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18 ワタシキオクソーシツ

いつもより、更に長いです。


「ナツー、大好きだよー!」

「うわぁぁ!」


「ひゃっ、なに?」


隣から何やら叫び声が聞こえた。そちらを見やると、やけに綺麗な金糸が、サラリと揺れていた。


「ナツってどなたですか?」


驚いて椅子から落ちてしまったらしい少年が、顔を上げながら私に聞いた。


「貴方が誰ですか!?めっちゃ美少年なんだけど!」


彼が首をかしげると、ボブくらいのサラサラな髪の毛がハラリと滑り落ちる。その様もとても綺麗で、私は思わず見とれてしまう。


「え、覚えて居ないんですか?」


彼は私に尋ねてきたが、残念な事に主語がないので、質問の意味がわからない。


「えーと、何が?」

私はおずおずと尋ねる。


「あ、そうですね。私の事はご存知ですか?」


彼は海のような、マリンブルーの瞳で私をじっと見つめる。

あら照れちゃうじゃない。


「…ごめん、知らないかな。だって自分の事も分かんないからね!」


「そんな元気に言われても困りますよ。うーん。今、タイラー殿下はロウファンの手続きで出払って居ましてね。私も貴方について殆ど存じ上げませんし。どうしたものですかねぇ。」


彼は眉を寄せて考え込んだ。それを見て、椅子に座る彼の肩を、私はポンポンと慰めるかの様に叩く。


「困ったねー。大変だねー。ドンマイ!」


「いや貴方の事ですからね。」


「へへへ。」


外国人のように鼻が高くて、睫毛もフサフサな彼は、私に呆れたような顔を向けた。今更だけど、男の子か不安になってきた!だって美しすぎるんだもん。睫毛も金色ってヤッバ!


「名前。」


私がぽつんと零すと、彼は「はい?」と聞き返してきた。


「貴方の名前はなんて言うの?」

今度は伝わるようハッキリと尋ねた。


「ルーカス・フォン・アイリです。」


「ルーカス君ね。了解したよ!で、私は?」


ルーカス『君』と言っても何のアクションもないので、男であって居るのだろう。そんな事を思いながら、ナツに聞いた情報と照らし合わせるべく、無知のフリをして彼に尋ねる。


「ソフィア・ダイアール様です。」


「じゃあソフィアとルーカス君は、どんな繋がりなのかな?」


私は美少年なルーカス君と、ソフィアがどんな関係なのか知りたくなった。ナツからルーカス君については聞かされていなかったからね。


「…彼女は友達だと…その、でも…」


「よく分からないけど、取り敢えず知り合いだった訳でしょう?今はそれが分かれば十分かな。だってさ、いきなり親友だったんだって言われても、私困っちゃうもん。今の私には、初めて見た人って映ってるんだからさ。

ね?だから今の私が君のことを知って、君も今のソフィアを知って、それから友達になれば、それで問題ないんじゃないかな?」


彼がハッキリしない言い方をしたので、私は詳細はどうでも良いと伝える。大切なのはお互いに、興味があったか、歩み寄る様な隙間があるのかどうかだったから。


「まぁそうですね。今のソフィア様を見て、まずはそこからですね!」


「うんうん、それで良いんじゃないかな?で、ここはどこかな?ルーカス君!」


見ないように心掛けていたが、ドラマですら見たことのない様な質が良くて立派な天蓋と、広すぎるベット。窓の外に広がる庭園もそれは美しく、寝室と呼ぶにはかなり豪華過ぎた。


ナツから聞いていたので、王宮の一室な事はわかるが、やはり直に見るとキラキラで目が潰れそうになるし、王宮と言っても、使用人部屋並みのものかと勝手に予想していただけに、どうしても落ち着かない。

