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51.喉もふもふはやわこいZE!




潮風でぺたぺたするし、夕飯前にお風呂を済ませた。例によって結界風呂。裏庭の洗い場で。上がったみんなを魔法で乾かしてから、わたしもお家のお風呂をつかわせてもらった。


自宅では順番が逆。先にわたしが入って、あがってきたひとのお手入れの手伝いをする。ここじゃ結界風呂やってる間にわたしが湯ざめしちゃいそうなので。海で遊べるくらい気候はいいと言ってもね。


そんなわけでお風呂上りのアマツの油を塗ってのお手入れも、旅行中のいまはみんな互いに手伝いあって済ませちゃってる。女の長風呂wを待ってもらうのも悪いし。


ただそれだとどうしても雑になるので、寝る前とかにわたしがチェックして必要なら追加お手入れ。二度手間だけどいいのだ。男同士で念入りに塗りあってたら、それはそれでコワイではないか。見たいような、見たくないような、見てはいけないような。


それにテレスは他の男性に触られるのが嫌らしくて……。でも背中はひとにやってもらわないとムリじゃない。ほら、日焼け止めとか塗るときもさ。


で、そんなお風呂あがり。


ほこほこしながら居間に向かうと、金ぴかたちが帰ってきてた。外国の特使様らしく、きらびやかな衣装だ。たくさん付いてる飾りはきっと宝石だろう。獣族さんのそれと同じく布地面積は少ない。ほぼベルト。


そりゃ隠す必要も、飾る必要もないよね。彼ら竜人族はあの鱗だけで十分に鑑賞に堪える。

無論うちの獣族さんたちのもふもふだってだ!(負けないわよっ)

そうそう、羽もふもふな極彩色の鳥人ヴィアさんもですよ。ひらひらした透け感のある布の量がやや多めだ。鳥さんの翼のイメージかな。


仰々しい金ぴかシェスさんは、わりとつっけんどんな態度のわたしにめげることなく、ぐいぐいと距離を詰めてくる。でもあれ関係改善のためのいじましい努力なんかじゃなくてさ。わたしの意向なんて気に止めてないだけだと思う。


あぁでも、テオドールに笑われるような、おとなげない対応をつづけるのはいくないな。

主にメルトの教育上。



「戻ったぞ、主」


「ん、おかえりー。おつかれー」


「うむ。主は、少し日に焼けたようだな?」


「うん。海で遊んでたからね」


「赤いな。それは痛むのだろう? 癒しておくか?」


え。

なにそれ癒しの術とか使えちゃうんですかアナタ!?

びっくりして口あけたわたしに、シェスは金色猫眼をほそめて笑った。


「何を驚いておる。竜人族は魔術も得手であるぞ」


「殿下ほど巧みな方はめずらしいですよ」


極彩色ヴィアさんがよいしょ(?)する。主人のいいとこアピールなのか。従者の鑑ですな。

本人も得手だと言い切ったし。どんな腕前なのかちょっと気になるね。


「へー」


「どうだ。その身で受けてみるか」


「……なんかその言い方ぁ」


顔をしかめて身を引くと、シェスは「はて?」とばかりに黙り込んだ。

自覚なしかよ。ないんだろうな。常に素っぽいもんな。


しかし、シェスにとってこっちの言葉は母国語じゃないんだろうに、どうしてこう偉そうな喋り方なんだろう。口調か? 口調のせいか? 言語チートが高性能すぎて意訳レベルの翻訳が入ってんのかな。や、うーん……。それはないか。外交活動とかしてるんだし、きっとそれっぽい喋り方を勉強したんだろう。


ふたりして黙ったもんで、有能なヴィアさんからフォローが入る。


「ハル様の御言葉は力強く響きますからね」


「攻撃を受けろと言ったわけでもあるまいに」


まぁね。って流してもいいんだけど、これからのつきあいもあるしなぁ。説明してみるか。


「シェスに言われると、すごく選択を迫られてる感があるんだよ」


「選択を?」


あ、ちょっとうれしそう? かも? (声がはずんだような)


「そ。さあ選べ!ってプレッシャーを感じる」


「ふむ」


「まぁでもそれがシェスの持ち味だから仕方ないよね」


「ほう。では、主が厭わしげにするのも仕方ないとしよう」


「んえ?」


「主がありのままの我を受け入れるというのであれば、我もまた主を受け入れねばなるまい」


「はあ」


なんかきびしーねぇ。自分に。意外と。

これって彼が貴い生まれだからかな。上に立つ者ならではの哲学的な?


ほうほうと感心してたのに。

不意打ちに金ぴかはトンデモナイことを言い出した。


「そうだ、主。ノイアス陛下がそなたに会ってみたいと――」

「んなぁぁあああああああッ!!」


発した言葉おとに意味はない。やつの発言を掻き消すためだ。

黙れ!!の意思表示にビシイッと手のひら突き出した。

お、おのれ、金ぴか。ゆだんもすきもない。


「厄介ごと持ち込むの禁止!」


「厄介事と――」


「おっとそれ以上の言及も禁止です! この話はここまで!」


「わかった」


案外あっさりうなずいた。よ、よし。もう言わないな?


「……欲のないことだ」


「なに言ってんの欲望だらけだよ。平和欲がすごいんだよ。怠惰も欲望のうちだよ」


「怠惰な者が街のギルド代表になどなるものかね?」


知ってんのか。あぁ、あれ王様もご観覧してたんだっけ。特使様方もご列席だったのか。


「あれは押しつけられたの」


「ほほう」


「やりたくてやったんじゃないんだよ」


「成程。主に押しつけた者はひとを見る目があるな」


「なにおだてちゃってんの。どうせ断りきれない意志薄弱なダメ主ですよ」


ムキィーッ!

