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『フールの大冒険 ~本の世界に消えた両親を探していたら、聖なるマップに選ばれました~』  作者: ☆☆アダム☆☆


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第50話 剥がされた純白と、八番の刻印

第49話 剥がされた純白と、八番の刻印

休憩を挟み、ついに最終決戦の時が来た。

中央の巨大な闘技場に立つのは、たった五人。

銀槍のセレナ。

暗殺者クロウ。

豪腕のバルガス。

フランアーデルさん。

そして――白い日傘を差した、リザベルさん。

百人いた参加者が、たった五人になった。

それだけでも異様な光景なのに。

「……あの人だけ、やっぱり変」

私は思わず呟いた。

リザベルさんだけ。

まるでこれからお茶会でも始まるみたいに、落ち着いている。

服にも汚れひとつない。

白い日傘。

両腕のアームウォーマー。

そして、あの優しそうな微笑み。

オラクルが隣で煙草を咥え直した。

「よく見とけ、お嬢」

「うん」

「たぶん、あの女が一番ヤバい」

その言葉と同時に。

巨大な鐘が鳴った。

ガァァァァン!!

『最終決戦――開始ィィィッ!!』

瞬間。

五人が動いた。

最初に飛び出したのは、豪腕バルガスだった。

「細けぇ駆け引きは性に合わねぇ!」

鎖で繋がれた巨大鉄球を、頭上で猛烈に振り回す。

ブオン! ブオン!

空気そのものが唸る。

「全員まとめて潰してやる!」

鉄球が放たれた。

ドゴォォォン!!

地面が爆発した。

「うわっ!」

観客席まで揺れる。

砂煙。

その中。

セレナの銀槍が鋭く伸びた。

「大振りすぎるわ!」

槍先が鎖へ絡む。

引く。

バルガスの体勢が崩れた。

そこへ。

「隙あり」

背後。

クロウ。

黒い刃。

でも。

キィン!

短剣が止めた。

フランアーデルさんだ。

「背中からは感心しないな」

「暗殺者に正面から戦えと?」

「それもそうだね」

二人の姿が消えた。

次の瞬間には、闘技場のあちこちで金属音だけが響く。

速すぎて。

私の目では追いきれない。

「フランアーデルさん……!」

「心配いらねぇ」

オラクルが言う。

「まだ全然本気じゃない」

でも。

私は別の場所を見ていた。

リザベルさん。

――動いていない。

いや。

歩いている。

戦場の中心を。

ゆっくりと。

セレナの槍が飛んでくる。

ヒラリ。

鉄球。

半歩。

暗殺者の刃。

日傘を少し傾ける。

全部。

紙一重。

「また……」

予選と同じ。

攻撃をしていない。

なのに。

誰も触れられない。

『リザベル選手! 最終戦でも未だ被弾ゼロォォォ!!』

歓声。

その直後。

「いい加減にしなさい!」

セレナが怒鳴った。

無数の銀の突き。

「《千槍花》!!」

空間を埋め尽くすような槍撃。

逃げ場なんてない。

リザベルさんが初めて。

杖を上げた。

「――《シールド》」

透明な壁。

カカカカカカンッ!!

全ての槍が弾かれた。

「なっ!?」

そのまま反射された衝撃がセレナを襲う。

「きゃあっ!」

場外。

『セレナ選手、脱落ゥゥゥ!!』

残り四人。

続いてバルガス。

「なら俺がぶっ壊す!」

鉄球を両手で持ち上げ。

真正面から突進。

「《大地粉砕》!!」

ドゴォォォン!!

砂煙。

でも。

「……嘘だろ」

バルガスの鉄球を。

リザベルさんの透明な壁が。

完全に止めていた。

リザベルさんは。

片手しか使っていない。

「ごめんなさいね」

杖を軽く動かす。

バァン!

「ぐおおっ!?」

巨体が吹き飛び、闘技場の外へ。

『バルガスも脱落ッ!!』

残り三人。

クロウ。

フランアーデルさん。

リザベルさん。

「……あれ、本当に人間か?」

オラクルが呟いた。

クロウが姿を消した。

「今度こそ」

声だけ。

「死角から――」

リザベルさんの背後に出現。

刃が首元へ。

その瞬間。

「そこね」

リザベルさんが杖を後ろへ向けた。

見てもいない。

「《バインド》」

光の鎖。

「なっ――!」

クロウの全身が絡め取られる。

そのまま。

ふわり。

持ち上がり。

ポイッ。

「うわああああ!」

場外へ。

『クロウ脱落!!』

歓声が爆発した。

そして。

残ったのは。

二人。

フランアーデルさん。

リザベルさん。

「来た……」

私は息を呑んだ。

オラクルも。

メリーも。

声を出さない。

フランアーデルさんが短剣を抜く。

リザベルさんは白い日傘の下で微笑んでいた。

「貴方」

「?」

「面白い剣を使うのね」

「そちらこそ」

フランアーデルさんも笑う。

「随分頑丈な魔法だ」

「試してみる?」

「そのつもりだよ」

次の瞬間。

二人が消えた。

キィィン!!

