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第20話 罪
繰り返される激痛。
そして、すぐに癒える体。
生きながら何度も“壊される”恐怖に、
いじめっ子たちは完全に戦意を失っていた。
涙を流し、震え、もはや声すら出せない。
そんな彼らに、怜音はゆっくりと近づいた。
「……治してやる」
怜音の手が静かに光る。
【ヒール】――ただの回復魔法。
今の彼の魔力なら、骨折も内臓損傷も、一瞬で元通りになる。
全員の身体から、痛みが消えていった。
「次はない」
静かに、けれどはっきりと、怜音は言った。
「……この力を、誰かを傷つけるためにしか知らない奴らに、容赦はしない」
「お前たちは今、運が良かっただけだ。
この程度で済んだのは――今日が“警告”だからだ」
いじめっ子たちは、
お互いに支え合いながら、這うようにその場から逃げていった。
一度も後ろを振り返ることなく。
まるで“人間”ではない何かを見たように、怯えながら。
怜音は静かにその場に膝をついた。
「……やっぱり、向いてないな。こういうの」
苦笑しながら、拳を握り締める。
自分の中にある“魔法使い”としての正義感と、
現代人としての倫理観が、まだ衝突していた。




