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44新規貴族潰し返しと冒険者ギルドのお約束

 村からの唯一の道はライスへ繋がっている街道に繋がっていて、その街道手前に11人の人間の気配があった、なんの危険も感じ無い、戦いにすら成りそうもない感じだ。


「道を塞いでるね」


「一応は話しだけは聞いておいた方が良いのかな?」


「村が危険だから封鎖にしては向いてるなら向きが逆だから聞いても無駄っぽいけど、貴族風に嫌味にやり返したいから馬鹿な講釈言ってくるまではこのまま行こう」


 相手の顔が見えるまで近付くと護衛騎士が盾を構え、貴族服の男が喋り始めた。


「貴様ら村に何の用だったのだ」


「村の流通と街道の管理を任されているアースと言います、あなた方は何ですか?」


「私はライスの男爵だ、怪しい者が建設中の村に行き、盗みを働いていると情報が入ったので捕まえに来た」


「誤報です、村には誰も居ませんでした」


「貴様等が泥棒ではないと、どうやって証明するのだ」


「私は名誉貴族です、侮辱するのですか?、護衛騎士の方が私に触れようとすれば無礼打ちとして斬りますよ」


「ならば貴様より上である男爵の私が手枷を付けてやる、こちらに来い」


(イリーナ、近付いて男爵の腕を斬る、僕が男爵を斬ったら護衛騎士を攻撃してくれ)

(了解、修行した私の力を見せてあげるわ)

(背中に来る感じは無いから危険は無いと思うけど気を付けて、では行くよ)


 男爵に近付くと男爵は手枷を開き「手を出せ」と言うので、手枷を持つ左手首を斬り裂いた。


 驚いた顔で自分の左手を見て男爵は悲鳴をあげた後「ギャー、何をする、貴様ら何をしている、早くこいつを殺せ、早く殺せー」と言いながら後ろに下がり、背中を見せて逃げ出した。


 既にイリーナにより3人が倒されていた、2人で残りを何の問題もなく倒し、息のある者にきっちりとどめを刺して収納した。


「さて、今回はライスの都市区の門からライスに入りますか」


「あの男爵、私達が街道を歩いて行けば兵士を捕まえに寄越すわよ、貴族のネックレスを見える様に出して置いて、命令で捕まえに来た罪の無い兵士を斬りたくないでしょ」

 と言いながらイリーナは自分の物を胸からチェーンを引っ張って出した。


 僕も頷き、貴族の証明であるネックレスを見える様に出した。


 兵士は近くまで来た、ネックレスを確認すると、片膝を突き「門まで護衛致します」と、僕達の前を歩き出した。


 貴族用の門を入ると男爵が「何をしている、早くこいつらを捕まえろ、男爵である私の手を斬り落とし護衛騎士を殺した犯罪者だ、早く捕らえるんだ、抵抗するなら殺せー、何をしている早くしろウスノロめ」と喚いていた。


 男爵以外の門兵は全員が貴族の証明のネックレスが名誉伯爵である事に気付き僕の方の命令を待った。


「オイ男爵、名誉伯爵である僕に難癖を付けて手枷を付けようとした罪で無礼打ちにする、大人しく跪け」


 男爵は見やすいようにしたネックレスを見て驚いた顔になり「何で伯爵なんだ、まだ陞爵してないから騎士爵の筈なのに何で、なんでなんだよー」と残った右手で斬りかかって来た。


 僕は男爵の右手首も斬り、「こいつは伯爵である私に難癖をつけて来ただけでなく、手枷で拘束しようとして来た、貴族のネックレスを見せても爵位の上の私に斬りかかって来たのはみんな見ていたな、

 こいつとだけの問題ではなくなった、男爵家の者を捕らえ事情を確認した後、領主様に報告、相応の処分を領主様からしてもらってくれ」と門兵に伝えた。


(アースくんはズルいんだー、殺すと確認の事情聴取に自分が駆り出されるから殺さずに捕まえてもらい、男爵家の面倒から上手く逃げたわねー)


(領主が僕に丸投げしようとした厄介ごとだ、解決すべき人に戻しただけです)


「ネックレスはしまって総合ギルドに行きましょう」


「なんか帰って来てからイリーナに仕切られっぱなしで、なんかムカつくから先にハゲ村長に会いに行く」


「何でハゲが先なの?」


「タロとジロの奥さんに獣魔契約を拒否されたんだ、ハゲもハンターだから子供の1匹でも契約してもらえば後が楽かと思って」


「ごめん、言ってなかった、私ねハンター試験をクリアしてハンター登録したの、獣魔契約も出来るようになったから雌2匹は私が獣魔契約したわ、名前はサクラとモミジよ、子供はまだ契約に反応しなかったからしてないけど大きく成ったら契約してもいい?」


