第五話 「聖域」
デュラハンに連れられた私は、森の奥へ進み続けた。濛気が濃くなり、数歩先も見えなくなってしまった。霧が晴れる気配はない。
「お前...名前は...?」
「スズカです。小笠原鈴鹿。」
「家名が...あるのか...?すると...貴族の家の子か...」
「いいえ、ふつうの...平民です。」
「いいや、家名は貴族のみ...名乗ることを許される。もしそれなりの家の出なら...隠した方がいい...。人さらいは...貴族の子を狙いたがる...」
「私は、ヴァン。そう呼べ...。これからは...本当に心を許した人間にだけ...名乗るようにしろ...。」
「はい...」
この人...外側はどう見ても怪しいけど...根はいい人なのかも...。
いや、油断はいけない。隙を見て逃げた方がいい。けれど...さっきの身体能力、人間離れしていた。
...そもそも人間ではないけど。
少しすると闇が空を覆い、小さな灯りが灯ってきた。柔らかい光だ。心が和む。まるで銀河のように木々の間が微かに光る。
とても現実とは思えない。
「ここから先は「聖域」だ...。」
「私の使命...それはこの「聖域」にある宝を盗もうとする外敵から守ること。」
「じゃあ...なんで私を...」
「連れてきたのかか?...無垢な子どもまで殺すような使命なら...私の存在する意味はない...。単なる興味だ...」
少し歩くと、デュラハンサイズの家にたどり着いた。そのまま、家にいれられた。
「かけてくれ...。」
とても今の身体には合わない大きさの椅子に腰を掛ける。
「干した木の実だ...これで許せ...。」
クランベリーを干したようなものを食べる。美味しい。レーズンよりも甘味は控えめだが、かえってそれが品のいい甘さをだ。
「よし...では聞こうか。なぜ...この森にきた...?ここは...人の子が来ていい場所ではない...親はどうした...?」
「親は...いません。今は森の外れの家に住んでいます。」
ヴァンはバツの悪そうな気配を立てた。
「そうか、しかし...」
「この森から東に十キロのところに...人間の町がある。いままで死ななかったのは...運がよかっただけに過ぎない...そこへ行け。迷うようなら、途中まで...送ろう。」
圧倒的な気配に気圧されそうになる。足がすくむ。が、...
「お願いです。私は、ここがいいんです...この森の空気が水が、生き物たちが...好きだから...。町の喧騒は、私には
似合わない。」
まだ、この森に来てから半年ほど。しかし、何年と暮らしてきたような、森を想う気持ちが、私には満ちていた。
「しかし...。」
「お願いします!」
重ねてお願いする。この手の人は、二回目を断られるとそれ以降は難しい。これでダメなら...
「そうか...ならば...。」
ヴァンはため息をつくようなしぐさを見せ。そして、
「私に力を証明してみせろ。」
といった。
ここから、私とヴァンの不思議な関係が始まった。
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