それをルーカス君イジリや、テンションを無理やり上げて見ないふりをしていたものの、そろそろ限界が見えた私は、つい聞いてしまったのだ。


「王宮ですけど。」

ルーカス君は、サラッと言ってのけた。覚悟はしていても、驚くものは驚くし、私は知らない設定なのだからそれなりの反応は見せなくてはならない。


私はルーカス君の肩をガクガク揺らしながら尋ねた。

あ、これちょっと楽しいかも。


「……オーキューってあれかな!?王様が住むでっかいお城の事かな!?」


「…そう…です。あの、揺ら、すの…やめ、やめなさい!」

ルーカス君に怒られてしまった。反省です。


「えと、私はどうして王宮に居るのかな?」

私は深呼吸をした後、ルーカス君に聞く。


「知りませんよ。…医者が揃ってるからでは?」


「どうして、医者が揃ってるからだと思うの?」


「貴方は常に体がボロボロでしたからね。」

(ボロボロって…何があったんだぁぁ!)


「え、重い病気的な感じかな!?」


「いや分かりませんけど。ここに来た時には、栄養失調と暴力による疲弊、精神的ショック…その他諸々で瀕死状態で衰弱していたとお聞きしましたけど。」


「え、家庭内暴力なの!?親かな?また親のせいかな?だから、王宮で保護される感じになったのかな!?そういうの教会とかの仕事っぽいけどね!」

(てか、教会とかあんのかな?アニメの知識を言っちゃったけどぉ。)


「いえ、平民だった時に捨てられて閉じ込められたとだけは聞きましたので、親が振るった暴力ではないかと。どちらかと言えば孤児院の人…とかなのでしょうね。それを助けたのが殿下ですね。」


「その、デンカって人は誰なの!?」


「殿下は、名前では無く敬称で、王族の方の名前の後ろに付けたりしますね。タイラー殿下はこの国の第3王子で、名前はタイラー・シン・ドラゴフーズ様です。」


私の脳はフリーズした。


「あの、どうされました?」


「ファッ!」

私の喉から漏れたのは意味不明な声。


「ファッって何ですか?本当に、どうしたのです?」

ルーカス君の訝しむ表情が見て取れたけど、気にせずに、私は叫んだ。


「王子様キタァ!!!ヤバすぎでしょ、王子様が颯爽と現れて助けてくれるとか、どこの物語なのかな!?テンプレだけでは飽き足らず、シンデレラストーリーまで手を出したか!ソフィアそれは絶対惚れるって、好きにならない訳がないよぉ。ふふっ、妄想が膨らみますねぇ。王子様を好きになっちゃったって言う禁断の恋…想いを伝えることすら出来ず、相手は助けただけで私にまるで興味ないって言う…」


アニメでよく見る切ない恋。それを想像して、人ごとの様に楽しんでいた。自分に全く、関係のない修羅場を見るのが大好きなのだ。

(やばい楽しい!でも、タイラー殿下に絶対驚くよってナツが言ってた意味はこれだよね!私驚いたもん。)


ルーカス君は固まってしまった。それにハッとした私は、咳払いをしてごまかす。


「ゴホンゴホンっ。成る程、って事はタイラー殿下に感謝を伝えなきゃだよね!」


「いや取り繕えてませんから。」


ダメだったみたいだ。ちぇ。


「だって私も女の子ですし、そういうの好きなんだからさ、仕方ないじゃんかぁ!あ、大切な事聞いてなかった。」


「何ですか?」

ルーカス君は疲れたように声を出した。


「タイラー殿下って、イケメン?」


「ええ、そりゃあもう。絶世の美男子です。」


「まじか。」


「本当です。」


2人とも神妙な顔つきで会話を進める。ルーカス君って意外とノリが良いのかな?


「ええ、タイラー様はそりゃあ8歳という若さなのにもかかわらず、王位継承権もないのがもったいない程に才能溢れるお方でして、毎日………(以下略)」


…まぁ知りたかったんだけど、うん。かなり主観的なタイラー殿下という人となりを知れたかな。30分以上は確実に聞かせられてたからね。


(ノリが良いのでは無く、殿下大好きマンだったって事だね!愛されてるね、タイラー殿下っ!誰か知らないけど。)


「うんうん。話を聞いて余計、そのタイラー殿下に会いたくなっちゃったな!でも王子様だからね、無理だよね、知ってる知ってる。」


「いや?今日あたり会えるのでは?」

ルーカス君は当然のことのように告げた。


「何で!?おかしいでしょ!タイラー殿下が私に惚れてるとかなのかな!?」

私は冗談チックに聞いた。


「そうなの、です、か、ね?分かりません。」

(え、まじでそんな感じなん?脈ありな感じなん?えー、ソフィアナイスじゃん。玉の輿じゃーん!)