「駄目、契約したら子供達が自分の群れを作れなくなる、サクラとモミジがまた子供を産んだら可愛がることで我慢しなさい」


「はーい」


 ハンターギルドにハゲへの伝言を頼み、神殿区の宿を取って今日は神殿区の宿に泊まる事にした。


 夕食時に宿にハゲ村長がやって来た。


 子供の事を話すと「俺が獣魔にしてもいいのか?、狼タイプの魔獣だろ、本当に俺でいいのか?」と嬉しそうに言い。


「タロとジロは貴方を気に入ってるから、大切にしてくれれば問題無いそうです」と答えると、泣いていた。



 買い占めの一件は後腐れ無く解決した、村はその後順調に外壁が出来て村としての開発を始めた。


 当初、今ある湖で魚を得るつもりだったが、小さいく浮き草が多い湖の為か魚の養殖をしようと試みたが上手くいかず、原因は湧き水の水温が低く、水位も浅く、浮き草の所為で太陽の力で湖の水温が上がらず上手く育たないそうだ。


 僕が湖での魚の養殖は諦め、湖から小川に流れる水を隣に溜め池を作りそこにも流れるようにして、狭い水路で湖とため池を繋ないで、溜め池の水温だけを上げてそこで魚を育ててみては、と提案。


 小川に流す水を溜め池の温度が下がり過ぎたり上がり過ぎたりしないように調節して溜め池で魚を育ててみたら溜め池での魚の養殖は成功した。


 思わぬ効果もあった、湖で大きくなって水温の問題で川に移動していた魚が、溜め池に行き、放流した魚の餌になり養殖用の魚の餌代が余り要らなくなるという効果まで生まれた。


 湖の浮き草を適度に湖から取り出し、湖の水温を溜め池への水路近くだけを上げるようにして大きめの魚を溜め池に行くようにすると更に上手く魚が移動する様になった。


 浮き草は湖周りに作った畑のいい肥料にもなり、村はかなりの移住希望者が各地から集まり今は住居の建設ラッシュだ。


 タロとジロの子供の中で一番大柄な雄とハゲ村長が無事に契約を結んで今はハンターとして狩りを一緒にして訓練をしている。


 近々人が集まって来たので牧場としても動き出すそうだ。


 僕のライスでのやり残しも、もうそろそろ終わる。



 僕達は旅の準備を始めた。


 僕はイリーナとダンジョンに潜る事も有りそうなので、冒険者登録をする事にした。


「イリーナにとって故郷を出る事になるけどいいの?」


「戻らない旅は初めてだけど此処に戻る理由はもう無いし旅は好きよ、アースと2人で狩りをしながら未知のダンジョンを見つけて攻略したり、未だ見ぬ魔獣を倒したりもこれからは出来るしね」


「そっか、でも危険は御免だな」


「フフフ、アースらしいわね」


 冒険者ギルドに入ると一時的に騒動で人が減ったが、今は他の地域からゴブリン狩りで仕事が尽きず、ウィート解放を狙って周辺国であるライスにも冒険者が集まっていた。


 受付に歩いて行く通路に脇に座っている男が足を僕の前に出し、僕の足を引っ掛けに来た。


(アースくん、テンプレよ、冒険者ギルドへの登録しに来た新人に対してのお約束よ)


(えーと、こいつの足、折ってもいいの?)


(駄目よ、ここは足に躓くか、止まって質問するのが礼儀よ)


 アースは立ち止まり「この足、邪魔なんだけど」名誉貴族のネックレスを出して「斬り殺していい?」と聞いた。


「ちっがーう、お約束の質問が、違ーう、そこは権力使ったらアカーン」


「エッ?、要らない争いは疲れるだけでしょ、使える権力が有るんだから使うに決まってるでしょ、こいつも足を引っ込めたし、こいつも痛い思いしなかったし剣を抜いて殺されずに済んだし、万事オーケーでしょ」


