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最後の手紙  作者: 白鳥 真一郎
第3章  ~夢が光になって~
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44 ~吉野川~

 小学校を卒業した翌週、アオイが急行列車に乗って鴨島駅にやって来た。


 アオイに会うのは修学旅行のとき以来だ。


 僕はもちろんメガネをかけている。改札を出たところで、明るい蛍光灯に照らされたアオイはじっと僕を見つめて「よく似合っているわ」と微笑みながら言った。アオイはあれからまたすらっと背が高くなっている。淡いピンク色のワンピースに白いカーディガンを着たアオイ。胸には青い石のペンダント。肩まであるまっすぐな黒い髪。アオイはどんどんきれいになっていく。


 次の朝、僕たちは吉野川へ向かって歩き始めた。


 昨夜は父さんも母さんもとても喜んでいて、すき焼きをしてアオイを歓迎してくれたから今日は元気いっぱいだ。たくさんの荷物を抱えてアオイに歩調を合わせる。昇ったばかりの太陽がまぶしい。二十分ほどで吉野川に着き、僕たちは眺めのいい堤防の上にシートを敷いて座った。


 川の流れはセルリアンブルーに、川岸はブリティッシュグリーンに、空はコバルトブルーに、雲はパールホワイトに輝いている。アオイは早速鉛筆をとりだしてスケッチを始めた。少し遅れて僕も鉛筆を握る。


 ちらっとアオイの描いている絵を見ると、その絵には僕の絵とは大きく違うところがあった。


 アオイの絵の中には、絵を描いている僕たちふたりがいた。絵の中の絵。絵の中のふたり。そして絵の中のふたりが描いている絵の中にもふたりがいるに違いなかった。どこまでも続く合わせ鏡のような世界……。


 春の風に、生えてきたばかりの草がなびいている。


「アオイ、僕たち大人になったらアトリエを持ちたいね」


 僕は鉛筆を動かす手を止めてアオイに話しかけた。


「私も同じことを思っていたの。アトリエに招き合ってね、私がユウキを描いて、ユウキが私を描くの。そしてね、大きなテーブルで一緒に食事をするの。なんだか照れるね」


 そう言った後、まぶしそうに目を細めながらアオイは僕の方を見た。


「僕も照れるけど、それはとってもいいね。そしてね、それぞれがそれぞれのお気に入りの静物を描いたりもするんだ。僕とアオイはそれぞれ別の世界を持っているから。一緒に暮らしてもね」


「ユウキと一緒に暮らすって?」


 アオイはびっくりしたように鉛筆を置いた。



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