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生きずらさに、名前をつけるなら  作者: あーちゃん


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130/150

第130ページ  終わりを考えるのが、怖かった

真白への「会いたい」を少しだけ受け入れた凛は、誰かを大事に思う自分を責めない練習を始めた。

会いたい気持ちを認めることと、毎回会いに行くことは同じではない。

会わない選択をすることと、気持ちを否定することも同じではない。


今回は、自分の時間へ戻った凛が、作品全体を見直しながら、初めて「この物語の終わり」を意識するページです。

終わらせることは怖い。

でも、終わりを考えることは、ここまで歩いてきた自分を見届けることでもありました。

朝、凛はいつもより少し早く目を覚ました。


 部屋の中はまだ薄暗く、カーテンの隙間から差し込む光は淡かった。


 冬の朝特有の冷たさが、布団の外に静かに溜まっている。


 凛はしばらく、布団の中で天井を見つめていた。


 昨日、真白の店へは行かなかった。


 会いたいと思った。


 でも、行かなかった。


 会いたい気持ちを否定するためではなく、自分の言葉の時間を守るために。


 その選択は、凛にとって小さなことではなかった。


 以前の凛なら、会いたいと思った時点で自分を責めていた。


 重い。


 迷惑。


 頼りすぎ。


 そうやって気持ちを潰すか、逆に不安に耐えきれず会いに行って、帰ってからまた自己嫌悪していたかもしれない。


 でも昨日は違った。


 会いたい気持ちはあった。


 でも、その気持ちを悪者にしなかった。


 そのうえで、家に帰り、自分の作品と向き合った。


 真白からもらった言葉。


『今日は凛ちゃんの言葉の時間だね』


 その一文を思い出すと、凛の胸は少しだけ温かくなった。


 誰かを大事に思いながら、自分の時間も大事にする。


 その両方を持つことは、まだ下手だ。


 けれど昨日、凛は少しだけその練習ができた気がした。


 凛は布団から出て、カーディガンを羽織り、机の前に座った。


 机の上には、青いノートとパソコンがある。


 そして、キャリアセンターでもらった資料。


 未来に置いた予定。


 真白の章を書いた昨日の余韻。


 それらが静かに並んでいる。


 凛は青いノートを開いた。


 昨日の最後のページに、こう書いてある。


『誰かを大事に思う私を、今日は少し嫌わなかった。

会いたい気持ちも、寂しい気持ちも、不安も、出てくるだけなら無罪。

それをどう扱うかを、これから少しずつ選んでいく。

大事な人を大事にしながら、私自身も置き去りにしない。』


 読み返すと、胸の奥に静かな痛みと温かさが同時に広がった。


 大事な人を大事にしながら、私自身も置き去りにしない。


 それは、この作品全体にも通じる言葉のように思えた。


 凛は、ずっと自分を置き去りにしてきた。


 母を困らせないために。


 普通でいるために。


 誰かに嫌われないために。


 重い人間だと思われないために。


 働けない自分を責めないために。


 けれど、この作品を書き始めてから、凛は少しずつ置き去りにしてきた自分を迎えに行っている。


 小さな凛。


 母を許せない凛。


 働くことを怖がる凛。


 真白を大事に思う凛。


 未来を少し信じたい凛。


 その全部を、作品の中で拾い集めている。


 凛はパソコンを開いた。


 作品ファイルを開く。


『生きづらさに、名前をつけるなら』


 そのタイトルを見ると、胸が少し熱くなる。


 最初は、ただ自分の苦しさを整理するための言葉だった。


 でも今は、少し違う。


 生きづらさに名前をつけることは、自分を責めるためではない。


 壊れないため。


 置き去りにしないため。


 自分のまま生きる方法を探すため。


 そして、夜に崩れそうな誰かへ、「私もここにいます」と伝えるため。


 凛は目次を開いた。


 章のタイトルが並ぶ。


『普通になりたかった私へ』


『小さな私へ』


『許すことと、わかることは違う』


『責めるためではなく、救うために書く』


『働くことが怖かった』


『壊れないための地図』


『名前のない大事な人』


『夜に崩れそうなあなたへ』


『怖いけれど、生きてみたい』


 それらを眺めていると、ふと凛の中にひとつの問いが浮かんだ。


 この物語は、どこへ向かって終わるのだろう。


 その瞬間、胸がぎゅっと縮んだ。


 終わり。


 終わりを考えるのが怖かった。


 まだ途中でいたかった。


 途中なら、完成しなくても言い訳ができる。


 途中なら、読まれなくても済む。


 途中なら、最後の答えを出さなくていい。


 でも、作品は少しずつ進んでいる。


 いつか終わりへ向かう。


 その終わりに、凛は何を書けばいいのだろう。


 母を完全に許すこと?


 真白との関係に名前がつくこと?


 就職先が決まること?


 作品が完成して誰かに読まれること?


 それとも、全部がきれいに解決すること?


