうか」

「はい」


 思いがけずセシリオが動いてくれたおかげで、バレずに済んだ。シナリオの強制力による嫌がらせを私がしていることを。


 それでいてシナリオ通り、アナの頭に蜘蛛は載った。蜘蛛を最終的にアナの頭から排除したのはセシリオ。本来そこは、ジャレッドがすべきことだった。だがセシリオも選ばれていないが、攻略対象の一人ではある。だからだろうか。問題なく、シナリオは次へ進んでくれた。


 そしてその後は順調に薬草を採取。

 現時点で、採取すべき薬草の三分の二が手に入っていた。

 後は昼食を食べ、午後、残りを手に入れる。それから森を出る算段だった。


 キノコや枯草に擬態している薬草はあったが、食虫植物に擬態している薬草はなし。つまりセシリオの剣が役立つ機会はなかった。これには一安心だ。


 こうしてランチタイムに突入する。


 このランチの時、アナは多めに作ってきたからと、皆に肉料理や魚料理を振る舞ってくれるのだが……。エマは「なんだかこれ、変な味がするわ」とか「美味しくない」と文句をつけ、嫌がらせをするのだ。


 これは行動ではなく、言葉にすることなので、いよいよジャレッドがほくそ笑み、セシリオが私に幻滅するだろう。そう思ったのだけど……。


「あら、本当だわ。この魚、もしかしたら傷んでいるかもしれないわ」


 アナは詫びて魚料理を皆に処分するように言う。さらに。


「やだ、本当にこれ、美味しくない。……ってごめんなさい! 実は私が作ったのだけど、塩と砂糖を入れ間違えたみたい!」


 アナは……こんなドジっ子だった!?というミスをしていたようだ。

 おかげでシナリオ通りのセリフを私は口にしたが、ジャレッドがほくそ笑むことはなく、セシリオが私に幻滅することもない。


 その一方でジャレッドは「アナはドジだな。でもそんなところも可愛いよ」と喜び、自身の持参したランチをアナに分けていた。つまり二人の仲は深まっている。


 そして――。


「なんだかあの二人が婚約しているみたいに見えるね」


 セシリオはそう言うと、アプリコットとイチジクの砂糖漬けを、私に差し出してくれた。


 なんというか、なぐさめてくれているように思える。


「ありがとうございます、エール王太子殿下」


 ランチはアナがドジっ子なおかげで、なんとか乗り越えることができた。


 だが午後は……試練が続く。

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