テンションぶっ壊れてるソフィアだった。でもそういう事に疎そうなルーカス君の発言だ。安易に鵜呑みにはできないよね!


「でも本当に、何で会えると思うの?」


「あぁそれは。毎日のように顔を見に訪れるからですよ。貴方がいつ起きても、1人で心細くない様にと、私など貴方の顔見知りの人を誰かしら付ける程ですし。瀕死の貴方を王宮までお姫様抱っこで連れて来た時なんかも、片時も離れずに看病してたんですよ。それは心配をして、手を握って声をかけておられました!」


…ソフィア愛されすぎじゃない?今は自分なものだから知らない人に愛されるのは複雑だけど、他人事だと思えば凄く楽しいなこれ。井戸端で恋話に花を咲かせる、おばちゃんの気持ちすごく分かるわぁ!


「まぁまぁルーカス君。モテちゃって悪いねぇ。男の嫉妬は見苦しいぞ。」


私はキッと睨んで羨ましがるルーカス君に追い打ちをかける。凄く楽しいんだよ、このイジリがね。


前世では叶うことのなかった、アニメの中の様な『普通の会話や冗談』が言える。生まれ変わって良かったよぉ!ちょー楽しいです!


「うるさいですよ。羨まし、いなんて言ってませんし。」


「分かってる。分かってるよぉ〜。」


私はルーカス君をぎゅっと抱きしめてなだめる様に声かけをする。だってルーカス君さ、弟みたいで可愛いんだよね。ソフィアの方が絶対年下だと知ってるけど。


「これは何です?」

不機嫌そうな声が腕の中から響く。


「んー、ルーカス君の髪を堪能する会?」


「参加者1人しかいませんよね?」


「ラッキー、独り占め!」


私は何度もツルツルサラサラの髪の毛を撫で回す。うわぁ女子力負けたわぁ。こんなキューティクル見たことないよ!天使の輪ってやつだよ。似合ってますよゴルァ。


グギュルルル

私のお腹の音です。凄くない!?前世合わせて最高記録じゃないかな!?


「なんで笑顔なんですか?普通は、恥ずかしがりません?」


「あ、普通とか分かんないです。というか、お腹減ったって事かな?台所と食材貸して欲しいなぁ。出世払いで返しますから!ね、いいでしょう?なんなら、貴方の分も作りますし!ね?お願いお願い!」


私は顔の前で両手を擦り合わせてお願いした。これでダメだったら…土下座☆しかないよね!異世界とか、当てなんかないし、勝手も分からないからね!


「いやいや、貴族の令嬢なのですから、そこは気にする必要ないのでは?というか既に侍女さんが準備に走ってくれてますし。」


「いやいや、何普通に言っちゃってくれてんの?初耳だわ!貴族…マジですか。…てか侍女さんとか、何処にいたの!?気付かなかったよ、忍者みたい!」


「あれ、言ってませんでした?貴方の名前はソフィア・ダイアール。ダイアール家、大貴族の令嬢です。」


(言ってませんから!知ってたけどさ!凄く忘れてたわ!実感わかないよ、死ぬ前までその日のご飯にも困ってたんだからさ。貴族っていう存在もアニメでしか見た事ないし!)

