20話 未来の技術
北大路さんが投資の話に乗ってくれた。
正直、断られると思っていたから、まだどこか現実味がない。
これで......
身分証もろくにない自分でも、まともに資産を増やす道ができた。
(ようやく、スタートラインか……)
胸の奥で、静かに何かが動き出している。
とはいえ、口だけでは意味がない。
動くなら、早い方がいい。
数日後。
あの営業マンに、もう一度来てもらった。
「お久しぶりです」
相変わらず、明るい笑顔。
だが前回とは違う。今回は話を聞くだけじゃない。
「この前のドローンの話、もう少し詳しく聞きたいんだわ」
北大路さんが腕を組みながら言う。
「ありがとうございます。ちょうど今、力を入れている分野でして」
営業マンはタブレットを取り出し、画面をこちらに向けた。
「まずは農業用ドローンです。薬剤散布や生育状況の確認を、効率的に行えます」
映し出された映像では、田んぼの上をドローンが滑るように飛んでいる。
均一に散布されていく様子は、見ていて妙に気持ちがいい。
「人手も時間も、大幅に削減できます」
「へぇ……」
北大路さんが小さく唸る。
「それと、RTKを利用した自動操舵技術」
「RTK?」
「簡単に言うと、誤差数センチレベルで位置を把握できる技術です。これを使えば、トラクターがほぼ自動で真っ直ぐ走るようになります」
「なんだそれ……」
思わず笑う北大路さん。
だが、その目は真剣だ。
「さらに、リモートセンシングを使った解析も進んでいます」
「解析?」
「土壌や作物の状態をデータで把握して、最適な管理を行うんです。経験に頼らない農業ですね」
その言葉に、北大路さんの表情がわずかに変わった。
「経験じゃなくなる......か」
「完全にではありません。ただ、補助としては非常に強力です」
しばらく、沈黙。
北大路さんは画面をじっと見つめていたが、やがてゆっくりと口を開いた。
「面白ぇな」
ぽつりと、そう言った。
「全部がすぐ使えるわけじゃねぇだろうが……
未来って感じがする」
「ありがとうございます」
営業マンは嬉しそうに頷く。
「こうした分野に、会社としてもかなり投資しています」
その一言で、空気が少しだけ変わった。
北大路さんが、ちらりとこちらを見る。
何も言わない。
でも、その視線で十分だった。
(乗る気だな)
確信に変わる。
「今日はありがとうございました」
営業マンが帰ったあと、しばらく無言が続いた。
風の音だけが、やけに大きく聞こえる。
「行くか......」
不意に、北大路さんが言った。
「え?」
「農協の金融窓口だよ」
短く言い切る。
「金、入れに行くんだろ」
一瞬だけ、心臓が強く鳴った。
「はい」
それ以上の言葉はいらなかった。
軽トラに乗り込み、エンジンがかかる。
見慣れた道を走っているはずなのに、景色が少し違って見えた。
(ここからだ)
そう思った。
この選択が、何を引き寄せるのかも知らずに......
投稿が少し遅くなりました。




