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幼馴染みの彼女が僕を殺しにやってくる!  作者: ぱんだ祭り
「本物」のツインテール編wwwwwwwwwwwwww
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90/204

第90話「本物」のツインテールの過去wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww

 それから「本物」達と沙織の部屋でスレイヤーズをみんなで見たんだけど、ここの所いつも以上にあってはならないレベルの「本物」の事件が続いて体だけではなく精神的にも追い込まれていたせいか、僕はいつの間にか眠り込んでしまっていた。

 いやあ…しかし…自分の家がなくなると生気を吸い取られる感じがするよな…


 ふと目が覚めるとまだ夜明け前で、沙織と若菜ちゃんもスレイヤーズを見たまま眠ってしまったようだ。 

 それぞれその場で眠り込んでいたんだけど、天使はじっと60型テレビのディスプレイを見ていた。

 恐らくみんなが寝た後も天使は自分でDVDを入れ替えながら1人で見続けていたのだろう。

 

 ちょっと心配になって僕は眠い目をこすりながら天使の横に行った。


「おもしろかった?天使は眠くないの?」


 そう声をかけたんだけど、天使はいつも通りの無表情で振り向いた。

 全く感情の読み取れないまん丸い目。

 何も考えていないような、何も感じていないような。

 でも天使はちょっと予想外なことを口にした。


「楽しい。大勢の中にいるのは辛い。でも差身君達だと楽しい」


 天使が小さな声で「楽しい」と言った。

 それは僕にとって意外であった。

 もちろん嫌ならこんなところにまで来ないとは思うんだけど、なんというかその天使はそういうことを何も感じていないんじゃないかって思っていた。

 なんとなく流れでここまでついて来たのではなく、天使は天使なりにみんなといることを望んでここまで来たのだ。

 僕達といると楽しいからここにいる…それは聞いて僕は「良かった」って思った。

 天使が喜んでいるならそれで良い。


「ああ…そうか…」


 だけど僕にはそうつぶやくしかできなかった。

 うまく言葉にはできないんだけど、天使の気持ちが見えてきたような気がした。

 いつも1人でいて何も感じていなさそうな天使でも、仲の良い仲間と一緒にいるのは楽しいのだ。

 天使は1人でいるのに慣れてしまっているのかもしれないけれど、だからといって誰かと一緒にいて楽しいと感じる気持ちが消えたわけではないのだ。

 それとこれとは別問題なのである。


「天使は普段は何してるの?好きな物とかあるの?」


 僕がなるべく優しく天使に尋ねると、天使はじっと僕を見たまま小さな声で喋り出した。


「ずっとゲームしてる。ネットもできるようになった」


「プレステ4とかかな?PCでネットゲームやってるの?」


「スーパーファミコン。壊れたからプレステ2に変わった」


 あれ?そんなゲーム機昔あったような気がするけど…

 ずいぶん古いゲーム機で遊んでるんだな…

 なんで今時どこにも売ってないようなやつで遊んでるんだ???


「みんな私と話をしてくれなかった。お母さんは死んだ。お父さんはあんまり帰ってこない」


 天使がめずらしく堰を切ったように話を続けていた。

 

 お母さんは死んでお父さんは帰ってこないって、天使はいつも1人でいるのか?

 僕は暗い部屋で毎日1人でゲームをしている天使を思い浮かべた。


「私はわからなかった。みんなが私と話してくれないのが。だけど私は1人の方が良かった。1人で静かにしてたかった」


 僕は天使の途切れ途切れになる言葉を良く聞き取りながら、天使は何を言おうとしているのか考えていた。


 みんなって誰を指すんだろうな…

 両親…親戚…先生…同年代の友達…近所の人…

 ひしひしと天使の孤独が伝わってくる。

 最初から今まで、ずっと天使は孤独だったのだろう。

 一体天使はどんな人生を送ってきたんだ?


「スーパーファミコンは好き。ガルムとそこで出会った」


「そこで?」


「うん。ガルムとはずっと友達。私、ゲームは苦手。だから最初良くわからなかった…」


 天使の言うところの魔界とは、ゲームの世界のことなのか?

 もしかすると、ガルムは天使がやっていた古いゲームに出てくるキャラクターで、それを天使の力でゲームの中から僕達の世界に具現化したのだろうか?

 まあ魔獣が出てくるゲームなんだから魔界のような所が舞台なんだろうね。

 

 誰とも関係性を持てない天使にとって、唯一繋がりがあったのがゲームの中のキャラクターだったのだろう。

 そのゲームの中こそが、天使にとっての全てであり天使の世界なのだ。 

 それに僕は気がいたんだけど、めっちゃそれが恐ろしかった。

 沙織は見た目が別格でキレイだから色んな人達が集まってくるけれど、天使は完全な孤独、あってはならないレベルで周りに人がいなかったのだ。

 天使が無表情でしゃべらないから周りに人がいないのか、周りに人がいないから無表情でしゃべらないのか、僕にはそれが分からないけれど、天使が壮絶な暗闇の中で生きてきたのはわかる。


「真・女神転生(メガテン)Ⅱ。帰ったら片付けをしてご飯を食べてやるの。ガルムと一緒にぐるぐるしてた。先に進めないからぐるぐるしてた。ガルムは1番の仲魔(なかま)」


「先に進めるようになったの?」


「進めた。でも壊れた。スーパーファミコン。だからまだ終わらない…ねえ差身君…」


「差身君はどうして話しかけてくれたの?」


 ああ…ペットボトルの時のことかな?

 そんな…あれくらい当たり前だよ…


「それは天使が困ってたからだよ」


「差身君は私と話してくれた。私のことは嫌じゃないの?」


「そんなことないよ」


「良かった…差身君のことが好き。私に話しかけてくれた」


 天使は小さくつぶやくと、僕の腕を引っ張り、そして抱きつくようにつかまった。

 天使の体温が僕の腕に伝わってくる。

 確かにそれは生きた人間の体温であった。


「私…差身君とずっと一緒にいたい…」


 多分、天使の心の中の世界は、沙織以上に誰もいないのだ。

 沙織の心の世界には「ママ、パパ」そして「僕」の3人は間違いなくいる。

 逆にいえばそれ以外とは関わりを持つことが苦手なのだ。

 しかし天使の心の中はどうだろうか。

 話をしている限り、自分の両親よりもガルムの方が大事に思っているようであった。

 天使の誰もいなくって暗い心の世界。

 その誰もいない天使の世界に僕は突然現れたのだ。

 ペットボトルの蓋を開けてあげるという些細なことで。

 些細な事ではあるが、天使にとっては重大な事件だったのだ。

 僕はペットボトルの蓋を開けただけではなく、天使の真っ暗で小さく閉ざされた誰もいない世界の扉を開いたのだ… 


「私、やりたいことができた…」


 その時、天使の目が瞬いた。

 僅かな光の加減だったと思う。

 でも全くの無表情である天使から、少し感情が揺れ動いたのを感じた一瞬であった。


「差身君とゲームの続きをしたい…」


 僕の腕に抱きついたまま天使はじっと僕を見ていた。

 

 僕とゲームの続きをしたいと言った天使。

 それは小さな声だったんだけど、天使の中でその想いは爆発的に広がっていった。

 その純粋で強い想いの行く先を、僕もすぐに見ることになるのであった。 

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