12話:精霊と精霊石
「ゼェ……ゼェ……悪魔みたいなやつだな」
「そんな事初めて言われました」
「うるせぇ! と言うか却下だっ!! 世界を壊す手伝いをしろって事だろ!?」
「違いますぅ!! セレナイト様を救うために、エルフの国に連れてけって言ってるの!!」
「だから!! 結果としてそうなるんだろっ!!」
二人の無駄な言い争いが続いた。
双子は部屋の壁にもたれかかった状態で遠巻きから見ていた。
完璧に蚊帳の外である。
「さっきの話、本当なのか判断つかないですぜ」
「でも、ヒメルが言ったことが本当なら、この世界がヤバいっすね……」
「そうだよね、そうだよね。このままだと……」
しれっと双子の会話に入っているアルカナはちょっと元気なさげに言った。
「このままだとアルカナも消えちゃうね……」
「「!!!?」」
精霊の世界を切り離してしまうと人工とはいえ、アルカナはこの世界から消されてしまう恐れがある。
すっかり肩を落として元気のないアルカナを見て兄貴分になりすっかり仲良くなったギンがアルカナを懸命に励ました。
「そ……そんなことないっすよ、元気出すっすね! 根拠はないけどたぶん大丈夫っすね!」
「うん……」
そんな彼らのその横で、キンは一人真剣に考えていた。
そしてある可能性に気が付く。気が付くや否や、無駄な言い争いを続ける二人の言い争いに割って入った。
「隊長は、この話を信じてるってことでいいんですぜ?」
もはや軽い取っ組み合いになっていたカルサイトはその手を止めた。
「とりあえずだけどな!!」
「嘘なんか言ってないもんね!!」
「だったらオレは、ヒメル嬢を手伝った方がいいと思いますぜ」
まさかの仲間からの裏切りに驚くカルサイト。
この双子顔はそっくりだが、性格は違う。
弟のギンは行き当たりばったりな性格だ。
それでも臨機応変に事を済ます。
しかし、兄のキンは違った。
彼は慎重な性格で、行き当たりばったりな弟をいつも止める立場だった。
そんなキンからのヒメルの無計画な進路に肯定的な意見を述べた事に、カルサイトどころか弟のギンでさえ驚いた。
「兄貴がこんな話に肯定的なんて! どうしたんっすね!?」
「まぁ、あくまでこの話が本当ならの話ですぜ」
全面的に信じたわけじゃない、と言う前置きをした上で話し出した。
「仮にこの先、精霊が消えると“精霊石”を資本源としてるオレたちにとっては大きな問題になりますぜ?」
「あ……? あ、そうだな………それはまずいな!」
姫琉の目的に、気を取られすぎてそんな事考えても見なかったらしい。事の重大さに気がついたカルサイトの顔色はみるみるうちに悪くなっていく。
「そうか!! 精霊が消えたら精霊が作る精霊石も消えちまうって事っすね!!」
少し遅れてギンが気がつく。
【精霊石】
精霊が作ると言われている石。
これに魔力を流すことによって精霊と契約をしなくても
火を起こしたり、風を起こしたりできる。
街にある灯りなどあらゆる場所に使われている。
ただし、消耗品。
「何売ってるのかと思ったら、精霊石を売ってたんですね? そしたら大変ですね!! 物語通りの結末を迎えたら売り物……なくなっちゃいますね!」
ここぞとばかりにキンの話に姫琉がうざいくらいの笑顔を振りまきながら話しに乗ってきた。
「まぁ、ヒメル嬢の話を信じれば……って話ですぜ?
本当に近いうちに精霊が消えるなら、消えたときの為の新しい商品を見繕うか。それとも、ヒメル嬢と一緒にその結末を変えて精霊を救うか……ですぜ?」
カルサイトは大いに悩んだ。
姫琉をエルフの国に置いて来るための進路の話が
商売を変えるか、変えないか。
精霊を救うか、救わないか。
というあまりに大きな話になってしまったからだ!
こんな馬鹿げた話を『嘘だろ』と蹴ってしまうのは簡単だ。
しかし、自分のバレるハズのない秘密を全部知っていた事を考えると『嘘だろ』と言いきれない……。
「(むしろ、その方が凄く納得いくんだよな)」
誰にも聞こえないような小さな声で呟いた。
「なんでこんな事に……」
20.11.7誤字訂正
20.11.14加筆修正
21.7.04ギンの口調を修正
21.7.10加筆修正




