071[その後]
そう、その後の事だ!
私的に、本気で「下の世話」をされるのが嫌で、
私は一進一退の発熱との戦いを繰り返し、必死でリハビリをし、
無理をしなければ、普通の暮らしができる様になった頃、
やっと、周囲や外の事に目を向ける事が出来るようになった。
母国は内乱で忙しく、ウーニはストゥディウムの部下達と必死で
「国を守っている」と言う。
「竜の姫」だったおばちゃんは、母国から出られないのと、
ウーニの中に混ざった「竜の王」とも和解して、
元々、王族として暮らしていた事もあり、昔取った杵柄を生かして、
ウーニの補佐をしているらしい。
因みにおばちゃんの夫である「おっちゃん」は、おばちゃんの護衛。
トイレ以外、一時も離れず、傍に居るらしい。
そして私は現在、グランツの所で皆と御世話になっている。
皆と言うのは、ユーニとカーリタースは勿論、
コクレア、クーラーティオー、テッレストリスと、その傭兵団の皆様。
アモル達、海馬も居てくれている。
但し、私以外、それぞれ皆様、役職を貰って働いている。
私もそろそろ、新生活に向けて、新しく動きだしたくて
『働いて収入を確保したいのだが』と
グランツとカーリタースに相談したのだが、しかし……。
『お前は、俺の妹と言う事になっているのを忘れたのか?
連れ去られたらどうする!』との、
グランツの疑心を緩める事が出来ず、同情したカーリタースの口添えで
グランツの目が届く場所、
城内の警備隊の記録係の仕事をする事になった。
私は無駄に過保護に、ユーニに御姫様抱っこで運ばれ、ユーニと、
それに巻き込まれたテッレストリスの様子を羨ましく思いながら
眺め続ける事になっている。
正直、人の動きを見ているだけで、思うように体が動かないのは辛い。
それにしても、それ以来、私の隣では
ユーニに付き合ってテッレストリスもトレーニングを積み
何故か、大幅にパワーアップした2人の姿があるのだが
何なのだろうか?妙に鬼気迫るものがある。
最近では『僕も剣闘士の木剣をゲットする』とユーニが言い出して
巻き込まれたテッレストリスが愚痴りながら
グランツ達と一緒に剣闘大会に参加したりしている。
後、余談になるが…最近、カーリタースに
『女神様が言ってたんだけど、「まだ」だったんだな、お前等。
夫婦として、それどうよ?お前、ユーニを受け入れられないのか?』
なぁ~んて言われ、そう言う事が気になり出す今日この頃。
風呂に一緒に入るのと、夜の添い寝は今も妥協してくれないが
ユーニは、私との夫婦の営みを強要して来ない……。
それ以前に、そう言う雰囲気にならない間柄
私は「女として、妻として、一度は誘いをかけるべきなのか?」と
ちょっと思ったのと、違う焦りをも、最近は感じている。
「女として誘いをかけて断られたら笑えねぇ~ぞ」と言う
ブレーキが作動して、先に進めない。
と言うよりも、女から誘いを掛けていいモノなのだろうか?
ユーニの考えがどうなっているのか理解不能。
「風呂も添い寝も慣れてしまって、如何なのソレ?」と
風呂上りと、寝起きに悩み
ユーニの雰囲気に流され、同じ事を繰り返す毎日。
気付けば、なんだかんだ月日は流れ、
『明日、僕の18歳の誕生日なんだぁ~……。ねぇ、フロース!
何か僕に特別な誕生日プレゼントをしたくならない?』
なんて、プレゼントを強要されてしまって困惑する事に!
ホント、マジで
ユーニが、私に何を求めているか分からないのが
最大の問題なのだが『何が欲しいか、試しに言ってみろよ』と
ユーニに訊いた所で、答えちゃくれないのが困りモノ。
仕事と訓練の合間にソレをテッレストリスにソレを相談してみたら
乾いた笑いをされ、
『全裸になって、体にリボン巻き付けて
「食べてください」って、プレゼントしたら良いんじゃね?
裸の女に迫られたら、我慢できないのがセオリーだ』と言うのだが
「だから、それで断られたら、冗談抜きで立ち直れないんだってば!」
そもそも
「自分で如何したいか?」が分からなくなってしまっている昨今
普段一緒に風呂に入って何も進展しない間柄が、
何もしないで変化するとは思えないし
進展しても精神的に私が困るかもしれない。
私は支離滅裂な気持ちを抱え、
今回もまた、グランツとカーリタースに相談に行ったら……。
『全裸になって、体にリボン巻き付けて「食べてください」って、
プレゼントしてやったら良いんじゃねぇ~のか?』と、グランツ。
カーリタースも同意見らしく、余所行きな言葉遣いで
『仕方ないですねぇ~、リボンの手配は任せて下さい』と
明日の手配を手早く決めて、文章化し、書類をグランツに渡して、
グランツはその書類を読んで、『良かったな!これで決まりだ!』と、
書類にサインして、明日の夕食の話をしている。
ちょっと待って欲しい。私は「とある不安」を抱えているのだ!