 そう考えた瞬間、凛は苦しくなった。


 そんな終わりは、書けない。


 母を完全に許せるかなんて、まだわからない。


 真白との関係に名前がつくかもわからない。


 就職先が決まる未来も、まだ見えていない。


 作品が完成するかどうかも、今の凛にはまだ怖い。


 全部がきれいに解決する物語なら、凛には書けない。


 なぜなら、凛の人生はまだ解決していないから。


 凛は青いノートを引き寄せ、ペンを持った。


『終わりを考えるのが怖い。

終わりには答えを書かなければいけない気がする。

母を許しました。

働けるようになりました。

大事な人と結ばれました。

私はもう大丈夫です。

そんな終わりを書かなければいけない気がして、苦しくなる。』


 書いているうちに、胸が痛くなった。


 凛は「もう大丈夫です」という言葉が怖かった。


 この作品で、そこへ行きたくなかった。


 なぜなら、凛はまだ大丈夫ではない日がある。


 これからも、あると思う。


 母の言葉に揺れる日。


 真白への気持ちが怖くなる日。


 就活の画面を開けない日。


 作品を書けない日。


 夜に自分を責めそうになる日。


 そんな日がきっとある。


 それなのに、「もう大丈夫」と書いてしまったら、未来の自分をまた置き去りにする気がした。


 凛は続けて書いた。


『私は、全部が解決する終わりを書きたいわけじゃない。

でも、何も変わらないまま終わるのも違う。

じゃあ、この物語の終わりは何だろう。』


 そこで手が止まった。


 何だろう。


 凛は目を閉じた。


 この物語の始まりを思い出す。


 普通になりたかった凛。


 普通になれない自分を責めていた凛。


 大丈夫じゃないのに、大丈夫と言っていた凛。


 誰にも迷惑をかけないように、自分の気持ちを小さくしていた凛。


 その凛が、ここまで来た。


 母へ少しだけ本音を返した。


 過去の自分へ手紙を書いた。


 灯へ作品を渡した。


 七海へ働くことの章を読んでもらった。


 真白へ会いたい気持ちを小さく届けた。


 キャリアセンターで資料をもらい、未来に小さな予定を置いた。


 大きな解決はない。


 でも、変化はある。


 凛はゆっくりノートへ書いた。


『終わりは、全部が解決する場所じゃなくていい。

私はもう大丈夫です、ではなくていい。

大丈夫じゃない日があっても、戻る場所を知っている。

揺れても、戻ってこられる。

ひとりにしないと約束した自分のところへ、また帰れる。

それが、この物語の終わりなのかもしれない。』


 書いた瞬間、胸の奥が静かに震えた。


 揺れても、戻ってこられる。


 それは、最近何度も出てきた言葉だった。


 母の言葉で揺れた時。


 作品が届いた喜びで焦った時。


 真白に会いたい気持ちで不安になった時。


 凛は揺れた。


 でも、青いノートへ戻った。


 七海へ話した。


 灯へ送った。


 真白へ聞いてもらった。


 自分の言葉へ戻った。


 揺れない人になるのではない。


 揺れても戻れる人になる。


 それは、凛にとってとても大きな変化だった。


 パソコンに向き直り、凛は新しいページを作った。


『終わりについて』


 そう打ってから、少しだけ怖くなる。


 でも、消さなかった。


 凛はゆっくり本文を書き始めた。


『この物語の終わりを考えた時、私は怖くなった。

終わりには、何か大きな答えを書かなければならない気がした。

母を許した私。

働けるようになった私。

大事な人との関係に名前がついた私。

もう大丈夫になった私。

でも、そんな私はまだどこにもいない。』


 凛は深く息を吸い、続けた。


『私はまだ、母の言葉に揺れる。

働くことを考えると怖い。