「ウー、アースくんの強さのアピールが冒険者ネットワークに載せる事が出来たのにー」


 受付嬢がカウンターをBANと叩き。

「エッ、この子、戦闘力Aのイリーナさんより強いんですか?」


「私のパートナーで私より強くて賢くて、私に優しい旦那様よ」


 周りが一斉にブーと吹いた、僕も含めて。


「お前何言ってるんだ、まだ付き合い出したばかりなのに、何で旦那様なんだ、そこは大袈裟に言っても彼氏だろ」


「エッ、一蓮托生だもの、旦那様よ!」


 唖然とした空気の中、カウンターへ行き、冒険者登録をした。


「試験は結構です、色々情報は入っていますし、戦闘力に探査力に情報判断力も問題無い様ですから」


(あの足を出した男は観察官か)


(多分そう、足を出してどうするか見たの、喧嘩っ早いか、気が付かないか、回避するかを見たの)


(でっ、僕の対応は合格だったと)


(そうゆう事、戦闘試験無しは珍しいけど)


(アー、僕が名誉伯爵になった訳を知ってるんだ)


(まぁ、あれだけの賞金首を単独で討伐したと分かれば試験官が誰もやらないわ、下手をすれば死ぬもの)


(つまり、試験官に逃げられたんだね、僕、危険人物にされてる?)


(容姿はアースくん普段フードで隠してるから小さい男の子としか知られていないよ、ただ、小さい男の子の名誉伯爵は絡むと危険、とみんなに認識されてる)


(僕はどこの危険物質だ!、まぁ分かったよ、何でネックレスを見せた途端に何人か焦りだしたのかが)


「お待たせ致しました、冒険者カードとタグです、カードに個人認証しますので、血液などの魔力を含んだ体液を垂らして下さい」と言い、タグとカード、そして小さなナイフがカウンターに置かれた。


 カードに口から魔力を乗せた唾を落とした。


 周りが何故か唖然としてこちらを見ている


「アースくん、そこはカッコよくナイフで指を切り血を落とすトコでしょう」


「何で?、切ったら痛いし治るまで指の傷を気にしなくちゃならないのに何でワザワザ切るの、馬鹿なの?」


「ウッ、正論すぎて言い返せない、冒険者のお約束を尽く無視されていく」


「ここでの用事も済んだから村に戻るよ」


「エッ、依頼を受けないの?、冒険者の初依頼の定番、ゴブリン退治の依頼が有るのに受けないの?、絡まれて登録して、依頼ボードの前で依頼を見て取ろうとして横から奪わられるまでがワンセットなのに」


「僕は今、名誉貴族のネックレスが見えるようにしている、やったら無礼打ちだよ、やる馬鹿が居るの?」と周りを見回した。


「あの人達その為にあそこにいるの?、依頼ボードでのテンプレをやろうとして冷や汗流しながら待ち構えてるの、へー、仕事熱心な命知らずの馬鹿って居るんだー、テンプレの雑魚役に焦りながらも命をかけてやるなんて、ある意味尊敬するよ、絡むのがギルドから受けた仕事だとしてもね」


「普通は名誉貴族は冒険者登録をしに来ないから、ランクの高い冒険者が名誉貴族に成ることは有っても、その逆は無いから」


「まっ、お騒がせしました、皆さんお仕事頑張って下さい」


 無事?、冒険者ギルドを後にした。






 アース達が冒険者ギルドを出た後。


「いい加減にしろ、俺達を殺す気か‼︎、新人冒険者のお約束テスト、まさか試験官が試験されると思わんかったわ」


「情報収集を怠り、先にこの状況になってからの対処をこちらに聞かなかった、お前達が悪い」


「イヤイヤ、イヤイヤ、あり得ないでしょ、名誉貴族になるぐらいのハンターが冒険者に新人登録なんて、名誉貴族になる程のハンターがダンジョン攻略するならボス無しのダンジョンをソロで潜れば簡単に攻略でしょ、足を引っ込めたらランクダウン、出したままで引っかかったら無礼打ち、動けなかったから止まってくれなかったら、死んでましたよ‼︎」


「そっ、それにですよ、あの2人魔装でしたよ、しかも全身の、武器だけじゃ無くて、登録しに来た男なんて、アレ上位魔装でしよね、呪いが剣から漏れてましたよ、依頼書を横から奪ったら魔装に呪われますよ、俺のレベルだと、最悪ショック死ですよ、勘弁してくださいよ」


「まあ、悪かったとは思う、まさかマジモンの魔装をあんな歳でしかも、アレ最上位だわ、ギルドマスターに就任して、イキナリ死を覚悟するとは思わなかったわ、ワハハハー」


「ギルマス、私、オーラでちびりました、責任取って私を貰ってください」


「「「「「エッ、マジで」」」」」







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