表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【3000PV感謝】フリーダム・フロント 〜追放された裏方ビルダー、天才少女の機体を完成させて環境を破壊する〜  作者: ボナンザ・ソバイユ
日本選抜

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

47/48

第47話 第3試合

『――1回戦第2試合、勝者はさくせすT選手! 予選最終日のダークホースが、ラブマクス選手との壮絶な打ち合いを制しました!!』


 MCの声が、会場の興奮を引き継いでいる。


 観客席のあちこちで、今の試合の話が続いていた。「最後の同時パンチえぐかった」「リング作るのなんなんだあいつ」「宝石がやばい」。


 


                ◇


 


 マセガキィの控室。


 


 モニターの前で、マセガキィは静かに足を組んでいた。スマホは、すでにポケットに仕舞ってある。


 


「……いい試合だったね」


 


 誰に向けるでもなく、独り言のように呟いた。


 


 1試合目の迅・ソニックvs周李龍。重力操作という変則能力を、適応の化け物が攻略する展開。


 2試合目のさくせすTvsラブマクス。射撃キャラが近接に切り替えて、宝石爆発を鳥かごで利用する戦術。


 


 どちらも、フリーダム・フロントの「自由さ」が前面に出た試合だった。


 


「ま、それはそれ」


 


 マセガキィは立ち上がり、軽く首を回した。


 


 彼の機体サイコダイバー


 ヒューマン型のテンプレ構成。パラメータに大きくコストを振り、能力枠は「加速」一つだけ。短剣の二刀流で戦う、機械的なシルエットの忍者風アバター。


 完成度ボーナスもしっかり乗っている。ちゃんとしたビルダーが、テンプレを丁寧に組んだ機体。


 飛び道具はない。能力も派手ではない。だが、その代わりに基礎ステータスが分厚い。


 


 マセガキィは、フリーダム・フロントを長くやってきたわけではない。


 始めたきっかけは2つ。


 1つは、新しい直感入力デバイスに触れたかったから。格闘ゲームでの反射神経が、別ジャンルでどこまで通用するか試したかった。


 もう1つは、暇つぶし。本業の格ゲー大会の合間に、別のゲームで頭を冷やしたかった。


 


 その「暇つぶし」で、予選2位まで来てしまった。


 


「……まあ、ここまで来たら優勝するよね、普通」


 


 誰に聞かせるでもなく、マセガキィは呟いた。


 


 短剣を構える。エネルギーブレードが、二振り、青く光る。


 


「相手はモンスター型の異形機体か。……ちょっと変わったやつだけど、所詮はゲームの中の機体だ。読めば、勝てる」


 


                ◇


 


 凪としろっぷの控室。


 


 しろっぷは、ソファに座って、ダイブポッドの準備を進めていた。


 


『……しろっぷ』


「ん?」


『行ってらっしゃい』


 


 しろっぷが、振り返った。


 


「うん。行ってくる」


『……マセガキィ、控室であなたの機体の弱点を分析していました。「副腕の0.3秒のインターバル」と』


「へえ」


『気をつけてください。あの人、読みが鋭い』


 


 しろっぷは、しばらく凪を見つめてから、にやりと笑った。


 


「ねえ凪」


『はい』


「あんた、心配してるの?」


『……ええ』


「珍しいね」


『……あなたが負けたら、僕が決勝に上がれないので』


 


 しろっぷが、噴き出した。


 


「あはは、それな。……うん、わかった。負けないよ」


 


 立ち上がって、控室の扉に向かう。


 


 扉の前で、一度振り返った。


 


「凪も、戦神覇王には負けないでね。準決勝で当たろ」


『……ええ。当然です』


 


 しろっぷが、扉を開けて出ていった。


 


                ◇


 


 控室の扉が、再びノックされた。


 


「邪魔するわよー」


 


 扉が開いて、ラブマクスが入ってきた。


 ぼろぼろのままダイブポッドから出てきたのだろう、髪のウィッグが少し乱れている。だが、表情は晴れやかだった。


 


