第19話「本物」のニャンパスの穴wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
大暴走はそんなに長く続かなくって、ついた先は僕達の学校だった。
正門は開かれた状態で、当然のことのように僕達が乗る車は学校の敷地内に入り込んでいった。
そしてこれまた当たり前のように校舎に車を横付けすると、何故か鍵が開いている校舎のドアを開き、普通に中に入り込んでいった。
ドアは何故かコブが急いで車から降りて、沙織が手を汚さなくて済むように開けてくれた…
「差身wwwwwwwwww土足で入っちゃ駄目じゃないかwwwwwwwwwwwwwww」
何となくそのまま校舎に入ろうとした僕を沙織が制し、どこからかスリッパを持ってきてくれた。
真っ暗で蒸し暑い深夜の校舎。
僕はめっちゃ機嫌が良さそうな沙織に手を引かれどこかに向かって行った。
そして運転が得意なコブは周囲を警戒しながら、僕達を守るように一緒についてきた。
ああ…なんかボディガードみたいですね…
このコブって人、めっちゃ体も大きいしかなり強そう…
沙織に見せてもらったヨルムンガンドとかに出てくる武器商人を守ってる人達みたいだよ!!!!!
もう目の前で次々と起きている狂った「本物」に事件。
すでに心の中で突っ込むことすら僕は放棄していた。
駄目だ…やり過ごそう…
早く帰ってすべて忘れるんだ…
こんなこと絶対にあってはいけないんだ…
「差身wwwwwwwwwwwwwwwww何でそんなにビクついてるんだ?wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwこのあたりはセンサーなんかついてないぞwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww念のため学校中の防犯センサーは昼間のうちに私がニャンパスしてショートさせておいたから作動するはずはないがなwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww警備員が来たら買収すればいいwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww最悪ニャンパスして闇から闇へwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」
沙織は僕から手を放すと、親に買ってもらったであろう肩からかけている高級そうなバックを開け、中から分厚い札束を出しそれを手で叩きながら病んだ笑みを浮かべた。
僕は少し間が開いてしまったが、なんとか無言で沙織に1つ頷いた。
あー、それ10万20万なんていう端金じゃないよね…
もうわからないよ…何でそんな大金を気軽にバックに入れてるのとか、警備員を買収とか、後ろにいるコブがどうして僕達を守ってるのとか、そもそもどうして深夜の学校に入り込んでるのとか、センサーをショートさせるって何?とか他にも数えきれないくらい言いたいことがあるんだけど…
沙織、お前は僕を笑わせようと思っているのか?…これは壮大なコントなのか?…
コントにしてはずいぶん笑えない部分が多いんだけど、これって全部犯罪なんじゃないのかな?
そもそもお前が僕の部屋に勝手に侵入しているあたりから15分位しか経ってないんだけど、既に数かぞえ切れない程の犯罪が繰り広げられてる気がするよ!!!!
あああっ!!どうしていつもいつもこういうことになっちゃうのかな!!!
どうにもならないのだ…
誰にも「本物」を止められるわけがないのだ…
今回も黙って行末を見守るしかなさそうだな…
沙織に引っ張られてついた先は用務員室だった。
すぐにコブが僕達の前に回り込みドアを開けてくれた。
そしてコブは用務員室の奥にある畳が敷かれた仮眠も取れるスペースに上がると、スマホでどこかに手短に連絡した。
すると敷かれた畳が2畳分ほど「ウィーーーーン」という機械音ともに浮き上がり、畳があった場所には地下へ続く階段が現れた。
「コブwwwwwwwwコップンカーwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」
沙織はコブによくやったとねぎらうように片手を上げると、コブは両手を祈るように合わせて沙織に頭を下げた。
「差身には完成したら見せようと思ったのだがwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwまだ散らかっているが入ってくれwwwwwwwwwwwwwwwwwww」
こんなもの降りれるわけないだろ…
僕は身動きできず病んだ笑みを浮かべている沙織を見た。
「沙織…これはなんだ…」
「ああwwwwww階段だwwwwwwwwwwwwwwww完成したら私のスマホで畳に見せかけた扉が開閉できるようパパにしてもらうwwwwwwwwwwwwwwwwwww差身のスマホからもできるようにするか?wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」
「いや…大丈夫…できなくていいよ…」
「そうかwwwwwwwwwwじゃあ入りたい時は私を呼んでくれwwwwwwwwwwwwwwwwwww」
沙織は完全に思考が停止し何をどうして良いのか分からなくなってる僕の手を握り、そのへんに散歩でも行くような感じで「本物」の地下への階段を降り始めた。
そうだな…これは階段だね…
きっとお前が作ったんだろうというのも分かるよ…
あとパパににできるようにしてもらうって何?…
沙織1人じゃこんな狂ったことできるわけないよね…
お前のパパがほぼ間違いなく絡んでるんだよね!!!!