腹立たしい。が、ここで金ぴかに怒るのは八当たりだな。

このまま喋ってるとそのやってはあかんことをしそうだったので退散した。






結局テレスはその夜わたしに純白の喉もふを撫でさせた。

させた……うぅーん。撫でるのはたのしいので、無理強いさせられたわけでもないので、撫でさせてもらったと言うべきなんだろうか。どこか腑に落ちないものの。


てか、テレスさん予言通りじゃない。言外の「絶対」が的中ですね!


かたちとしてはテレスのおねだりだった。みんなの適当お手入れの足りない分をフォローし終わって、そろそろ寝ましょうかという頃合いに。ベッドに座ったわたしの膝にごろにゃんと頭を乗せてきて。


「あーるじぃ♪」


蜜のようにとろける媚態をふりまいてのテレス渾身のおねだり攻撃。


ん、と喉をさらして、色っぽい鶯色の瞳でわたしをチラ見。ぬ。ヤマネコたんめ。ネコ科のチラ見はなぜこうも蠱惑的なのか。撫でろという言葉を口にしないところがまたもう。


スルーできなかった。

いやっ、魅了されて理性を失ったわけじゃないよっ!

だってさぁ、ここまでしてんのに取り合ってあげなかったらさぁ……。


――そうやって同情するだろうと見越してのこの態度である。

わかってるわかってる!


でも、テレスはとにかくわたしの気を惹きたくて、どんな手でも使おうって考えたわけだ。

みっともなく甘えてでも。さかしく弱味を突いてでも。

勝算はあったんだろうけど思い切ったよね。


レンさんの手前、わたし、断るかもしれなかったのに。

そう。迷ったんだ。それでも目があった一瞬でレンハルトがうなずいてくれたから。


撫でましたよ、全力で。テッカテカになるんじゃないかってくらい。

ふぉおおおぉぉぉ……!

なんたるもっふもふ! もふもふもふもふもふもふ……なめらかもふもふぅうう!


テレスは最初、身を硬くしてた。自分で言い出しておいて。

これっていつもなんだよね。最近わかるよーになった。テレスさんはひとに触られる瞬間、心のなかで身構えてる。ひそかに。あらわれる反応はかすかだ。ていうか第六感?

わかる自分がキモイwどんだけ執拗に様子をうかがってるんですかwどんな反応も見逃しませんってかw


気づかずに散々スキンシップしてきた。美しい毛並みにアマツの油を揉み込んだり、美毛マッサージしたり。テレスさんからじゃれついてきたりもしてたのに。尻尾もゆらりぱさりとくつろがせておいて、実は心の底に緊張感があるなんてわかんないよねー。


しかし気づいたからって一切やめるってわけにもいかないし。お手入れはとくに。

むしろテレスはそういうとこ気づかれたくないみたいだし。

あえて隠してるんだよね?


そんなテレスさんなのに、喉なんて弱いとこを撫でられようってんだから、ほんとに捨て身の攻撃だ。


やぁらか~い純白のもふもふを撫でつづける。

念入りながらも淡々とした手つきという高度テクニックを用いてやったんだぜ!


やがて身をあずけても大丈夫と納得できたんだろう。テレスは喉ごろごろ鳴らしそうな表情でとろけていった。レンさんへのあてつけなんてすっかり忘れてにゃんごろりだ。

とっても幸せそうで、やってあげてよかったなぁと思う。


でもって途中でメルトが割り込んできたw


んふうって満足の吐息をくりかえすテレスがうらやましくなったらしく。

小さな頭でほとんど頭突き。(どーんってするなと言ってるのに)


膝枕からズリ落とされたテレスは「んもう」と鼻面にしわを寄せた。唇とがらせる的なイミで。でも怒るわけもなく、すぐに自分の枕を奪ったメルトのお腹に頭を乗せなおしてた。

そんな仕返しをされるとは思ってなかったメルトはびっくり。重い、どいて、と手で押すが、大のおとなを押し返せるわけがない。さらにぐりぐりと頭を押しつけられて、最終的にはきゃっきゃと(声は出さないが)はしゃいでいた。


うふふふふ……膝でネコたんたちがじゃれております。

野性味のある大きなネコたんと、まだまだいたいけな小さなネコたん。

これどうしよう。かわいすぎる。にやにやしちゃうわw


などとやにさがっていたら、テレスに難癖つけられまして。ふざけっこの延長と解釈したメルトに飛びつかれ、なんだかんだもみくちゃにされた挙句、そのまま3人で寝ることに。

あぶれたレンハルトは、やれやれといった表情で寝床をテレスに譲り、独り寝を受け入れてた。


アルトがすごくうらやましそうにこっち見ててかわいそうだったかも……。

た、たまにだから。テレスさん、いつもは一緒に寝ないから。旅行中だけのとくべつだから。


あー。

そのとくべつがアルトにだけないのはさみしい、かなー?

ど、どうしよ?


レンハルトを異性として認めちゃった以上、みんなに平等にってのにも限界があるんだよなぁ。


そうは言いつつ、テレスさんのにゃんごろりは受け入れてるんですが。ま、テレスの媚びや挑発は、わたしが彼に性的に反応しないってのが大前提だからね。彼の色気は理解してても、決して迫ったりしないっていう安心感が。


レンハルトはそこわかってんだかわかってないんだか分からないけど。

テレスと自分じゃ扱い(カテゴリー的な)が違うのは理解してる……よね?


なんかなー。

ふたりでゆっくり話す時間が必要な気がします。




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