その2 中津
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阪急梅田から新大阪や京都へ行く方面の一つ目の駅に『中津』という駅がある。駅を降り梅田の方を振り返れば空へ塔の如く伸びるスカイビルが見えるから、この周辺は梅田という街区と言える。
然しながら街の佇まいというのは下町感があり、ロダンが尋ねた古本屋が在る細くて長いまるでウナギの寝床みたいな路地を兼ねた商店もあって、賑やかな梅田の中心街というよりかは、絨毯の端の捲れた味わい深さのある寄る辺の都会と言った方が良いかもしれない。
そんな商店街の古書店『蜥蜴堂』へロダンが行くことになったのは、ある人物の薦めだった。その人物とは先年、九州を自転車ランドナーで旅した時にNという土地で知り合った民族学者で、その人物を財前先生とロダンは呼んだ。
財前先生は九州山地の奥まった山間のNという閑散とした土地で、電力会社のダム管理員や温泉に来る客相手に民宿を開いている歴史民俗学者だが、ロダンは旅行中に先生の著作を読み耽り、その結果、Nへ立ち寄るというよりは自分からご本人に会いに行くことになり、先生の知己を得た。
実はその際、ロダンは小さなある事件を解決したのだが、それは財前先生との間の秘密として今も互いの胸中深くにある。
そんな先生へ、ロダンは連絡を久々に取った。それは自分の属する劇団『シャボン玉爆弾』の仲間である西願寺亮介からある依頼を受けたことに関連する事なのだが、不意に自分の考えの幅を広げたくて思いついたのである。
それは――『薔薇』という言葉を大きい視点で俯瞰的に捉えてみてはどうだろうかという自分に対する考えであり、もしかすれば自分は知らないが歴史的に何かあるのではないかという閃きにも似たロダンの直感だった。