階段を降りるとそこは地下室だった。
まだ工事中で校舎内とは違って工事用の照明で明るく照らされていた。
教室の半分くらいの広さだろうか?
そこには数名のコブと同じどうみても日本人ではない真っ当なお仕事をされていないような方々が地下室を作る作業をしていた。
沙織は地下室に降りると満足そうに「本物」の作業員達の働きぶりを見渡した。
「おーいwwwwwwwみんな頑張ってるかwwwwwwwwwwwwwwwww」
沙織がそう声をかけるとみんな沙織に拝むように手を合わせて頭を下げた。
「おい!沙織!これはなんだ!」
「ああwwwwwwwwwwwwwwwwwww秘密基地を作ってるんだwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwゲームもできるしwifiも飛ばしたwwwwwwwwwwwwwwwwエアコンの工事に手間取ってるんだwwwwwwwwwwwwwwwwwwww冷蔵庫もあるぞwwwwwwwwwwwwwwwここに篭って1週間は戦えるwwwwwwwwwwwwwwwwwwww武器庫としても有能な秘密基地wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」
「この東南アジア系の外人の人達は誰なの?!」
「この人達はwwwwwwwwwwwwwwwパパの会社の人だwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww良く手伝ってくれるwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」
「パパの会社って、沙織!こんなことが許されると思ってるのか?!」
「ああwwwwwwwwwwwwwww大丈夫だwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwパパも良いって言ってたwwwwwwwwwwwwwwこの学校の先生達もパパには逆らえないみたいだぞwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwだから問題ないんだwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwそれより差身wwwwwwwwwwwこっちに来てくれwwwwwwwwwwwwww」
沙織は楽しそうに僕の手を引き小走りで奥の壁の方に駆け寄った。
そこは一部分だけまだ土がむき出しになっていて、何故か大きなベニヤ板が立てかけてあったんだけど、沙織が近くにいる「本物」の作業員に何か話しかけるとその作業員の人がベニヤ板をどけてくれた。
すると、そのベニヤ板をどけたところに穴が空いていた。
人間が余裕を持って潜り抜けられるくらいの大きさで、だけどその穴は洞窟のように真っ暗ではなくって、虹色というか極彩色的なものがゆっくりと渦を巻いていて見たこともない物質?で埋められていた。
それは間違いなくこの世のものではなくって、ちゃんと目の前に実在するのに、その存在を否定したくなるほど恐ろしく、意味不明な全く理解できないものであった。
なんだよこれ…
早く警察とかに通報した方が良いんじゃないの…
「差身wwwwwwwwwwwwwwwwwwww凄いだろwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww私はこれをニャンパスの穴と名づけたwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww地下室を作ってたら偶然見つけたんだwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」
沙織は自慢気にそう言うと僕に抱きついてきた。
そして沙織はしばらく僕と「ニャンパスの穴」を見ていた。
沙織の夢いっぱいに膨らんだ胸の鼓動は高鳴り、僕の脳は思考停止していく。
「ニャンパスの穴」は消えることなく、僕達の前で異様な渦を巻き続けていた。