という心はなんとか飲み込んで、私は笑顔で質問する。


「その話はおかしいんじゃないかな!?紙とペンあったりする?」


「あ、どうぞ。言われると思ってたので用意してあります。」

ルーカス君はこんな謎発言をしてから、私に素早く紙とペンをくれた。


私はそれを受け取り、時間軸を書いていく。


「私って何歳?」

「8歳です。」

そう言われたので一本の横線の上に八本、縦に線を短く引く。そこを指差しながら質問をしてみる。


「はい、私が生まれました!次どこか分かんないけど、平民になっちゃいました?って事かな?」

私は棒線の上をトントン叩いて質問をする。


「そうですね。助けたのが2週間ほど前程度なので、その前には既に平民になっていたのでは?」


「何があったかマジで気になるけど、今は良いです。取り敢えずなんやかんやあって、貴族から平民になっちゃって、その後なんかがあって、教会にも拾って貰えず、孤児院に預けられた訳かな?」


私はさっきからちょこちょこくれるヒントを頼りに時間軸を繋ぎ合わせていく。今更気付いたけど、ここ日本語なんだね。文字も日本語だけど伝わってるし。これで外国語とかだったらマジ大変だったわぁ。


「多分そうですね。」

(ふーん、教会あるんだ。そこでも拾ってもらえないとかどうなってんだろうね!あ、でも行ってみたいかも。落ち着いたら行ってみようかな?)


「ふむふむ、そしてその孤児院でさえも、なんか分からないけど、捨てられちゃって、そこを王子様が助けてくれた、とね。…やっぱ可笑しくないかな!?」


「そうですかね?」

ルーカス君は首を傾げる。ん、頭弱い感じかな!?

敬語キャラはお飾りかな!?


かなり失礼である。


「だって、何でって思わん?王子様だよ!?どんな接点があるねん!そして何でピンチを知ってるねん!あと、捨てられたレベルだったらさ、王宮に連れて来る必要無くない?閉じ込められてたなら、外に出してあばよ!って感じにならん?普通。誰でも彼でも助けてらんないって。それに、何で私記憶なくなってる訳!?2週間前何があったんだ!あれ?ルーカス君と私は会ったことあるっぽいよね?赤ちゃんの時に出会ったとかは無い感じの雰囲気だから、2週間の間に何処かで出会って、そこから、最近記憶喪失になったって事になるけど、やっぱ可笑しいよ!王宮で何があった!」


「あの、私ではなく、タイラー殿下は全てを知っておられるので、その時に聞くのがよろしいかと。」

ルーカス君は申し訳なさそうにこう言った。


「あ、ごめんね。知らない事を責めてる訳じゃなくてね、不思議だなって思っただけだからさ。まぁ極論言えば、知らなくても問題ないしね。過去は過去だし、聞いたからと言って思い出せる訳でもないしさ。」


トントン

扉をノックする音が聞こえた。少し気まずい空気だったので、ナイス!と内心親指を立てていた。


「ご飯の準備が整いました。」

顔を出したのは、茶髪をキッチリと結った侍女さんだった。それを見たルーカス君は、腰を上げて何処かへ行こうとした。


「ルーカス君、何処に行くのかな!?」


「お食事の時間ですので。」


ルーカス君はこう発言をしたけど、私には何が何だか分からない。お食事の時間だからなんだって言うのさ!


「知らない場所で、ぼっち飯しろって事かな!?それは酷いんじゃないかな!?」


「つまり一緒に食べて欲しいと、そう言う事ですか?」

ルーカス君にしては察しが良かった。私はそれにコクコクと激しく頷いた。なんか我儘が許される気がしたのだ。


「はぁ、分かりました。そこの、それでも対応できますか?」

「ええ、問題ありません。」

「じゃあ、そのように手配をお願いします。」

「かしこまりました。」

メイドさんは急な変更にも関わらず、涼しい顔で仕事をこなしていた。とてもかっこいい。


「立てますか?それともベッドで食べます?」

ルーカス君は、紳士らしく手を差し伸べてくれた。私はそれを両手で掴んで上下に振った。


「いや、握手じゃないんですけど。」

「え、そうなの?」


私はボケた後、ちゃんとその手の上に、自分の手を乗せた。お姫様にでもなったような気分だ。


扉の先には、異世界が広がっていた。広すぎるその部屋には、キラキラなシャンデリアや、8人は座れそうな大きな机、ソファーが堂々鎮座していた。私はすぐには声が出なかった。