大事な人からの返信を待つ時間に、不安になることもある。

書けない日もある。

自分を責めそうになる夜もある。

だからこの作品の終わりを、「もう大丈夫になりました」にしたくない。

それは、未来の私をまた置き去りにする気がするから。』


 書きながら、凛の目に涙が滲んだ。


 未来の自分を置き去りにしたくない。


 過去の自分を迎えに行くことばかり考えていたけれど、未来の自分もまた、置き去りにしてはいけない。


 これからも大丈夫じゃない日がある。


 その日の凛に、「もう大丈夫になったはずなのに」と言いたくない。


 この作品は、未来の凛にも優しくありたかった。


 凛は続けて打った。


『この物語の終わりは、完全な回復ではなくていい。

大きな成功でもなくていい。

ただ、私は私を置き去りにしない方法を少し知った。

苦しくなったら、青いノートを開く。

怖くなったら、怖いと書く。

会いたくなったら、その気持ちを責める前に、どう持っていくかを考える。

働くことが怖いなら、壊れないための地図を見る。

母の言葉に揺れたら、今の痛みと昔の痛みを見分ける。

そして、夜に崩れそうな時は、私もここにいます、と書いた自分の言葉へ戻る。』


 打ち終えた時、凛は深く息を吐いた。


 これが、終わりの方向かもしれない。


 解決ではなく、戻る方法。


 完全な強さではなく、揺れても帰る場所。


 それなら、凛にも書ける気がした。


 スマートフォンが震えた。


 灯からだった。


『今日、何書いてる?』


 凛は少し迷ってから、返信した。


『この作品の終わりを考えてる』


 すぐに既読がついた。


『え、重い』


 凛は少し笑った。


『重い』


『終わりって、全部解決しなきゃいけない気がして怖い』


 灯から少し間を置いて返事が来る。


『全部解決しなくてよくない?』


『凛ちゃんの作品、解決しました!って感じじゃなくて、戻る場所を見つける話な気がする』


 凛は画面を見つめた。


 戻る場所を見つける話。


 まさに、今書いていたことだった。


『私もそう思ってた』


『じゃあそれじゃん』


『大丈夫になりました、じゃなくて、大丈夫じゃない時に戻れる場所ができました、みたいな』


 凛の胸が熱くなった。


 灯はいつも、凛が言葉にしようとしているものを、少し違う角度から照らしてくれる。


 凛は青いノートへ書いた。


『大丈夫になりました、ではなく、大丈夫じゃない時に戻れる場所ができました。』


 その言葉は、とても大事だと思った。


 大学へ向かう時間になり、凛はパソコンを保存した。


 作品の終わりは、まだ完全には見えていない。


 でも、方向は少し見えた。


 大丈夫になった凛ではなく、大丈夫じゃない自分を置き去りにしない凛。


 それが、この物語の終わりに立っている姿なのかもしれない。


 大学へ着くと、七海が凛の顔を見てすぐに言った。


「今日、最終回考えてる顔」


 凛は本気で驚いた。


「なんでわかるの」


「なんか遠いところ見てる」


「怖い」


「で、当たり?」


「当たり」


 七海は少し得意げに笑った。


「終わり、見えた?」


「少しだけ」


「どんな?」


 凛は言葉を探した。


「全部解決する終わりじゃなくて」


「うん」


「大丈夫になりました、でもなくて」


「うん」


「大丈夫じゃない時に、戻れる場所ができました、っていう終わり」


 七海は少し黙った。


 そして、静かに言った。


「それ、凛ちゃんの作品っぽい」


 凛は胸が温かくなる。


「そうかな」


「うん。急に全部治るより、ずっと信じられる」


 七海は続ける。


「凛ちゃんが突然、何も怖くありません、就活も恋も母親も全部解決しましたってなったら、逆に嘘っぽい」


