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【5000PV感謝】フリーダム・フロント   作者: ボナンザ・ソバイユ
日本選抜

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63/72

第63話 凪VSしろっぷ①

『さあ準決勝・第二試合ッ!! 凪選手対しろっぷ選手ォォッ!!』

『しろっぷ選手のあの異形――クリサリス・ヴァリアント。あれを組み上げたの、他でもない凪選手なんですよ』

『手塩にかけて育てた我が子と、本気の殺し合いッ!! 燃えないわけがないでしょう!!』

 

                ◇

 

 フィールドは、深い森。

 絡み合う根と、無数の死角。木漏れ日が、戦場に斑の影を落とす。

 

 凪のアルカナ・オブスキュアと、しろっぷのクリサリス・ヴァリアントが、木々を挟んで向かい合った。

 

 3。2。1。ゼロ。

 

 

 凪が、動いた。

 右手のピラリス、左の糸。しろっぷの右側面へ回り込み、副腕の付け根を、糸で搦め捕ろうとする。

 

(――右副腕を、封じる)

 

「脚で来る、って読んでるでしょ」

 

 しろっぷが、先に、口を開いた。

 

(……ええ。読んでいます)

 

 凪は、糸を、あえて空へ逃がした。

 しろっぷの脚が地を蹴る、その動きを、先読みしている。

 

 だが、脚は、動かなかった。

 

 代わりに、尾が来た。

 

(――そこも、読んでいます)

 

 凪は、ピラリスで尾を受け流し、後方へ跳んだ。

 

 二人とも、驚いていなかった。

 仕掛ける側も、受ける側も、次の一手を、当然のように置いている。

 

『……これは、すごい』

 

 迫力雀士の声が、上ずった。

 

『お互い、相手の手を、全部、読んでる。……二人とも、怖いですよ、これは』

 

                ◇

 

 読み合いは、幾重にも、折り重なっていった。

 

 凪が、こう動くと考える。

 しろっぷが、そう読むと思って、動く。

 凪が、そこまで読むと思って、裏をかく。

 しろっぷが、その裏を、感覚で捉える。

 

 HPが、少しずつ、削れていく。凪、6割。しろっぷ、6割5分。

 

 拮抗。

 膠着。

 

 互いを知り尽くしているがゆえに、決定打が、生まれない。

 

                ◇

 

 その膠着を、破ろうと。

 

 凪が、一つの詰みを、組み立て始めた。

 

 しろっぷの副腕を、糸で誘導する。払おうと動いた反動で、重心が右に傾く。傾いた先へ、ビームを撃つ。しろっぷは、左へ跳ぶしかない。その着地点に、ピラリスを構えて、待つ。

 

                ◇

 

 ――クリサリスの中。

 

 しろっぷは、凪の糸が副腕に触れた瞬間、その意図を、察していた。

 

(……来た)

 

 凪が、詰みを組んでいる。糸で誘って、重心を傾けて、ビームで左に追い込んで、着地点を獲る。

 

(あんたなら、絶対、そうする)

 

 しろっぷは、笑った。

 

(だって、その組み立ての癖――あたし、誰よりも、知ってるから)

 

                ◇

 

 しろっぷの動きが、凪の組んだ通りに、進んでいく。

 副腕が糸を払う。重心が傾く。ビームが来る。しろっぷが、左へ跳ぶ。

 

 その着地点に、凪の杭が、待っていた。

 

(……獲った)

 

 凪が、ピラリスを、突き出そうとした。

 

 その視界に。

 

 四枚の、翼が、映った。

 

 木漏れ日を透かして、輝く、蝶の翼。

 

 ――綺麗だ。

 

 突きが、鈍った。

 ほんの、コンマ数秒。

 

 

 しろっぷだけが、笑っていた。

 

「あんたさ」

 

 左へ跳んだ、その体が。

 

「そのルート」

 

 着地の、寸前。

 

「あんたが、作ったんだよ」

 

 クリサリスの脚が、着地の瞬間、もう一度、地を蹴った。

 二段の跳躍。異形の脚を持つ、この機体だけの機動。

 

 凪のピラリスが、空を、切った。

 

                ◇

 

 そして、しろっぷは、最後の手を、明かした。

 

 糸に絡め取られていた右副腕を、自ら、切り離す。

 

 ガコンッ。

 

 パージされた副腕を、尾が掴み、巨大な棍棒として、振り回した。

 

「これ」

 

 凪の機体へ、横薙ぎに。

 

「説明書には、書いてなかったでしょ」

 

 ドゴォンッ!!

 

 凪の機体が、木々をなぎ倒しながら、吹き飛ばされた。

 

 HP、4割。

 

 

 実況席が、静まっていた。

 

『……今の、何が、起きたんですか』

 

『……理解度ですよ、マイクさん』

 

 迫力雀士の声は、静かだった。

 

『あの機体を、どっちが深く分かってるか。……作った側を、乗ってる側が、上回ったんです』

 

                ◇

 

 木々の間に倒れた凪が、ゆっくりと、立ち上がった。

 その口元が、わずかに、笑っていた。

 

『……今の、翼を見て、手が止まったの、気づきましたか』

 

「うん。あんた、あたしの翼、綺麗だって思ったでしょ」

 

 しろっぷの声は、優しかった。

 

「でも、それじゃ、勝てないよ」

 

『……ええ。分かっています』

 

 凪の機体から、漆黒の光が、滲み始めた。

 

『だから――もう、躊躇いません』

 

 黒い翼が、広がっていく。作り手の、底力。

 

 しろっぷも、応えるように、全身に光を纏った。

 四枚の翼が、開く。乗り手の、深化。

 

 

 森が、静かになった。

 

 実況が、黙る。

 観客が、息を呑む。

 

 堕天使と、イマーゴ。

 どちらも、凪が生んだ、最も美しいもの。

 

 その二つだけが、木漏れ日の中で、向かい合っていた。

 

 

「……じゃあ」

 

 しろっぷが、笑った。

 

「行こ」

 

『……ええ』

 

 

 二人が、地を蹴った。

 

 

 ドンッ!!

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