その素人目で見ても素晴らしすぎるテーブルの上には、たくさんの白い布に、用途が分からないフォークやスプーンが綺麗におかれていた。

(目が、潰れそう。)


「ふわぁお。」

「あ、ソフィア様寝間着のままでしたね。どうします?先に着替えたいですか?」


ルーカス君はがよく分からない気遣いをしてくれた。それに私は笑顔で答える。


「ご飯先が良いかな!」

私はキラキラしたものなど見なかった事にして、ルーカス君のエスコートのもと席へとついた私は、「いただきまーす!」と手を合わせて食べ始める。


「美味しいよ!」

「それは良かったです。」

私はフォークをベーコン付きの目玉焼きにぶっさして食べる。ベーコンの塩気と、トロリとした黄身が白身にかかって凄く美味しい。私はバターロールのパンを手にとって、マーガリンを塗って食べる。


「あれ、これチーズだ!ふむふむ、パンにチーズあいますなぁ。」

私は独り言をする。


「…ねえルーカス君?遠くないかな!?大好きなタイラー殿下の恋敵←なのは分かるけど、その態度は私でも流石に傷ついちゃうんじゃないかな!」


私はフォークを上下にブンブン振って抗議をする。お互い両端の誕生日席にいるのだ。なっがいテーブルの端と端。心の距離ですかこのヤロー!!!


私は泣くまいと、口をキュッと結ぶ。思っていたよりも心細かったようだ。つまり先程の元気はカラ元気であったのだなぁと思われます。


「じゃあどうすれば良かったのですか?」

ルーカス君はキョトンとした顔を浮かべる。


「くぉあ!お隣か、もっと距離の近い真正面がいいです!選べるなら隣がいいかな!」


キョトン顔に、まぁその顔も可愛いって事の両方にムカついた私は思わず奇声を上げてしまう。しかし厚かましく要望をいうのは忘れない辺りが何とも私らしいと感じます。


「ではそうしましょう。」

「やったぁ!ありがとう!大好き!」


私はガタンと立ち上がって、自分のお皿を抱えて、彼の隣にるんるん気分で腰掛ける。


「ふふっ、ルーカス君。」


「何ですか?」

私が声掛けをすると、彼は心底面倒そうな顔をする。


「美味しいね!」


「いつも通りです。」


「そっかぁ。美味しいってね、1人じゃ作れないんだよ?」

私はニコニコで話す。


「料理人さんが作ってますからね。」


「んー、それもあるけど、違くてね。『美味しい』にはいろんな条件が必要でね、それは人によって違うから。私はおとう…コホン、大好きな人と食べるとね、何でも美味しいなって思うんだ。あと、死ぬほどお腹空いた時とか、ふわふわ飛んでっちゃいそうなくらい嬉しい事があった後とか。だから、美味しいは1人だけじゃ無理なの。」


私はホワホワした気持ちで語る。なんか胸があったかくて仕方がなかった。…多分、高級な食材だからと言う理由じゃないと思う。私どうしちゃったんだろ?


「記憶喪失なのに、どうしてわかるんです?」


「そんなの、私に分かるわけないって。」

私はもぐもぐしながら抗議する。誤魔化せただろうか?


「そうですね、それで何が言いたいのです?」


「ルーカス君と食べられたから、美味しいなのかなって思ったんだよね。それで、ルーカス君も美味しいなって思ってくれたら嬉しいなって思ったの。」


訳がわからない顔をしたルーカス君は、綺麗な所作で目玉焼きを口に運んでいる。えー、黄身崩さないの?崩した方が絶対に美味しいのに!


