序章:パンツ泥棒の死
俺は、女のパンツを盗んで死んだ。
事故でもなければ、病気でもない。刺されたのでもない。
自分の盗んだパンツで首を絞められて死んだ。
しかも、土下座の格好で、両手を合わせて、祈るように。
目の前には、ほうきとハイヒールを持った十二人の女。
最初から話そう。
俺の名前は田中宏。四十二歳。会社員。バツイチ。
元妻の明子は、三年前に俺を捨てた。
理由は「あんたは男じゃない。あんたは犬よ」だった。
その通りだ。
離婚後、俺は十五平方メートルのアパートに住んでいた。コンビニ弁当を食い、壁に話しかけた。
そして俺には病的な趣味があった——女のパンツを集めること。
買うんじゃない。盗むんだ。
ベランダから。物干しから。半開きの窓から。
分かってる。俺はクズだ。
でも、それは俺がまだ生きていると感じられる唯一の瞬間だった。
運命の夜。
俺は駅近くのマンション二階のベランダにいた。
俺はそこに住む女を二週間尾行していた。名前はユイ。二十四歳。カフェで働いている。高級なレースのパンツのコレクションを持っている。
そしてその夜——彼女は赤いレースのパンツを干していた——一番綺麗なやつだ。
俺はベランダによじ登った。
手を伸ばした。
触れた。
そしてその時——彼女が電気をつけた。
「きゃあああ!!! 変態!!!」
俺はパニックになった。パンツをひったくった。飛び降りた。
しかし——手すりに足を引っかけた。
そして——落ちた。
二階から裏庭に落ちた。
それは問題じゃない。二階はそれほど高くない。
問題は——ほうきとモップの山に落ちたことだ。
そして——一本のほうき——木の柄——が——俺の尻に突き刺さった。
俺は叫んだ。飛び上がった。走った。
しかし——まだ赤いパンツを握っていた。
そして——転んだ。
そしてパンツが——首に巻きついた。
そして——倒れた。
そして——そのパンツで自分の首を絞めた。
いや。自分で絞めたんじゃない。
誰かが絞めた。
十二人の女。近所の住人。彼女たちは悲鳴を聞いた。外に飛び出した。
彼女たちは俺を見た——服は乱れ、尻にはほうき、首には赤いパンツ——そしてすぐに理解した。
彼女たちは警察を呼ばなかった。
自分たちで裁いた。
最初の女——隣の老婆——がパンツをひったくった。
二人目の女——金髪の女——が顔を蹴った。
三人目の女——魚屋の女将——がほうきで頭を殴った。
そして四人目の女——ユイ——俺がパンツを盗んだ女——が赤いパンツを手に取り、俺の首に巻きつけ、絞めた。
「クズ! 死ね!」
息ができない。
俺は膝をついた。両手を合わせた——反射的に、祈るように。
そして——死んだ。
土下座の格好で、両手を合わせ、首に赤いレースのパンツを巻いて。
目の前には——ほうきとハイヒールを持った十二人の女。
最期の瞬間。
俺は裏庭に倒れていた。顔は空を向いていた。ゴミと猫の尿の匂い。
周りの声:「死んだ?」「死んだ!」「動画撮った?」「撮った! ネットに上げろ!」
全部聞こえた。
そして——恥ずかしかった。
死より恥ずかしかった。
しかし、その最期の瞬間——意識が消える前に——何かが噴き上がった。
怒り。
俺は元妻に怒っていた——「男じゃない」と言って捨てた女。
俺は息子に怒っていた——十五年間育てたのに、今は俺の顔も見ない、俺を「変態ジジイ」と呼ぶ。
俺は自分自身に怒っていた——四十二年生きて、誰も俺の名前を覚えていない。
そして俺は叫んだ——頭の中で——口はもう動かなかったから:
「もし生まれ変われるなら——」
「俺は二度と女のパンツを盗まない」
「俺は二度と誰かに見下されない」
「俺は自分のために生きる」
「たとえ普通のパンツを穿くことになっても——俺は自分のために生きる」
そして——真っ暗。
俺は目を覚ました。
木の天井。乾いた木と湿った苔の匂い。障子から差し込む弱い光。
俺の体は俺のものじゃない。
そして俺は赤いレースのパンツを穿いていない。




