15話:姫琉とショッピング
散々、お金の説明を受けたのだが、一人で行かせるのが不安だという事でギン兄が道案内も兼ねて、ついて来てくれたのでほっとした。
よかったぁ〜!!
「じゃあ、予算を通貨単位で言ってみるっすね」
「大銅貨が九枚と、大銀貨が一枚と、小銀貨が三枚なんで……4,690テル?」
「おっ、正解っすね!」
キン兄と同じ顔で笑うギン兄からは、Sっ気は感じないない。近所の優しいお兄さんって感じだわ。
「ヒメルは、何を買いたいんっすかね?」
「欲しいものは、いくつかあるけど。とりあえず、動きやすい服が欲しいんだよね」
「確かに、そのヒラヒラな服じゃ動きにくそうっすね……」
今着ているのは、アルカナのお母さんの服を拝借したやつだ。
フリルがついたブラウスはいいとして、このスカートは問題だ。
前回と同じような事になったら……今度こそ恥ずかし死ねる!!
と、いうか思い出しただけでも恥ずかしいっ!!
あんな事にならないように、スカートではなくパンツを探している。
服探しと言っても、デザインにこだわりとかないんだよね。
普段着もG.○とか、しま○らとかで安くって動きやすいものがメインだった。部屋着にもなれば、学校のジャージに、一年の時に、体育祭で作ったクラスTシャツがデフォだった。
ファッションにお金をかけるより、趣味に使いたい派なのだ。
よく、瑠璃ちゃんに呆れられて一緒に服を買いに行ったなぁ……。思わず、色々思い出してしまう。
ともかく、早く買い物を済ませないとこの服だけで旅する事になる。それは、絶対に嫌だ! 着替えも合わせて、そこそこ欲しいところだ。あと下着も買わなきゃ……。
「服って、どれ位するものなの?」
「そうっすね? 上下合わせて5,000テル位じゃないっすかね?」
「じゃあ、今の持ち合わせじゃ一着分よりちょっと足りないか……」
「でもここは繊維の街なんで、他で買うより安く買えるっす! 今の持ち合わせでも、全然足りると思うっすね!」
でも、一着じゃ着回すには足りない。もう枚数が欲しい。ここは、素直に道案内を買ってくれた兄貴分に素直に尋ねてみた。
「こう……庶民的な? 服が安くって、いっぱい買えるお店ってないかな?」
「安くて、いっぱいなら中古屋で良ければ、もっと買えると思うっすよ! オレが気に入ってる店があるんで、そこなら一着100テルから買えるっすね」
「なるほど! 古着かぁ!!」
古着に、抵抗がないので全然問題なし。まぁ……下着だけは違うけど。
ギン兄の案内で、繊維通りを少し行った路地にある、古着屋に到着した。こじんまりとしたお店の入り口には
[古着 破壊屋]
と墨で殴り書きされた、古びた木の看板が掲げられていた。
「ここの店主は、同じ水の国の出身なんっすよ。だから、看板もミズハ語なんっす! しかも店の店主の顔が厳ついから、いっつも空いてるっすね!!」
ミズハ語は日本語とまったく一緒なので、これなら私にも読むことが出来た。それ以外の文字はさっぱりだけど。
店の中から古い木が軋む音がして、中から人影が。
「その腹立つ喋り方はギンのアホか?」
「いきなりアホとは! 酷いっすね!」
しゃがれた声で店から出て来たのは、確かに厳つ……いや、土佐犬みたいな顔をしたお爺さんだった。
「アホじゃなければ、大馬鹿じゃな。なんだ? また着られもしない服でも買って、売りにでも来たか?」
「わーわー!!! そんな昔の話はやめっるすよねっ!」
「ん~そんな昔でもないじゃろ? デザインばっかり気にしてサイズも確認しないで買った上に、仕入れのお金まで使い込んで、買い取ってくれと泣きついて来たのは、去年の今頃じゃったよな」
……あぁ、なんとなく察した。
さっき、キン兄が言おうとした話はその事だったのか。
全部を話されて、赤面してるギン兄が必死に何かを弁解しようとしてるけど、必死すぎて言葉になってない。
ここで、からかったり、慰めると面倒になりそうなので「とりあえず買い物しよう?」と話題を変えた。
「なんじゃ、嬢ちゃんの買い物か? ここには、古着しか置いてないぞ。それでも良ければ見ていきな」
「あっ、はい。ありがとうございます」
「それと、そこが試着室になっとるから、買う前にちゃんとサイズが合うか試してから買ってくれ。そこのアホと同じように、サイズの合わない服を買っても知らんぞ」
ギン兄にしっかりと止めをさして行った。
(どんだけ迷惑かけたのギン兄……?)