短剣。

魔法杖。

真正面から激突。

衝撃波。

闘技場の床に亀裂が走る。

「速い!」

フランアーデルさんの斬撃。

一。

二。

三。

リザベルさんが日傘を持ったまま、全てかわす。

でも。

フランアーデルさんも止まらない。

肩。

足。

首。

わずかな隙を狙って、短剣が次々と走る。

そして。

「そこ!」

短剣の切っ先が。

リザベルさんの頬へ迫った。

初めて。

リザベルさんの笑顔が消える。

「――《シールド》」

カンッ!!

透明な壁。

フランアーデルさんが弾き飛ばされる。

着地。

すぐ立ち上がる。

「やっぱり硬いな……」

リザベルさんは頬へ触れた。

傷はない。

でも。

ほんの一瞬。

短剣が届きかけた。

「ふふ」

笑った。

今度は。

さっきまでの優しい笑い方とは。

少し違う。

「いいわね」

ゾクッ。

私は腕を抱いた。

「……なんか」

「分かる」

オラクルが言った。

「空気が変わった」

リザベルさんが。

日傘を閉じた。

パチン。

その音だけで。

なぜか。

闘技場が静かになった気がした。

「貴方、本当にいい筋をしてるわ」

「褒めても何も出ないよ」

「じゃあ――」

杖が上がる。

「少し本気で相手してあげる」

ドンッ!!

黒い魔力。

地面が沈んだ。

「……!」

今まで。

隠されていたもの。

オラクルが言っていた。

何も感じない。

それは。

弱いからじゃなかった。

全部。

隠していたから。

「この魔力……」

フランアーデルさんの表情が変わる。

リザベルさんが杖を横へ。

「来なさい」

フランアーデルさんも。

短剣を逆手に構えた。

黒龍王を倒した時と同じ。

いや。

それ以上。

刃が黒紫に輝く。

「なら――」

全魔力。

短剣へ。

「僕も全力で行く」

轟音。

「――奥義」

黒い牙が。

空間に現れる。

「《グランドバイツ》!!」

斬撃。

巨大。

黒と紫。

闘技場を真っ二つにしそうな力。

観客から悲鳴。

リザベルさんへ。

一直線。

私は立ち上がった。

「行けぇぇぇ!」

直撃。

ドガァァァァァァァン!!