「それはそう」


「でも、怖い時に戻る場所があるっていうのは、今の凛ちゃん見てると本当っぽい」


 本当っぽい。


 その言葉に、凛は少し泣きそうになった。


 凛がこの作品で大事にしたいのは、本当だった。


 綺麗な終わりより、本当の終わり。


 完璧な成長より、信じられる変化。


 凛は講義中、ノートの端に書いた。


『この物語に必要なのは、綺麗な終わりではなく、信じられる終わり。

全部解決しない。

でも、何も変わっていないわけでもない。

揺れても戻れる私がいる。』


 昼休み、凛は図書館へ行った。


 パソコンを開き、今朝書いた「終わりについて」の文章をさらに整える。


『私は、綺麗な終わりより、信じられる終わりを書きたい。

全部が解決した私ではなく、これからも揺れる私。

でも、揺れた時に戻る場所を知っている私。

過去の私を迎えに行き、未来の私にも「大丈夫じゃない日があっていい」と言える私。

それが、この物語の最後に立っていてほしい。』


 打ちながら、凛は少しずつ終わりの景色を想像した。


 場所はどこだろう。


 カフェかもしれない。


 部屋かもしれない。


 朝の電車かもしれない。


 青いノートを開いている夜かもしれない。


 終わりの場面で、凛は何をしているのだろう。


 大きな発表をしているわけではない気がする。


 誰かと劇的に抱き合っているわけでもない。


 内定通知を持って泣いている場面でもない。


 もっと静かな場面。


 たとえば、凛が青いノートを開き、未来の自分へ一文を書く。


 あるいは、まだ完成していない作品を保存し、窓の外の朝を見る。


 そこに、少しだけ光がある。


 大丈夫になったわけではない。


 でも、今日も自分を置き去りにしないでいようと思える。


 そんな終わり。


 凛はノートへ書いた。


『最後の場面は、静かな方がいい。

大きな解決ではなく、小さな朝。

まだ怖い。

でも、今日も自分を置き去りにしないでいようと思える朝。』


 その言葉を書いた時、胸の奥に少しだけ光が差した気がした。


 夕方、凛は『cafe 月灯り』へ行った。


 昨日は行かなかった。


 今日は、行きたい気持ちがあった。


 でも昨日とは少し違う。


 会いたいからだけではなく、終わりについて話したかった。


 凛は店の扉を開けた。


 ベルが鳴る。


 真白がカウンターの中から顔を上げる。


「いらっしゃい」


「こんばんは」


「今日は、何か見えた顔」


 凛は小さく笑った。


「少しだけ」


 真白はココアを作りながら聞いた。


「作品?」


「はい。終わりを考えてました」


 真白の手が少し止まる。


「終わり」


「怖かったです」


「うん」


 凛はカウンター席に座り、今日考えたことを話した。


 終わりには全部解決を書かなければいけない気がしたこと。


 でも「もう大丈夫」にはしたくないこと。


 灯に「大丈夫じゃない時に戻れる場所ができました」と言われたこと。


 七海に「信じられる終わり」と言われたこと。


 真白は静かに聞いていた。


 そして、ココアを置きながら言った。


「それ、すごくいい終わり方だと思う」


 凛はカップを見つめた。


「地味じゃないですか」


「地味かもしれない」


 真白は少し笑った。


「でも、凛ちゃんの作品には合ってると思う」


「合ってる」


「うん。派手に解決するより、静かに戻れる場所を持つ方が、凛ちゃんの作品らしい」


 凛は胸が温かくなった。


 作品らしい。


 その言葉が嬉しかった。


 真白は続ける。


「それに、終わりって、全部が終わる場所じゃなくてもいいと思う」


「はい」