「つまり、一緒に食べてくれてありがとうって言いたかったんだ。だって、美味しいって幸せな証拠だから…貧乏すぎて満足に食べられない人だっているし、病気でドロドロのしか食べれない人も、点滴でしか生きられない人もいる。広い部屋で1人ぼっちで食事をする人も、アレルギーで食べたいものを食べられない人だっている。自炊する時間がなくて、買った物を1人で食べる人もいる。家族と食べられない子供も沢山いるし、戦争で泥みたいな水しか飲めない人だっているんだからさ。美味しいって凄い事なんだよ。そんな凄いことをしてる私って、凄い恵まれてるなって思ったの。」


彼は目をパチクリさせた。それを見て私はワタワタと慌てた。

「うわぁあ、ごめん急に語るとか何様って思うよね、怖っ!て感じだもんね。えーと、その。」


「ふふっ、そうですね。喧嘩した後のご飯は味がしませんし、1人で食べる時も、心になんか嫌なものが溜まるような気がします。こう、寂しいような……言葉に表すの難しいです。」


眉を寄せた顔しか見たことなかったものだから、彼のふわりとした笑顔に私はかなり驚いた。


「笑った…」

「そりゃ、私だって笑いますよ。」

彼はまた不機嫌そうに眉を寄せる。


「可愛い好き。笑顔とっても素敵。カッコいい。」

彼は顔をカァーと赤く染める。

(あれ!?口に出してた!?)


「あー、ご冗談ですぅ!ほら、ご飯食べるのが良いんじゃないかな!?」


トントン

「はぁーい。どちら様?」

「あ、お嬢様!それは私どもの仕事ですから!」


私がノックの音に反応をして扉を開けると、背後から焦るような声が聞こえた。でもあそこにいるのは照れ臭かったんだもの。


「へ?お嬢様!?やめてよ。ムリムリ。」

それに振り向いて答えた後、ようやくノックした人を向く。居たのは、燕尾服に身を包んだ若い少年。


「ルーカス様はいらっしゃいますでしょうか?レッスンのお時間ですので、お迎えにあがりました。」


「ルーカス君の!ねぇ、ルーカス君、レッスンの時間だって!何をレッスンするの?」

私は寝間着のまま走り、ルーカス君に質問する。それに喉を詰まらせそうになった彼に、私はそっと自分の水を差し出す。彼はそれを流し込んだ。


「プハァ、急に何なのです!?」


「で、何のレッスン?」


「…だ、ダンスです。」

彼は照れながら言った。


「私もやりたい!けど…うん。無理だってことは分かってるから、大丈夫。部屋でいい子ちゃんにしてます。そういうの得意だしね!」

私はガッツポーズを見せる。


「はぁ、やるとしても明日からです。頼んでみますから、今日は大人しく寝てて下さい。ご飯は食べ終わりましたね。」

そう言ってルーカス君は、私をお姫様抱っこした。


「わわわ。見てみて!凄い、ルーカス君イケメンだよ!お姫様抱っこだって!」


私はその腕の中できゃいきゃい騒いで居た。そしてどさくさに紛れて首元に抱きつく。そうする事で、今はもう会うことの叶わない弟の影を辿った。幸せなその一瞬の記憶を。


「で、何で強制送還なの?」


「フラフラしてるって事、ご自分で気付いてないのですか?さっきから危なっかしいです。」


「フラフラって…いつも通りじゃん。なんで?」


身体がだるいのも、フラフラ足がおぼつかないのも、心が不安なのも、驚く程当たり前なものなのだ。そんな事のためにルーカス君が心配そうに眉を寄せる意味がわからなかった。


「なんでもです。ではお休みなさい。」

そう言ってルーカス君は颯爽と出て言った。その後ろ姿が見えなくなった室内で、私はヘニャリと笑う。


「お休みだって…へへへ。」

閲覧、応援、ブクマ、その他ありがとうございます!

間接キスをさり気なくしていたのに気付きましたか?

夏( ソフィア。)は、死語を多用してます。これからも恐らく多用します。

私は意味不明な発言に←をつける癖があって、修正しようとしたものの、なんか違和感で…許してくれると嬉しいです!

「成る程成る程、嫁に貢いでるのでなく、金で愛を買ってるので課金ではないのですね←」

と言う使い方をしてます。

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