爆煙。

地面が砕ける。

「やった……?」

メリーが呟く。

煙が。

ゆっくり晴れていく。

そして。

「……え?」

私は固まった。

リザベルさんが。

立っている。

無傷。

目の前には。

さっきの透明な壁とは違う。

漆黒の巨大な魔法障壁。

亀裂。

ひとつもない。

フランアーデルさんの目が見開かれる。

「グランドバイツが……」

震える声。

「完全に……止められた?」

リザベルさんが。

ゆっくり杖を下げる。

「――《アブソリュート・シールド》」

その声は。

もう。

昨日鏡をくれたお姉さんのものに聞こえなかった。

「ふふ」

唇が歪む。

「本当に、よく育ったわね」

フランアーデルさんの眉が動いた。

「……何?」

「ねぇ、お坊や」

リザベルさんが尋ねる。

「一つ聞いてもいいかしら」

白い日傘を肩へ。

そして。

真っ直ぐ。

フランアーデルさんを見る。

「貴方――」

少し間。

「リザーメイト王国の出身でしょう?」

「……!」

フランアーデルさんの顔から。

血の気が消えた。

「なぜ……」

声が。

震える。

「なぜ、その名前を知ってる……?」

私も立ち上がる。

「リザーメイト……」

フランアーデルさんの故郷。

TIMEに襲われた国。

リザベルさんは。

楽しそうに笑った。

「なぜって?」

日傘の先端を。

床へ。

コツン。

「知っていて当然でしょう?」

そして。

言った。

「貴方のお兄様とは――」

フランアーデルさんの目が。

さらに見開かれる。

「同じ職場の仲間だもの」

「……え?」

世界から。

音が消えた。

「兄……?」

「そう」

リザベルさんが笑う。

「TIMEの――10番」

「……」

フランアーデルさんが。

動かない。

「何を……言ってる」

「貴方の実のお兄様よ」

「嘘だ」

「まあ」

「嘘だ!」

フランアーデルさんが叫んだ。

「兄さんは! 僕が幼い頃に修業へ出たって――!」

「そう聞かされていたのね」

リザベルさんの笑みが深くなる。

「可哀想に」

「黙れ……」

「貴方、何も知らないのね」

「黙れ!」

短剣が震えている。

怒りだけじゃない。

恐怖。

混乱。

全部。

リザベルさんは。

ゆっくりと。

右手で左腕のアームウォーマーを掴んだ。

「それなら」

白い布が。

滑り落ちていく。

手首。

腕。

そして。

左手。

露わになった。

その甲。

黒い刻印。

誰よりも見慣れた。

恐ろしい数字。

『8』

「……っ!」

私は息を呑んだ。

メリーが震える。

「TIME……」

オラクルの目が細くなる。

リザベルさん。

昨日。

鏡をくれた。

優しいお姉さん。

その人が。

左手の甲をこちらへ見せる。

「改めまして」

微笑んだ。

でも。

そこに優しさはなかった。

「TIME――No.8」

フランアーデルさんが呆然と呟く。

「……八番」

「そうよ」

リザベル。

TIME No.8。

私たちより。

ずっと上。

No.4よりも。

そして。

フランアーデルさんの兄――No.10より下。

それだけで。

兄の強さが。

どれほど異常なのか分かってしまう。

フランアーデルさんの瞳が揺れる。

「兄さんが……TIME……?」

「まだ信じない?」

リザベルさんが肩をすくめる。

「なら、直接聞けばいいじゃない」

「どこにいる……?」

「ふふ」

「兄さんはどこだ!」

「カサンドラ」

私の心臓が。

跳ねた。

やっぱり。

No.10は。

あそこにいる。

リザベルさんが杖を掲げる。

その瞬間。

「さて」

口調が変わる。

「お遊びは終わり」

杖の先。

黒赤い炎。

最初は。

小さかった。

でも。

一瞬で。

コロシアムの天井を埋めるほどに膨れ上がる。

「な……!」

オラクルが立ち上がる。

「お嬢! 伏せろ!」

「――全てを灰に変えなさい」

リザベルさんの瞳が。

冷たく光った。

「《カタストロフ・フレア》」

ドゴォォォォォォォン!!

炎。

黒い炎。

闘技場の至る場所から。

巨大な火柱が噴き上がった。

「きゃああっ!」

観客席。

悲鳴。

「逃げろ!」

「TIMEだ!」

『緊急事態! 緊急事態!!』

魔法スピーカー。

『TIMEの襲撃を確認! 観客は直ちに避難してください!』

一瞬で。

武道大会は。

地獄へ変わった。

「リザベル!!」

私は叫ぶ。

でも。

彼女はもう。

私を見ていなかった。

宙へ。

ふわりと浮かぶ。

そして。

王族席。

グライツ王が抱えている。

青紫の光。

【☆4 大魔道士の魔導書】

「まさか……!」

リザベルさんが。

一瞬で王様の前へ。

「頂いていくわ」

「なっ――!」

魔導書を奪う。

「待て!」

フランアーデルさんが走ろうとする。

でも。

足が止まった。

「兄さん……」

その一言だけで。

身体が動かなくなっている。

リザベルさんは。

そんな彼を見下ろした。

「それじゃあね」

妖艶に笑う。

「可愛い弟君」

「……」

「10番に」

日傘が開く。

「貴方が元気だったと伝えておくわ」

次の瞬間。

カァッ!!

巨大な炎。

天井へ。

ドゴォォォン!!

「崩れる!」

オラクルが叫ぶ。

瓦礫。

悲鳴。

黒煙。

私は腕で顔を覆った。

そして。

もう一度目を開いた時。

リザベルの姿は。

消えていた。

☆4の魔導書と共に。

残ったのは。

燃え上がるコロシアム。

逃げ惑う人々。

そして。

闘技場の中央。

膝をついたまま。

動かなくなった。

フランアーデルさん。

「……兄さんが」

震える声。

「TIME……?」

短剣が。

手から落ちた。

カラン。

私は。

炎の中。

フランアーデルさんへ向かって走り出した。

最後までお読みいただき、ありがとうございます!

ついに正体が明かされました。

フールへ鏡を譲り、優雅で親切な魔道士として登場したリザベル。

その正体は――TIME No.8。

アームウォーマーの下、左手の甲に刻まれていた『8』がTIMEの証です。

そして今回、さらに大きな事実が明かされました。

フランアーデルの実兄=TIME No.10。

フラン自身は兄の顔すらほとんど知らず、「幼い頃に修業へ出た」とだけ聞かされていました。

その兄が、自分の故郷を滅ぼしたと信じて追い続けてきたTIMEの上位メンバーだった。

さらにリザベルは、武道大会の優勝賞品だった☆4『大魔道士の魔導書』を強奪して撤退。

次回。

崩壊するコロシアム。

逃げ遅れた人々。

そして心を折られたフランアーデル。

フールたちはまず――目の前の命を守るために動きます。

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