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66.エルハリス――7

 ひとまず魔族化する事を選んだ連中は黒珠(オーブ)が馴染むのを待った方が良いだろうという事で一度その場は解散。

 一応ブランクとして更に一日の休日を設け、本格的にメーゼの作品の性能を試すのはその後にする事になった。

 まぁ、その作品をメインで使う予定のジールやエマが魔族化したんだから仕方ない。

 その日は目玉のE(エレメンタル)マガジンに即興で魔法を込めてメーゼの機嫌を取ったくらいだ。


 そして翌日。

 ラネルたちの様子を見てきたが、政務も普通に回っているようだった。

 これなら俺が今更顔を出す必要も無いし、特に声はかけないまま立ち去る。


「……ん?」


 特にやることもなく、リフィスに貰った小遣いで食べ歩きをしていると小さな教会に入っていくレミナを見つけた。

 なんとなく遠目にその様子を伺ってみる。


 おー……驚いてるな。

 教会で普通に祈ってる魔族たちの姿を見れば当然の反応なのかもしれない。

 そこまで興味を持った事は無かったから知らなかったが、その光景には俺も少し驚いた。


 俺の聴力だとここからじゃ内容までは聞こえないが、最初は恐る恐る魔族に話しかけていたレミナが次第に打ち解けていく様子ははっきり見えた。

 やはり共通の話題があると進展も速いものなんだろう。

 会話が途切れたところで教会を出たレミナは何事か考えながら歩き回り、やがて人気の無い公園に腰を落ち着ける。

 ベンチで思い悩む姿を眺める事数分、タイミングを見計らって話しかけてみた。


「よう、レミナ。奇遇だな」

「っ、貴方は……!」


 まだ警戒されているのか、俺に気付いたレミナはパッと顔を上げる。

 だが、特にいつでも動けるようにするとかは無いな。芯の部分はもう落ちてるようなもんか。


「何か考え込んでたみたいだが、どうした? 魔族になった先の未来でも考えてたか?」

「そ、そんな事は……」

「別に魔族でもお前と同じ信仰を抱いてるのはさっき見たろ? それともお前やお前の神はアイツらを拒絶するのか?」

「いえ――って、いつから見てたんですか!?」

「そうは言ってもお前が教会に入った辺りからさ、暇だったからな。食うか?」

「あ、えっと……いただきます」


 誤魔化すついでに屋台で買ったたい焼きを押し付けた。

 文句を言う口がふさがったところで更に言葉を続ける。


「いま俺の質問をお前は否定したが、それなら魔族化を拒む理由は無いよな? むしろ何を躊躇っているのか教えてほしいところ――」

「――レミナに何をしている?」

「お? 勇者サマのご到着か」


 からかっているところに現れたのはユイ。

 庇うようにレミナの前に割って入った勇者に突き付けられているのが剣ではなく指先なのがどこか可笑しく感じられる。


「なにって、別に。たい焼き奢ってただけだよ」

「……。レミナ、本当?」

「その……はい。彼の言う通りです」


 ユイの確認に頷くレミナ。

 乱入者も現れた事だし、ここは引き下がってもいいが……どうせ暇だしな。

 もう少し遊んでいく事に決め、俺は口の端を吊り上げた。


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