ギン兄をほっといて、服を探す事にした。
店先には、台に木箱が二つ置かれており、中には無造作に入れた服と、値札と、商品状態が殴り書きで書かれた木札が入っていた。
そのうちの一つには
[100テル:訳あり品シミ・破れ有り]
もう一つには
[200テル:ほつれ・軽度の汚れ有り]
と書かれていた。
なるほどわかりやすい。
ただ、どちらもミズハ語で書かれているので、読めないと値段以外わからないんだろうな。
(親切のような、意地悪のような……)
お店の中に入ると、今度は木の棚に折り畳まれた服と、壁には、ハンガーにかけられた服が並んでいた。
値札も、それぞれの服に個別で付いている。さすがに、ジャージっぽい、伸縮性にすぐれてそうな服は見当たらない。
「う〜ん、外の200テルの木箱から、適当に切れる服を見繕うかな」
繰り返しになるが、あまり服に興味がない。
あえて、好みを言えば、シンプルであればシンプルである程良い。汚れがあまり目立たない、黒のTシャツと、刺繍が少しほつれた白のブラウス。それと、キュロットパンツのようなデザインのズボンと、綺麗目なハーフパンツを発掘し、それを買う事にした。
試着も済ませて、おじさんのところに持っていく。
「これをいただきたいです」
「嬢ちゃんは、あのギンのアホのいるキャラバン隊の人間かの?」
突然の質問に驚いていると、いつの間にか復活していたギン兄が代わりに答えた。
「そうっすよ! オレの後輩っすね!!」
「お前になんぞ聞いとらんわ、アホ」
一喝され、またギン兄が小さくなる。
「そうですね、一応これから一緒に旅をするつもりですよ?」
少なくともエルフの国までは、と心で付け加える。
「だったら、あそこにある、コートも一緒にどうじゃろうか?」
そう言われてみた壁には、一枚の白いコートがかけてあった。
襟が立っていて、形はAラインコートのよう。さらに、ファンタジー感漂う金と銀の刺繍がされていた。ゴテゴテ過ぎず、嫌いではないが、別にコートは今はいらない。断ろうと思っていると
「あ、ああぁ……あのコートはッ!」
コートを見るなり動揺するギン兄。
「あのコートは、デザインしか見ないで女物の服を買ったアホな男が泣きついて持って来たもんで、渋々買い取った品なんじゃが、もう一年も売れないで、ああして埃をかぶっとるんじゃ。嬢ちゃんのサイズなら着れると思うんじゃが」
ギン兄の方に目を向けると全力で視線を逸らされた。
これは、一緒の旅仲間なら責任持って不良在庫を引き取ってけって事ね。
「ちなみにおいくらで……?」
「あれ一枚で4,000テルじゃな。じゃが今お嬢ちゃんが持って来た服と合わせて4,000テルで良いぞ」
「………………はい」
拒否権はなかった。
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結果として、最初に持って行った服と、先ほどのコートを買った。
おじさんは、売れ残りを買い取ってもらったのでホクホク顔だったが、ギン兄は自分の失敗談を暴露された上に、自分の黒歴史のコートと旅をする事になり、疲れ切った表情をしていた。
ちなみにおじさんのお店の横で、下着も無事買えました!
予算ギリギリッ!!
20.11.20加筆修正ほか
ミズハ語の説明入れました。
21.7.10 誤字・加筆修正




