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フリーダム・フロント 〜追放された裏方ビルダー、天才少女の機体を完成させて環境を破壊する〜  作者: ボナンザ・ソバイユ
日本選抜

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第37話 宣戦

 スクリーンが、暗転から明転した。


 会場を埋め尽くした観客が、一斉に声を上げる。MCの声が、ホール全体を震わせた。


『――皆さん、お待たせしました! 日本選抜・本選トーナメント! 世界大会への切符を懸けた8人の戦士たちと、その対戦カードを発表します!!』


 歓声が、うねりのように広がっていく。


『――1回戦、第1試合!!』


 スクリーンに、2つの機体が同時に映し出された。


 左側。白い機体。巨大なスラスターを直結した、速度の権化。


『予選全勝! 敗北数、ゼロ!! 数々の大会をその圧倒的なスピードで荒らしてきた白い鷹! 愛機シュトゥルム・ファルコン――迅・ソニック!!!』


 右側。堅実な武装、隙のないフォルムの中量級ロボット型。


『対するは、上位ランクの常連! 抜群の安定感で勝ち星を積み上げてきた「再現性」の探究者! 愛機セオリー――周李龍!!』


 会場が揺れた。いきなり、予選1位と招待枠の理論派がぶつかる。


 控室のモニターの前で、迅は穏やかに笑っていた。周李龍は腕を組んだまま、静かにモニターを見つめている。


『――1回戦、第2試合!!』


 スクリーンが切り替わる。


『今大会のダークホース!! 予選最終日、圏外から怒涛のごぼう抜きで4位に滑り込んだ男! 愛機《レグルス・マークII》――さくせすT!!』


『対するは、華麗にして爆裂!! クラン「⤴⤴れぼりゅうしょん」を率いるカリスマ! その戦い方はまさに芸術か、それとも破壊か!? 愛機ラブリィ・エクスプロージョン――ラブマクス!!』


 さくせすTが「うわ、俺だ」と小さく呟いた。ラブマクスが「あら、あの子が相手? 面白いじゃないの」とウィッグをかき上げた。


『――1回戦、第3試合!!』


 スクリーンに、鋭い構えのヒューマン型が映った。


『なんと! あの大人気2D格闘ゲーム『ブレイクエッジ』のプロプレイヤーが、フリーダム・フロントの舞台に殴り込み!! 格ゲーで鍛え上げた読みと反応速度は、このフィールドでも本物だった! 予選2位通過の実力を見よ! 愛機サイコダイバー――マセガキィ!!』


 映像が切り替わる。漆黒に染まったスクリーンに、少女の上半身に歪な翼と極太の尾、蠢く副腕のシルエットが浮かび上がった。


『対するは! まだまだ謎多き異形の機体!! どうやって作ったのか、なぜあの形で動くのか、誰にもわからない!! 異常な完成度を誇るモンスター型が、招待枠で本選に降臨! 愛機クリサリス・ヴァリアント――しろっぷ!!』


 マセガキィが、初めてスマホから顔を上げた。しろっぷのほうをちらりと見る。真白は退屈そうにスマホをいじっていた。


 マセガキィが、スマホを閉じた。画面に映っていたブレイクエッジのトレーニングモードが消える。


 初めて、口を開いた。


「……あの機体、多軸攻撃の連携が強いけど、左の副腕の展開に0.3秒のインターバルがある。崩しはそこだな」

 独り言だった。誰に聞かせるでもなく、対戦相手の機体の崩し方を、もう組み立て始めている。


『――そして! 1回戦、第4試合!!』


 MCの声が、一段高くなった。


『クラン「レガシー」のビルダー出身!! 裏方から表舞台へ! 予選で結実した新たなる才能が、本選の頂を目指す! 愛機アルカナ・オブスキュア――凪!!』


 のっぺりとした黒いマスクに、一文字のスリットから覗く冷たい青い光。右手の巨大な杭。左腕の不気味なひび割れ。


 凪は、自分の機体がスクリーンに映し出されるのを、静かに見つめていた。


(……レガシーのビルダー出身、か)


 間違いではない。それが、自分の出発点だった。


『対するは! クラン「エリア666」の最終兵器!! 獣のように戦場を駆る最年少の野生児! 大人たちよ、この牙を止められるか!? 愛機ゴッドブレイカー――戦神覇王!!』


 獣のような四肢を持つモンスター型が、咆哮するシルエット。


 戦神覇王が、にやりと笑って腕を組んだ。隣の兄が、少しだけ誇らしそうな顔をしていた。


 控室の端で、戦神覇王が真白のほうを見た。


「……ふーん。俺が勝って、お姉さんも勝ったら、準決勝で当たるわけだ」

「うん。楽しみだね」

「言ったよな。モンスター型の頂点は俺だって」

「うん。聞いた聞いた。……でもさ」

 真白が、凪のほうをちらりと見た。

「まず凪に勝てたらの話じゃない?」

 戦神覇王の目が、凪を射抜いた。

 凪は何も言わず、静かにモニターを見つめていた。

「……ふん。どっちもまとめて潰すよ」


 真白の声は、相変わらずフラットだった。


 凪は、トーナメント表の構造を、静かに読み取っていた。


 1回戦で戦神覇王。勝てば準決勝でしろっぷ。そしてその先には、迅がいる。


 世界への道は、3つの戦いの向こうにある。


『――それでは皆さん! 第1試合の開始まで、しばらくお待ちください!!』


 MCの声が響き、会場が歓声に包まれた。


  8人が、それぞれの準備を始めようとした時だった。

 控室の扉に向かっていた迅が、ふと振り返る。

「あ、そうだ」

 全員の視線が、自然と集まった。

 迅は、いつもの柔らかい笑みのまま言った。

「全員本気で、悔いのないように来てくださいね」

「……?」

「せっかく強いプレイヤーが集まったんだから。楽しませてください」

 控室の空気が、一瞬だけ凍った。

 迅だけが、楽しそうに笑っていた。


日本選抜・本選トーナメント 対戦表

第1試合 迅・ソニック vs 周李龍

第2試合 さくせすT vs ラブマクス

第3試合 マセガキィ vs しろっぷ

第4試合 凪 vs 戦神覇王


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