「その先も続くってわかる終わり方もある」


 凛は顔を上げた。


「その先も続く」


「うん」


「凛ちゃんの人生も、作品のあとも続くでしょ」


「はい」


「だから、完璧な終止符じゃなくて、次の朝へ続く句読点みたいな終わりでもいいんじゃないかな」


 次の朝へ続く句読点。


 凛はその言葉を、胸の中で何度も繰り返した。


 終わりは、終止符でなくてもいい。


 次の朝へ続く句読点。


 それなら、書けるかもしれない。


 この作品は、凛の人生を完全に終わらせるものではない。


 ひとつの区切り。


 ここまで自分を置き去りにしないで歩いてきた記録。


 そして、明日へ続くための小さな句読点。


 凛は青いノートを開き、真白の言葉を書いた。


『終わりは、次の朝へ続く句読点。』


 書いた瞬間、目の奥が熱くなった。


 夜、家へ帰った凛は、パソコンを開いた。


 今日の最後に、作品へ文章を足す。


『終わりは、すべてに答えを出す場所ではないのかもしれない。

私の人生は、この作品のあとも続いていく。

大丈夫じゃない日もある。

母とまたすれ違う日もある。

働くことが怖くて立ち止まる日もある。

大事な人への気持ちに揺れる日もある。

それでも、そのたびに戻れる場所を少しずつ持っている。

青いノート。

私の言葉。

大事な人たちの声。

そして、もうひとりにしないと約束した自分自身。』


 凛は続けた。


『だから、この物語の終わりは、完全な終止符ではなくていい。

次の朝へ続く句読点でいい。

まだ怖い。

でも、今日も自分を置き去りにしないでいよう。

そう思える静かな朝へ、私はこの物語を連れていきたい。』


 打ち終えた時、凛は泣いていた。


 悲しい涙ではなかった。


 ようやく、終わりを怖がりすぎなくてもいいと思えた涙だった。


 終わりは、凛を閉じ込めるものではない。


 次の朝へ渡すもの。


 ここまでの自分を見届け、これからの自分へ手渡すもの。


 凛は青いノートを開き、今日の最後に書いた。


『終わりを少し考えられた。

全部解決しなくていい。

もう大丈夫にならなくていい。

大丈夫じゃない時に戻れる場所ができた。

この物語の終わりは、次の朝へ続く句読点にしたい。』


 書き終えると、凛はペンを置いた。


 窓の外では、冬の夜が深く静まっている。


 作品はまだ終わらない。


 でも、終わりの方向が少し見えた。


 それだけで、凛は前より少し安心して続きを書ける気がした。


 終わりが怖いのは、そこで全部が決まってしまうと思っていたからだ。


 でも、終わりの先にも朝がある。


 凛はパソコンを保存し、そっと閉じた。


 まだ怖い。


 でも、今日も自分を置き去りにしなかった。


 そのことだけを胸に、凛は静かな夜の中で、ゆっくり息をした。

ここまで読んでくださり、ありがとうございます。


今回は、凛が初めて「この物語の終わり」を意識するページでした。


終わりには、全部解決した姿を書かなければいけない。

母を許し、働けるようになり、大事な人との関係に名前がつき、「もう大丈夫」と言える自分にならなければいけない。


凛はそう思って苦しくなります。


けれど、凛が見つけた終わりは、そういう完璧な解決ではありませんでした。

「大丈夫になりました」ではなく、

「大丈夫じゃない時に戻れる場所ができました」

という終わり。


終わりは、すべてを閉じる終止符ではなく、次の朝へ続く句読点でもいい。

凛はそのことを少しだけ受け入れ始めます。


次のページでは、終わりの方向が見えた凛が、作品全体の流れを整えるために、章ごとの順番をもう一度見直していきます。

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