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その1 ロダンの困りごと
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ロダンは非常に困っていた。
それは昼下がりに大阪中津駅前にある商店街の古書店『蜥蜴堂』に入ってもう優に一時間が経とうとしていたからである。
だが…、かといってこの場所で長い間拘束されてしまったのは面前で熱心に自分へ話しかけている、どこか蛙の様な、いや蜥蜴の様な風貌の店主の所為ではなかった。
原因は自分がある事を尋ねたからである。
それは何か?
――そういえばご店主、十三に『卍楼』ってあるじゃないですか。つかぬことを聞きますがね、その場所と関わりのある『薔薇』というのを何か知りませんか?
…で、ある。
そしてそれが正直、これ程長時間自分を足止めされる原因になろうとは勿論、ロダンは露知らずであった。