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13 三者面談①


 セズラは拓とミカエルを交互に見ながら、ため息をついて紙束を机に置いた。

「……何話してたのかな?」

「ノノセと東洋の話をしてただけですよ」

「そうなの?ヒロくん」

 セズラがジーッと拓を見た。拓はあながち間違ってはいないと思い、コクッと頷いた。それを見て、セズラは半分諦めたような顔をして、先ほど座っていた席に座った。

「全く……まあいいや……じゃあ、話の続きをするから、ミカエルさんは出てってくれる?」

「え……いやですよ?」

 ミカエルは自分よりも年齢が上で、格も何もかも自分よりも上の人に反抗できる人間である。

(はっきり意見を言えるって、すごいことだよなぁ……)

 拓は普通の人が「なんて生意気!?」と思うことを、むしろ、尊敬するという結構ズレた価値観の持ち主である。

「私が入ったらダメな話なんですか?」

「そりゃあね?他人に将来の話とか聞かれたくないでしょ?」

「別に……聞かれてもいいですかね」

 ミカエルもなかなかの価値観だった。というよりも、頭いい人は変人と言われる通り、『リスペクト』は変人の集まりである。だからといって、将来の話を他人に話せるかどうかは別の問題だが。

 ミカエルはセズラから目を逸らして、面倒くさいな〜、と小声で言った。一番遠い席にいる拓はその呟きが聞こえて肩をビクッと震わせたが、セズラは聞こえていないのか気にしていないのか普通にしている。

 ミカエルは数秒後、ハッとして、急に机に身を乗り出した。

「私が、ノノセの保護者役になればいいんですよね」

「「……え?」」

 拓とセズラは顔を見合わせて困惑した。ミカエルは自分の意見に自信があるのか、うんうんと頷いている。

 そして、ミカエルは席を立ち、拓の隣の席に座った。どうやら、二者面談から三者面談になりそうだ。

「こんにちは、ヒロの母、ヒロコです」

「改名シタァッ!?」

「……ヒロコさんって呼べばいいのかなぁ……?」

 拓は驚きを浮かべ、セズラは呆れているのか苦笑いになっている。拓がミカエルの顔をチラッと伺うと……母の笑顔そのもので、本当にお母さんになれるんじゃ…?と思った。

「いつもヒロがお世話になってます」

「いえいえ、まだきて二日目ですよ〜」

「え……あ、あの…?」

 セズラは戸惑うかと思っていたが、想像以上に戸惑っていず、普通だったので逆に拓が戸惑ってしまった。困惑している拓を置いて、二人はどんどん会話していく。

「息子の進学校って、やっぱり……『シャデーラ・ミドル院』ですよね?」

「んー、『シャル・イースト校』ってつい先ほど決まったんですよね」

「え、手続きって、別にまだ完了してないですよね?」

「はい、今からするところです」

「ならいいです。今すぐに『シャデーラ・ミドル院』に変えてください」

 ミカエルは真剣な顔でそう言う。一人が寂しいのか、単純に俺にきて欲しいのか、理由はわからないが、めちゃくちゃきて欲しそうな顔で聞いてくる。なので、拓は声を挟んでみる。

「えっと……ミカエルさ「お母さんと呼びなさい」

「……ミカ「お母さんって呼びなさい」

「…………ミ「お母さんって呼びなさい」

「早いですよ!?俺まだ『ミ』しか言ってませんよ!?」

「あら、お母さんって呼んでくれないんですもの」

 ミカエルは普段の一匹狼とは思えないほど、とてつもなくふざけている。この一面を知れたことは拓にとって神を超えた神々レベルの価値のあることだった。

(え、え、え、え!?!?お、俺……ミカエル様と漫才!?的な感じのできたかも!?え、やばいやばい!!ここにきてずっともうこのまま死んでもいいけどって思ったけど、死んでたらこの展開もしれないじゃん!?死なないように神シーンをたくさん見れるようにしないといけない……!頑張らないといけないじゃん!で、でも……頑張ったらミカエル様たちのいろんな面を……へへっ……)

 あくまでも、中身は立派な男子高校生である。つまり、見た目は親中三、頭脳は男子高校生、その名も、名オタク拓!……と、一人寂しく頭の中で叫んでいた拓であった。

 だがしかし、その間にも会話は進んでいるのだ。泊まるわけがない。そんな能力の持ち主ではないのだから。

「お母さんって呼びなさいヒロ」

「ヒロくん、呼んでみてよ?ほら、家族ってことを証明しないとでしょ?」

「かぞっっっ!?!?!?」

「変なこと想像したらダメだよ〜?」

 しっかりと男子高校生の中身……いや、男子中学生レベルの頭になっているので、脳内でミカエルと拓の家庭を想像してしまうものだ。

「……失礼、先生。お借りします」

「うん?紙束がなんか?」

「少し丸めさせていただきます」

 ミカエルは数十枚の紙をひったくるようにして取り、クルクルと巻いた。そして、立ち上がり、それを拓にむけて一直線に!!


 ーーパァンッッッ!!!!!


「いったあああああああああああああい!?!?!?!?み、ミカエル様!?!?」

「お母さんと呼びなさい。何変な妄想をしているの?あなたマザコンなの!?」

「勝手な妄想すぎません!?」

 ミカエルは顔を真っ赤にしながら、拓を上から見下ろす。その顔が真っ赤な原因は、怒りか、疲れか、それとも別の何かか……拓にはその理由がわからなかった。

「あー!もう!お母さんと想像しないの!」

「いてて!わかりました!わかりましたから!何度も何度も同じところを叩かないでください!」

「うるさい!お母さんと呼びなさい!」

「お母さん!これでいいよねっ!?」

「ダメ!」

「なんでぇっっっ!?!?」

 そんな二人を見てセズラは一人で紅茶を飲んでいた。

(若いって……いいなぁ……青春……グッド……)

 一人おじさんじみたことを思いながら、セズラは現実から目を背けるようにそっと目を閉じた。

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