「うちで反省会してても寂しいから、ちょっと混ぜてもらおうかしら」


 


 その後ろから、もう1人。


 


「あ、すいません、俺もいいですか? 控室1人だと寝そうなんで」


 


 さくせすT。


 まだ機体の損傷が画面上に表示されているらしく、コックピットから出てきたばかりの様子だった。


 


『……どうぞ。座ってください』


 


 凪が、ソファのスペースを空けた。


 周李龍が、軽く頷いた。


 


 ラブマクスがソファに腰を下ろしながら、モニターを指差した。


「次、しろっぷちゃんの試合よね? 相手、あの格ゲーマーの子?」


『……ええ』


「あの子、強そうよ。控室で見たけど、目つきが違ったわ。……ただ、なんていうか」


 


 ラブマクスは、少しだけ顎を傾けた。


 


「……なんか、綺麗すぎるのよね、あの子」


 


『綺麗すぎる?』


 


「うまく言えないけど。……うん、なんか変なのよ。アタシの勘だけど」


 


 さくせすTが、隣でストレッチをしながら頷いた。


「俺もちょっと話したんですけど、けっこう冷静な人でしたよ。フリフロを舐めてるとかじゃなくて、ちゃんと読みで勝ちに来てる感じ」


 


『……ただ、相手があれですから』


 


 周李龍が、モニターのフィールドロード画面を見ながら、静かに言った。


 


「あの異形の機体。設計を見ても、何ができるのか半分くらい分からない。マセガキィ選手がどこまで読めるか……」


 


 ラブマクスが、笑った。


「読めない相手を、読みで攻略するの。それも見たいわね」


 


                ◇


 


 メインステージ。


 


『――1回戦第3試合、まもなく開始です! マセガキィ選手と、しろっぷ選手は、ダイブポッドへお進みください!』


 


 MCの声が、会場に響いた。


 


 フィールドがロードされていく。


 


 今回のステージは、廃工場。


 巨大なクレーンと吊り下げられたコンテナ。床には金属の足場が複雑に組まれ、上下の高低差が激しい立体的なフィールド。錆びた鉄骨と、ぶら下がる鎖が、薄暗い空間に重い影を落としていた。


 


 左側に、しろっぷの《クリサリス・ヴァリアント》。


 漆黒の異形。歪な翼と極太の尾、副腕3本が、薄暗い工場の照明を受けて不気味に蠢いている。


 


 右側に、マセガキィの《サイコダイバー》。


 機械的なシルエットの忍者風アバター。両手に青いエネルギーブレード。動きやすい中量級のフォルム。


 だが、よく見ると、左右のブレードの出力がほんの僅かにズレていた。同期されていない。調整ミスのようにも見えるが、修正された形跡はない。


 


『さあ、第3試合!! モンスター型の異形機体しろっぷ選手と、2D格ゲープロのマセガキィ選手!! 全く異なるスタイルがぶつかります!!』


『これは興味深いカードですね。テンプレを丁寧に組んだヒューマン型と、誰にも読めないモンスター型。読みの化身対、未知の異形。どっちが勝つか、本当に分からない』


 


 しろっぷは、フラットな表情で、相手の機体を眺めていた。


 


 マセガキィが、口を開いた。


「やあ。よろしくね」


「うん」


「いきなりだけど、君の機体、面白いと思うよ。あんな副腕の連動、見たことない」


「ありがと」


「でも、面白いのと強いのは別だからさ」


 


 マセガキィが、にこやかに笑った。


 


「ゲームのプロが、ちゃんとわからせてあげるよ。……でも、同じやり方はつまんないからさ」


 


 意味の取りにくい一言。


 


「結局このゲームも、読み合いだろ。読み勝てば、終わる」


 


 しろっぷは、その挑発を、表情一つ変えずに聞いていた。


 


「……わからせる、ね」


 


 短く、一言。


 


「いいよ、やってみな」


 


 試合開始のカウントダウンが始まった。


 


 3。2。1。


 


 ゼロ

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