第36話「本物」の城主と神wwwwwwwwwwwwwwwwwwww
その時だった。
佐藤さんは何かに気がついたように顔を上げ、僕達の後ろを見つめた。
それは絶望的な状況ではあるんだけど、一筋の希望の光を見つけたようであった。
「あ!小机様だ!」
佐藤さんはめっちゃ目を輝かせながらそう声を上げた。
僕と沙織が後ろを振り向くと、数名の従者を引き連れた身なりの良い武士が僕達に向かって歩いてきた。
あの武士の人が小机城城主の小机弾正さんなのかな?
めっちゃ雰囲気あって、めっちゃ強そうで、めっちゃイケメンで、めっちゃ誠実そうな人だな。
この人、見るからにして男気が強くって真面目そうだ。
まあこれだけの武士達をまとめ上げてるんだから、腕も覚えがあるんだろうし人格者でみんなが集まってくるんだろうね。
小机さんが近づいてくるだけで「本物」の威圧感で押し倒されそうになる。
でも僕達の目の前まで来た時、小机さんは沙織の前に跪き、沙織に手を合わせ頭を下げた。
後ろにいた従者も一瞬どうしようか迷ったみたいなんだけど小机さんの後ろで跪いた。
ああ…なんかおかしな方向に話が転がってきたな…
何となく小机さんと沙織が対等な立場で何かを話し合う気がしてたんだけど、どうやら「神」である沙織の方が立場が上なようですね…
考えてみたらこの城で一番偉い人が、わざわざこうして出向いてくるなんてめったにないことなんじゃないのかな?
でもね、小机さん!!!あなたのような立派な方が、沙織なんかに頭を下げなくて良いと思うんですよ!!!!
今あなたの目の前にいるのはただの「本物」なんですよ!!!!
ろくに考えずにニャンパスの穴へ佐藤さんを放り込み、ついたこの世界に現代の武器を運びこんで歴史をメチャクチャにした「本物」なんですよ!!!!
何で沙織も偉そうに小机さんを見下ろして、余裕そうに病んだ笑みを浮かべてるの!!!
なに本気で神になりきっちゃってるの?!
おまえ、ただ好き放題に戦争してるだけで、やりたいように暴れてるだけじゃん!!!
なんで一番事態をメチャクチャにしている「本物」にみんながひれ伏さなきゃならないんだあああああああああああああああああああああああああああっ!!!!!!
「小机様!!!こんな女に頭を下げる必要はないんですよ!!!ほら!沙織も偉そうにしてるなっ!!!!」
佐藤さんが小机さんに駆け寄って必死に小机さんを立ち上がらせようとするんだけど、小机さんはそれを叱るような目で佐藤さんを見た。
「若菜よ、跪きなさい。我々を救ってくれた女神様になんたる無礼を。女神様、若菜はまだ子供。どうか許して頂きたい…」
小机さんは落ち着いた大人の声で佐藤さんを諭すと、佐藤さんは急に素直になってすまなそうに立ち尽くした。
「ああwwwwwwwwwwwwいいんだwwwwwwwwwwwwwwwww若菜ちゃんは我々神の世界からやってきた妹の1人wwwwwwwwwwwwwwwwww好きにさせておいて構わないwwwwwwwwwwwwwwwwwww小机さんも楽にしてくれwwwwwwwwwwwwwwwwwww私のことは沙織と呼べば良いwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」
沙織は見た目がめっちゃキレイなのと、この時代には絶対ない戦争服であるふわふわスカートに物を言わせ、一見神々しいオーラをきらめかせながらそう言った。
沙織はまさに「本物」の神になった気分なんだろう。
いかにも沙織が妄想してそうなよくアニメで出てくる「心の広い女神」を演じてるんだろうな。
「申し訳ございません沙織様…」
小机さんが跪いたまま再び頭を下げると、ゆっくりと立ち上がりそのまま一礼した。
それを見ていた佐藤さんはめっちゃ納得いかなそうな顔をして「ぐぬぬぬぬぬ」としていた。
ああ、言っちゃたよ…小机さん、沙織様って言っちゃったよ…
これも「自然(略)魔法」があるからこそなんだろうね。
佐藤さんは勝ち気な感じではあるんだけど、オシャレで身なりに気を使ってるしいかにもモテそうだ。
でもやはり普通の人達にとっては沙織は別格で、この世のものとは思えない美しさなんだよな。
小机さんもまさか沙織と佐藤さんが同い年だとは気がついてないんだろうな…
沙織はじっと小机さんの顔を見始めた。
多分、小机さんが嘘をついていないかどうか確認しているのだろう。
「顔を上げてくれwwwwwwwwwwww私は神の国からずっとお前達を見ていたwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww私はお前に聞きたいことがあるのだwwwwwwwwwwwwwwwww」
沙織と小机さんは真っ直ぐに見つめ合い、熱い視線をお互いに逸らそうとしなかった。
「なぜ豊嶋氏を助けたんだ?wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwこうなってしまうことは賢明なお前には分かっていたはずだwwwwwwwwwwwwwwwwwww太田道灌から追われてきた豊嶋氏をこの城に入れて庇護せず相手にしなければお前達はこんなことにはならなかったはずだが?wwwwwwwwwwwwwwwwwww私はそれについてずっと考えているのだwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」
沙織はそう言うと黙って小机さんの返事を待った。
あー、小机さんと太田道灌が何かの理由で戦を始めたんじゃなくて、豊嶋氏と太田道灌が戦を始めたのね。
そして恐らく太田道灌に負けて敗走していた豊島氏が小机城に逃げ込んだと。
それを追って太田道灌が小机城を攻めてるんだから、小机さんは豊嶋氏を城に入れないでおけば安全だったんじゃん。
むしろ太田道灌と一緒に豊嶋氏を攻めていたら、逆に余裕の勝ち戦だったんじゃないのかなあ?
沙織は歴史上、小机城阯の祭りで言い伝えられている通り、この戦で小机城は攻め落とされると言っていた。
確かにわざわざ負けるために戦うような戦をする意味が分からない。
小机さんは何で戦っているんだろう…
「私は命からがら逃げ延び、助けを求めるものを見捨てる生き方はしてこなかった。今回も同じことなのです。我々は全員死ぬかもしれない。しかしだからといって弱いものを見捨てるわけにはいかない。死んでもこの考えは変わることがないのです」
小机さんは死と引き換えにしても自分の強い考えを曲げないのだろう。
この人、良い人過ぎて早く死んじゃうタイプだなあ…
でもそんな僕からしたら恐ろしい考えを、小机さんは落ち着いてさも当たり前のように淡々と語った。
僕だったら死にたくないから、そっちを優先で考えちゃうからね…
沙織もめずらしく驚いたような表情になり無言で何度も頷いた。
多分小机さんが死んでも弱者の味方をするといった所に共鳴したんだろうな。
「へえ…wwwwwwwwwwおまえwwwww良いこと言うじゃんwwwwwwwwwwwwwww」
沙織は上から目線ではあるんだけど本当に心から関心したようだった。
沙織は小机さんの肩をぽんっと叩くと、グイッと小机さんの眼前まで歩み寄った。
「手伝ってやるよwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwリア充太田道灌を一緒に退治してやるよwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」
沙織は兇悪な病んだ笑みを浮かべると、僕の方を見てニヤリとした。
小机さんと沙織の間に、目には見えない炎のような熱い闘志が走る。
未来が変わるくらいの熱い熱い「本物」の戦争は、今まさに燃え上がり始まろうとしていた。




