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断罪された妖精の愛し子に二度目の人生を  作者: 森永 詩


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第1話 記憶の中のユリウス

 暖かい光だった。暖かくて、胸がいっぱいになり、涙が溢れそうになる。そう思ったのも束の間、光が収まるとこの世の終わりのような光景が広がっている。アイリーネの元へ駆けるも間に合わず、刃は無惨にも落ちていった。



「リーネっ!!」


 スローモーションの様に落ちていく刃に為すすべもなく、刑が執行されてしまう。力が入らずに膝をついた後、座りこんでしまった。

 

 ―人形なように地面に横たわるのが、リーネだというのか?それにこの記憶は…



アイリーネがもたらした光によりユリウスは自身に封じられた記憶があった事を思い出す。生まれたばかりのアイリーネを抱いた父が公爵家に帰ってきたあの日の事を。 



 ユリウス・ヴァールブルグはアルアリア王国の公爵家の嫡男として誕生した。家柄だけではなく容姿にも恵まれ、青みがかった銀髪に紫紺の瞳の美少年である。魔法の才能もあり家庭教師達はこぞって褒めちぎる、この先素晴らしい人生を送ることであろうと。

5歳になったユリウスは周りの反応とはうらはらに冷めていた。何をしても心が動かされることもなく、ただ焦りだけが募っていった。大人達の歓喜とは反し沈んでいく心。



 その日は、昨晩の雷を伴う雨が嘘のように雲ひとつなく晴れた春の日だった。公爵家の応接室に呼ばれたユリウスはいつものように、関心なく椅子に座る。父に続き母と執事が部屋に入ってくる。部屋に入ってきた父の手元をふと見ると、赤子を抱いていた。ユリウスは赤子をみた瞬間に目を見開いた。



「ち、父上、この子は!?」

「この子は今日からユリウスの妹になる子だよ。アイリーネと言うんだ、かわいいだろう?」



 父はそう言うとユリウスの隣に座り、見えやすいように顔をこちらに向ける。



―この子だ!この子に会うために僕はここにいるんだ!何故だとかはわからない、だけど絶対にそうだ。間違えるはずがない。



 出会えた事に喜ぶあまり、感情が昂りユリウスは号泣してしまう。

後で思うと、これが原因だったのだろうと悔やまれる。



「ユ、ユリウス…」


 大人達は顔を見合わせながら、困った顔をしている。今まで冷静で感情に乏しかったユリウスが号泣するとは思わなかったからである。ユリウスには周りの反応を気にする余裕もなかったが、なんとかアイリーネには挨拶をした。


「アイリーネ、初めまして。僕の名前はユリウスだよ。うーんと可愛がるから、いっぱい遊んであげるし、よろしくね」



 ユリウスはアイリーネの頬を指でつつきながら、頬の柔らかさに感動していると、アイリーネは言葉に反応するように微笑む。ユリウスもまた満足したように微笑んだ。



 その夜、王宮の魔術師によりユリウスの記憶を封じ、アイリーネを実の妹として新しい記憶を書き換えると告げられる。ユリウスは青ざめて拒否するも大人達は聞き入れてくれない。



「ユリウス、あなたがあんなに泣くなんて、びっくりしたのでしょう?ごめんなさいね。陛下からのお願いで、お父様も断われなかったのよ?」

母は眉を下げ、ユリウスに諭すように語りかける。


「大丈夫だよ、ユリウス。怖い事などないからな?すぐに終わるよ?」

父も大した事ではないかの如く、ユリウスに言い聞かせる。




「違うんです、違う!僕はそんな記憶なんて、いらないんです!」                         

 ユリウスは自分を捕まえようとする大人達の手を逃れようと暴れるも、空間に魔封じも施され魔法を使用できずただの5歳児はあっさりと捕まってしまう。魔術師の手がユリウスの頭に当てられ、金色の光がユリウスを包んだ。



「嫌だ――っ!!」

ユリウスの叫び声は夜闇へと消えていった。ユリウスの記憶と共に……

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