私は必死な形相でグランツとカーリタースに
『ユーニは前、
キャベツやコウノトリの話を信じている節があったんだ!
今もそうだったらどうしよう!』と打ち明ける。
『『まさか、さすがに、それは無いだろう』』と、
一頻り笑ったグランツとカーリタースだが……。
暫くして、『あっ』と声を上げ、カーリタースが一人、真顔になる。
『え?冗談だろ?』
『いや、でも……。
当時、ストゥディウムが担当してたらしいんだが、勉強だと称して、
「短時間専用の貸し部屋」のある娼婦館近くの店まで連れてったら、
男設定のフロースの事を見つけて、「友達になる」と言って、
追い掛けて行ったとか…そのまま、追いかけ回してるとか、
「男食系」の可能性を相談された事もあった様な気が……。』
『男色は無いだろ?え?でも、男女の知識的にはどうなんだ?
今晩、試しに飯の時にでも
「生々しい春画」を見せて、そう言う話を振ってみるか?』
『流石に食事中は不味いだろ?
今日は、この国の国王が同席するんじゃなかったか?』
『じゃぁ~今日の昼?』
『そもそも、春画を持ってるのか?』
『絵に興味はなくて持ってない。カース、手配できないか?』
『当てが無い。』等と、
グランツとカーリタースの会話が迷走する。
こうして迎えたユーニ18歳の誕生日、当日。
何時もの様に、何事も無く、ベットで一緒に目を覚まし、
私は今日は特別に!と『誕生日おめでとう』と言って、
自分から、ユーニの額にキスしてみた。
ユーニは嬉しそうに笑って『ありがとう』と言った。
それにしても、なんにしても、今日は本当に特別な日だった。
ユーニが16歳の時に私とフライング設定で婚姻した事情と共に
この国での成人、18歳になったユーニと、
この国の王の隠し子設定の私の結婚が正式発表され、
この国の王子として、ユーニが正式に迎え入れられる。
朝から式典及び、パーティー三昧。
私は元気だった時よりか細くなり、弱々しい雰囲気から、
王妃の保護欲を刺激したらしく
最初に「隠し子」として会った時の無視っぷりは何処へやら?
再会した昨日の晩から、
『孫同士の婚姻の為に、
貴女にも、国王の良い孫を産んで貰わなくては困るのです』と、
子猫を可愛がる様に
王妃は、甲斐甲斐しく私の世話を焼いてくれている。
自分を構成する嘘が苦しくて、申し訳なくて、
ちゃんと笑えないでいたら、王妃は母親の様に抱き締めてくれた。
そこで私が不意に泣いてしまったので、
辻褄合わせにカーリタースが余計な情報を告げる。
ソレは、我が子を抱く事無く死んだ私の母親の死と
育ててくれた祖母の死、国王が引き取らなかったら、
天涯孤独の身として……。と言う本当の中に嘘を織り交ぜた法螺話。
御蔭で、私は悲劇のヒロインに仕立て上げられ、
祖国での自分の王位継承権を捨て、私を親元に戻す為に連れて、
この国に亡命した設定のユーニは、何故だか、
酔っ払い王子のグランツの御蔭でヒーローに祭り上げられた。
もう、私が何を言おうと、どうしようもない。こんな日の夕方、
私は一応、持ち歩き用の小さな日時計をプレゼントに準備し、
王妃の手で磨きあげられ、飾り立てられ、寝室に据え置かれた。
ユーニはほろ酔い加減ながら、こちらも身綺麗にされて、
寝室に入って来る。
私は、酒の力を借りたくても、飲めない体質に変化してしまって、
素面で、今回の事を構えなくてはならない。
私は今までの人生の中で一番緊張していたと思う。
自分的に腑に落ちない現実が走馬灯の様に脳裏を掠める。
何時の間にか震えてしまっていた体にユーニが触れ、
『大丈夫だよ』と微笑んで『僕の事、好きでしょ?』と言った。
正直、私はイラッとし、本気で色々腹立たしく思った。
因みに、この後の事は、読者様の御想像にお任せする事にします。
途中、PCの不具合から、資料、プロットの消失事故があり。
物語に不具合が生じている部分があるかもしれませんが…
そこは無料の公開作品……。
苦笑いしてしまってでも、見逃してやって下さい。
…って、そんな事が無くても……。
時々、設定資料読み落として、大事なエピソードを入れ忘れて、
投稿終了後に気が付いて、後悔する事があるんですけどね……。
って、ごめんなさい…嘘を申しておりました!トラブルなくても、
同じだったかも知れない……。




