第31話「本物」のRPG(リア充 パーフェクト 殺し)wwwwwwwwwwwwwwwww
沙織は僕にRPGを撃たせようとするんだけど、僕は何もできずに立ち尽くしていた。
どう見ても小型ミサイルみたいのが筒状のRPGの先から出てるんだけど、RPGを見たことがなかった僕でもこれを撃ったら着弾した先でめっちゃ爆発したくさんの人が死ぬのが分かる。
沙織は何も気にせず武士達を殺していったけど、僕にはそんなことできない。
自分も死にたくないし、人を殺すことなんて怖くてできない。
絶対やってはいけないし絶対やりたくない。
命を消し去るなんてことを1人の人間がやってはいけないのだ。
沙織はどうにも動かない僕を見て溜息をつくと、僕の正面に回りめずらしく真剣な病んだ目で僕を見た。
「差身wwwwwwww詳しいことは後で説明するがリア充太田道灌は川の向こうで待ってるんだwwwwwwwwwww」
沙織がそう言うんだけど、僕には抽象的すぎて沙織が何を言おうとしているのかわからなかった。
「何を待ってるんだ?」
「あいつらは城攻めをしてるんだwwwwwwwwwwwwwwwwwwww城攻めは慌てることなく敵の補給を断ちながら少しずつ攻め込みやすいように工作していくwwwwwwwwwwwwwwwwwww相手が完全に弱った所を一気に攻めこむんだwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwだから待てば待つほど勝つ可能性が高まるwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」
あれ?ということは僕達を助けてくれている武士達が弱って見えたのも、太田道灌の城攻めで弱り切っているからなのかな?
補給を断つということは城の中の食料がなくなったら何も食べれなくなるし、徐々に攻め込んでくる太田道灌軍に怯えながら八方塞がりの状態で毎日精神的にも追い込まれていくのか…
僕達の生命線であるニャンパスの穴が隠されたお堂を命がけで守ってくれている武士達のことを思い出した。
ほんの少しだけ一緒に戦ってきただけの関係なんだけど、あの人達が無残に殺されていくのも僕には耐えられなかった。
今会ったばかりとはいえ、協力し合った仲間を見殺しにしたくはない。
「お堂を守ってる武士達の城を攻めてるのか?」
「ああそうだwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwお堂の裏の方に歩いて行けばすぐに城はあると思うぞwwwwwwwwwwwwwwwwでもこんなに太田道灌の兵が川を渡ってきているとなると間もなく城攻めが決行されるのだろうwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww明日にも太田道灌達にみんな殺される可能性が高いwwwwwwwwwwwwwwwwwww」
「そうなのか…」
「差身wwwww良く考えろwwwwwwwwwwwこのままRPGを撃たなければお堂を守ってる武士達が城ごと滅びるwwwwwwwwwwwwwwwwwあいつら私が神だと思って死んでもお堂を守り切るつもりだぞwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwどっちにしたってたくさん人が死ぬんだwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」
「いや、だけど…」
「差身wwwwwwwwwwwどうせなら弱い方少ない方を助けてやろうwwwwwwwww私はマイノリティの味方wwwwwwそういう奴らのために戦うんだwwwwwwwwwwwwwwwwwww太田道灌なんてリア充の塊だぞ?wwwwwwwwwwwwwwwww」
ああ、そうか…沙織はいつも孤独な存在で、それで卑屈な考えをしてしまうところがあるんだけど、少数の人達が追い込まれているのを見ると助けてあげたくなっちゃうんだろうな。
何というか、それは沙織の良いところで、沙織の優しさなんだよな。
沙織は自分が常に少数派であるから、そういう人達の気持ちは手に取るように分かるのだろう。
普通の人は力がある者の下に集まり、自分がうまく生きていく方法を考える。
でも沙織はその真逆で、弱い方に手を差し伸べるのだ。
多分自分と重ね合わせて、見過ごすことができないのだろう。
そうなんだよなあ…弱った今にも死にそうな捨て猫とか見つけると、沙織は自分の「本物」の豪邸に連れて帰って、めっちゃご飯とか食わせたりするんだよな…
「沙織、太田道灌って誰なんだ?有名な人なのか?」
僕がさっきから気になっていたことを聞くと、沙織は一瞬真顔になって驚いたように病んだ笑みを浮かべ始めた。
「差身wwwwwwww太田道灌を知らないのか?wwwwwwwwwww江戸城作ったやつだぞwwwwwwwwwww子供の時から天才と言われた戦争だけではなく歌などにも長けたリア充の中のリア充だwwwwwwwwwwwwwwwwww」
ああ、そうなんだ…何となく聞いたこともあるから有名な武将なのかな???
沙織は色んな本を読みまくっているし、勉強もめっちゃできるから色んなことを知ってるな。
それにしてもさっきから太田道灌のことを「リア充」だと沙織は言うんだけど、もう憎しみが燃え上がるようにそう言っている。
「沙織、江戸城なんてどこにあるんだ??見たことないんだけど」
「差身はなんにも知らないんだなwwwwwwwwwwwwwwwwwww今の皇居に江戸城が建ってたんだwwwwwwwwwww」
沙織は世の中の常道というか、基本社会を憎んでるから、有名な人とか成功してる人をディスることが多い。
皇居は何度か見たことあるけど、あの広い堀に囲まれた所に城が立っていたのなら、それは壮大な城だったのだろう。
しかも現在の東京のどまんなかにあるんだよな。
そんな城を作ったのなら、太田道灌という人はめっちゃ成功者で、沙織が目の敵にしそうな人物だ。
「差身wwwwwwwwwwwwRPGの語源を教えてやるよwwwwwwwwwwwwwwwww」
急に沙織が話を変えて僕の背中にくっついてきた。
そして僕の耳元に口を近づけてきた。
「R『リア充』P『パーフェクト』G『殺し』だwwwwwwwwwwwwwwwwww」
何故か沙織はめっちゃ重要な秘密を伝えるように小声でそう言うと、僕の首筋にコンバットナイフを突きつけ僕の背中で震え始めた。
「これは非リアである我々と戦国時代を代表するリア充太田道灌との戦争wwwwwwwwwwwwwwww我々は生きるために殺さなければならない!!!!wwwwwwwwwwwwwwwwwwww自分達の主張を捻じ曲げ頭を下げるだけなら支配されてしまう!!!!wwwwwwwwwwwwwwwww決してリア充に屈してはならないんだ!!!!!!!!wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」
沙織は気持ちが高まったのか、震えながらそう叫ぶとコンバットナイフを引っ込めて僕の前に立った。
コンバットナイフを握りしめた沙織の右手は、怒りなのか単に興奮しているのかガタガタとあからさまに震えていた。