(62)hold on
それから毎夜魔物退治に出た。
地を封印したこの辺り一帯の地上をさまよう魔物を一掃したら次の地を封印しに行くと垂華は言った。
一夜は見ているだけなので、一緒に行かないと駄目かと聞くと駄目だと言われた。
だが、うーん、と唸りじゃあこうしようと垂華が提案する。
「一夜に何かあったら発動して守ってくれる御守りを付けるよ。あとそれを俺が察知出来るように」
一夜に以前施したテレパシーの呪いとは反対の腕に呪文を唱えながら模様をかきつける。
模様が一瞬発光して御守りの完成だ。普段は何も見えない。
「危険があったらこれがシールドになるから。一夜の体を力の膜で包んで守ってくれるから。そうしてる間に一夜の所に駆けつけられる」
よって、一夜は留守番になった。
といっても3人が寝ている間に買い物などをして、朝食兼昼食を作る係だ。これで効率が良くなった。
威咲は帰る時には元に戻っていた。
部屋に入ると一夜は寝ているので起こさないように布団に潜り込む。
「…っ」
夢で威咲はあの場面にいた。
男に組み敷かれる。
「…いや…っ、一夜!」
「威咲!?」
揺り起こされて目覚めると一夜が心配そうに見ている。
「大丈夫か?」
威咲は両手で顔を覆った。
「襲われる夢を見たの」
あれは自業自得なんだ…でも一夜が助けてくれたから。
一夜が肩に触れた瞬間、またビクッとしてしまった。
一夜が手を離して切ない顔で微笑んだ。
「早く忘れろよ?つらくても忘れるしかないんだからよ」
威咲は頷く。思い出して、体の芯が震えている。
「私、バカだね」
「あれはしょうがなかったんだ。お前はよく耐えてた。強いと思うぜ?
それに悪夢は現実じゃないだろ、今大事なことはちゃんと頑張ってんじゃん」
「ありがとう」
好き。やっぱり一夜が好きだよ。なのに、触れられてさっきみたいになってばかりで、それがつらい。
私はいつか消えるかも知れないから、だから一夜を受け入れたらいけない。
友達の一線を越えたら、一夜を弄んでしまうことになる…
だけど、触られるとどうしても怯んでしまう。このままじゃ一夜に嫌われないかな。そうなるのは嫌だ…
じゃあ、どうすればいい?
やっぱり克服するしかないのかな。ううん、しなければならない、よね。でもどうやって?
「威咲」
「!」
急に肩に触られて威咲はこわばった。
「あ…多摩が一緒に買い物行こうだってよ」
「うん、わかった今行く」
一夜は何も言わずに去ってしまった。
まただ。またこんな。
触れられてこんなことが続いてて、きっと一夜を傷つけてる。なのに反応してしまう。
威咲は悩んだが多摩に話してみることにした。
「話って?」
「その内話そうと思ってたけど…」
多摩を見る。多摩ちゃんなら。
「…触られるとどうしても襲われたのを思い出してしまうの」
「それはねぇ威咲ちゃん、乗り越えるしかないのよ」
店への道すがら、腕組みをして頷く多摩。
「できるかな」
「大丈夫よ。今だって一夜君黙って待っててくれてるわよ多分」
「でももし治せなかったら、そのうち一夜に嫌われないかな」
「どうしたのよそんなに気にして…まさか、一夜君となんかあった…?」
「多摩ちゃん…多摩ちゃんも一夜が好きなのにごめん」
「なに、どういうこと?」
「あのね、…告白、したんだ」
「え」
多摩が目を丸くする。
「そう…、良かったわね自分の気持ちに気づいて。で、返事は?」
多摩が落ちついているので威咲は安心した。
「一夜も私が好きだって言ってくれたの」
「そう…もういつの間にそんなになってたのよ」
「私がさらわれた日」
「そ…う。ごめん」
「ううん、バカだよね私、逃げたせいで襲われて、自業自得なのに」
「そんなに自分を責めないで。それにねぇ」
多摩はわざと明るい調子に戻して言った。
「あたしはいいのよ。もう諦めるって一夜君にも言ったし。しかも去年よ?だから気にしないで。それに半分遊びみたいなものだったから」
「そうだったの?知らなかった」
多摩がひょうきんに舌を覗かせた。
「それでもやることはちゃんとやってるもの威咲ちゃんは偉いわよ?
一夜君のことも…一夜君ならきっと大丈夫だから。今だって威咲ちゃんの心の傷が癒えるのを待ってくれているんでしょ?
なんとなく前からそんな気はしてたのよねぇ。うーん、心の問題よね。だから、そうね…何か思い切って乗り越えるにはー、うーん…威咲ちゃんからちょっとずつ触ってみたらどうかしら?」
威咲は口元に手を当てて考えた。
「とにかく頑張って乗り越えましょっ」
多摩に肩をバシバシ叩かれて応援されて、威咲はとりあえず頷いた。
「そう…だよね、うん、やってみるよ」
ホールドオンは我慢する、持ちこたえる、とかいう意味。私は昔は抱きしめると思ってた。
次回、威咲が一夜にとった行動は?お楽しみに☆
なんか前回間違えて完結にしてたようで、どうりでPV多かった。くすん。
そのせいで今日投稿する前に、どうすれば!?と焦ったのでした…
小説情報編集で直せると初めて知ったよ☆




